2024年12月23日( 月 )

【自民党総裁選】強力トリオ「小石河連合」の虚構~「同じ安倍のムジナ」の三候補が忖度合戦する猿芝居

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「小石河連合」は“エセ改革派”連合

 メディアが連日実況中継をする自民党総裁選で大活躍しているのが、改革派を標榜する「小石河連合」だ。国民的人気を誇る小泉進次郎・環境大臣と石破茂・元幹事長と河野太郎・行革担当大臣の頭文字を取ったネーミングだが、“エセ改革派”連合ではないかと疑う必要がある。

 トリオ結成の発端は、13日に河野氏が石破氏と面談して「(総裁選で)当選した暁には挙党態勢をつくりたい」と呼びかけたこと。この2日後の15日に石破氏は不出馬を決断、河野氏支持も表明して連携関係が出来上がったのだ。

 後押しする役割をしたのが、小泉氏。前日の14日の地元・横須賀での記者会見で河野氏支持を打ち出し、「『石破氏を応援するなら、河野氏はやりたくない』なんて理屈は理解できない」とも批判。そして、河野氏こそ改革派と断言したのだ。

 「最大派閥(細田派)の人から『高市氏と岸田氏を支持する』と発言があったと聞きおよんでいる。これは言い換えれば、『河野氏は絶対に駄目だ』ということ。そのこと1点をもってしても、誰が自民党、日本を変えられる新しいリーダーかは明らかだ」

 「最大派閥が不支持か支持か」が改革派か否かの指標とみなし、「河野氏と石破氏は改革派、岸田氏と高市氏は守旧派」と決めつけたのだ。

 騙されてはいけない。古い自民党をぶっ壊すのか守るのかという指標は、安倍前首相に忖度するのか否かであり、具体的にいえば、森友学園問題の再調査をするのか否かということだ。

 これを物差し(判断基準)とすれば、森友再調査を否定する河野氏も岸田氏も高市氏も安倍前首相ら長老支配に斬り込まない守旧派となる。「同じ穴のムジナ」をもじった日刊ゲンダイ流の言い方をすれば、「同じ安倍のムジナ」の三候補がコップのなかで忖度合戦をしているだけという茶番劇(猿芝居)となる。

 しかも河野氏は、かつて山本太郎代表とともに訴えていた脱原発まで封印。持論よりも総理ポスト優先の“エセ改革派”にしか見えない。そこで、小泉氏の会見で聞いてみた。

小泉氏の河野氏支持表明会見

小泉進次郎・環境大臣
小泉進次郎・環境大臣

 ――河野氏が既得権益と戦って古い自民党をぶっ壊す候補だというように今の話を聞いて思いましたが、そうであれば、森友再調査をなぜしないのですか。この点について疑問に思わなかったのですか。加えて、脱原発も封印をしていて、将来的な脱原発は言ったとしても、父・小泉純一郎元首相は「福島原発事故後、ほぼ5年間でほとんど原発稼働ゼロで電力不足にならなかった」「すぐ原発ゼロは可能だ」と(訴えています)。これが脱原発の王道、古い自民党をぶっ壊すことだと考えており、そこに(河野氏が)踏み込まないのは安倍前首相への忖度があるのだと感じますが、森友再調査と脱原発をきちんと言わないことについてどう思いますか。

 小泉 河野氏は明確に記者会見のなかで、自身の言葉で説明をしていたと思います。政治家は限られたエネルギーとリソースをどこに最も集中をさせるのか、その集中と選択が必ずあります。私は、河野氏は今それを自身で考え、自分が最も傾注すべきところを考えながら発信したと思いますので、私は、河野氏はちゃんとやってくれると信じています。河野氏にまた聞いてもらえれば。

 ――森友再調査は優先順位が低いということですか。

 小泉 河野氏は、私もそうですが、将来に向けた課題に最大のリソースを割きたいという改革志向をもっている同志だから、そちらに私はリソースを割いていきます。そういう判断だと思います。

 ここで「原発ゼロは即できないですか」と再質問をしたが、司会者が「次に(別の記者)どうぞ」と質疑応答を打ち切った。この後、小泉氏から興味深い発言が飛び出した。

 ――(テレビ東京)河野氏に党風一新を訴えられたと思いますが、いま現在、河野氏が表明している政策だとか、どういったところに党風一新の風というのが見られるのですか。

 小泉 私は河野氏自身が党風一新だと思います。河野氏が総理総裁になれば、日本も自民党も変わります。そういう新しいタイプです。私の投票行動を振り返って、12年前に河野氏に投票をしています。私が初めて当選をして、総裁選がありました。そして昨年、菅総理が立候補をすると表明していない段階で私は、「河野氏が出るなら河野氏をやります」と昨年もそう言っています。

 そして菅政権で、暗闘を繰り広げたエネルギー政策の変更ということでともにやりあって、河野氏とともにこれからの改革をともに実現をしたいということです。

 ――(TBS)河野大臣を評価する点、先ほど言いましたが、一方で改善する余地があるのではないか、小泉大臣から見て「こういうところはもっとうまくやれるかもしれない」というところがあれば、教えてください。

 小泉 だいぶ河野氏、我慢をされていると思います。正式表明をするまでも、私からすれば、相当、今までの河野氏のなかで我慢をしているな、と。絶対にお願いをしても支援をしてくれない人までちゃんと足を運んでいたではないですか。そして、今でもいろいろな我慢をしています。多くの人の支持を得るために頑張っています。そのなかで時に怒りたくなる時もあります。そういう時に支えながら抑えるときに抑えることをしてもらうことも、これからもっと必要になるかもしれません。

 でも、そういったところもテープでとられて(週刊文春に)攻撃されて、そういったことが起きるぐらい戦っています。とんでもない暗闘があります。エネルギー政策を変えるために戦うって、それぐらい、生半可な戦いではありません。それを私は支えたいのです。この攻撃に、(エネルギー政策を原発推進に)巻き戻したいという最大の既得権益の人たちが攻撃をしています。私は、河野氏側に立って、ともに戦っていきたいと思います。突き抜けるところは突き抜けるように支えたいと思います。

 ここで司会者が「本日は誠にありがとうございました」と言って会見が終了したが、その直後、再質問で無回答だったため、声掛けをした。

 「(原子力ムラの既得権者たちと戦うの)だったら『再稼働しない』といえばいいのではないですか。『原発、すぐにゼロにできる』といえばいいのではないですか。電力は足りている、原発を動かさなくても」

 しかし小泉氏は、一言も発しないまま会見場を後にした。森友再調査も脱原発(原発即時ゼロ)も、“改革派”コンビの河野氏と小泉氏にとっては優先順位の低い課題のようなのだ。

石破氏の河野氏支持表明の会見

石破茂・元幹事長
石破茂・元幹事長

 翌15日の記者会見で不出馬と河野支持を表明した石破氏も歯切れが悪かった。「古い自民党をぶっ壊す」という姿勢が薄れて、ポスト優先の「同じ安倍のムジナ」に成り下がってしまったように見えたのだ。

 三候補と違って唯一、森友再調査をすると明言した石破氏に対しても、前日と同じ主旨の質問をした。

 ――「森友再調査をする」と言った石破氏と違って河野氏は、高市氏や岸田氏と同じように森友再調査を否定していると。安倍前総理に忖度をしてゴマをすっているように見えるが、そういう河野氏がなぜ改革勢力の同志なのですか。「自民党を変える存在」と捉えられたのが疑問なのが1点と、河野氏と対談したときに「森友再調査をすべきだ」と言って、河野氏は受け入れたのかどうかということです。要は、森友再調査というのは古い自民党を変えるのかどうかの試金石、リトマス試験紙のようなものだと考えています。これ(森友再調査実施)を受入れさせて不出馬だったら国民は納得すると感じます。しかし、そうでなくて不出馬だったら今までのご自身を否定して古い自民党の軍門に下ったように見えますが、その2点について聞かせてください。

 石破 河野氏との会談の詳細をここで申し述べるべきだとは思っていません。しかし今、申し述べたように、一番悲しんでいる人の思いに寄り添わなくて、私は政治の名に値すると思ってはいません。そのことは河野氏に申し上げました。「この点は大事ですよ」ということです。「再調査はしませんよ。これでおしまい」であってはなりません。

 近畿財務局職員・赤木俊夫氏の妻・赤木雅子氏がたった1人でいろいろな活動をされていて、雅子氏が何を言っているのですか。何について明らかにしてほしいと言っているのですか。そのことにも向き合わないことはあっていいとは私は思いません。それがまず必要な姿勢だと思います。

 「再調査では、財務省は結局身内なのでしょう。身内の再調査がどうして信用できますか」という声があります。それでは、第三者委員会は何か。それを財務省の下につくるのか。あるいは、国会につくるのか。いろいろな手法があるのだろうと思っています。私は、「これは済んだ問題だからおしまい」という姿勢は取っていません。あるべきだとも思っていません。そのことにも河野氏に強く申し上げています。河野氏はそのことについては同意したということです。

 「それも同意できないで、なんで改革派なのですか」と尋ねたのかもしれませんが、私は「この問題にどう向き合うのか」という思いにおいて一致すれば、それは改革派を否定することにはならないと思っています。

 それが、どなたかに対する忖度や遠慮などであるかは、私は判断する立場にはありません。

 ――ということは、「河野氏は考えを変えて森友再調査をする可能性がある」というふうに石破氏は捉えられたと理解してもいいのですか。

 石破 それは、再調査がどの場面で、いかなる権限において、誰がやるのかということです。「再調査」という中身がわからないままに、「やる」とか「やらない」という話をすべきではないと私は思います。しかし、一番泣いている人が納得しないでどうするのですか。一番悲しんでいる人が納得しないで、どうして国民の理解が得られるのですか。私は、そこは譲ってはならないと考えています。

 手を挙げている記者がほかにもいたため、ここで再質問を続けることを止め、会見が終了した直後、声掛け質問をした。

 ――河野氏が森友再調査するのかどうか、どっちなのですか。イエスかノーか。曖昧なのですか。

 石破 私に聞かれてもわかりません。

 ――どっちなのですか。はっきりしないではありませんか。

 石破 河野氏に聞いてください。私がいうべき立場ではありません。そういう姿勢で臨んでもらいたいということです。

 ――(石破氏の主張が)ちゃんと引き継がれる自信はあるのですか。いま話をされた(ことが)。

 石破氏 そうしていかなければなりません。それが私の責任だと思います。

 出馬会見では森友再調査を否定した河野氏が石破氏との面談後、考えを変えて再調査をすると言い出すのか否か。別の言い方をすれば、安倍前首相への忖度を断ち切るのかどうかが注目される。このことが「小石河連合」が改革派なのか、“エセ改革派”なのかを判断する試金石になるのだ。河野氏の言動から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

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