インテルのファウンドリ市場「再進出」は成功するか?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
米中対立も背景に、世界的に関心が高まっている半導体のファウンドリ事業。業界トップのTSMCや2位のサムスン電子が勢いを見せるなか、インテルがファウンドリ市場への再進出を宣言した。業界の勢力図は塗り替えられるのだろうか。
インテルの再進出宣言の背景
車載半導体の不足で、自動車製造に深刻な影響が出ている。さらに、半導体は最先端の武器に欠かせないため、半導体が確保できない場合、国の安全を脅かされることにもなりかねない。
現在、米中対立が先鋭化していて、台湾有事の際に、台湾のTSMCがこれまで通りに事業を継続できなくなるかもしれないという懸念が広がっている。このため、バイデン政権も半導体の自国製造を模索し、そのなかでもファウンドリ事業が注目されている。
半導体の製造は台湾、韓国などアジアを中心に進んでいて、不測の出来事によって半導体が供給されなくなれば深刻な事態になると懸念される。半導体を米国内で製造することになれば、その恩恵をもっとも受けるのはインテルであろう。また、ファブレス企業の多くは米国企業であり、米国内に受託製造企業があれば、そうした企業にもメリットが生じるだろう。
インテルは成長著しいファウンドリ事業へ進出したいという思いが強く、前述のような背景もあって米国政府を頼みにして、ファウンドリ事業への再進出を宣言したのではないかと考えられる。
インテルの課題と今後の展望
ファウンドリ市場の1位は台湾のTSMCで、2021年第1四半期の実績では世界シェアの55%を占めている。2位はサムスン電子(17%)、3位はUMC(7%)、4位はグローバルファウンドリーズ(5%)、SMIC(5%) などの順である。
インテルは現在、ファウンドリ事業で実績がない。すでに5ナノ工程を確保し、3ナノの技術開発に入ったサムスン電子やTSMCの技術力に、後発のインテルが短期間で追いつくことは容易でないと指摘する専門家は多い。
インテルも手をこまねいているわけではない。インテルはまったく新しい微細工程技術によって、上位2社に追いつこうとしている。超微細工程に欠かせない露光装置でEUVを製造しているASMLとも提携し、新しい技術開発に挑んでいる。
確かに、インテルにはプロセッサー製造の長年の経験と技術が蓄積されていて、技術力で微細工程技術の遅れをカバーしようとしている。しかし、アップルなどの最先端技術の製品をほぼ独占し、安定したビジネスを展開している台湾のTSMCや韓国のサムスン電子を脅かすようになるのは困難と見る向きも多い。
インテルが技術革新を起こして、再びファウンドリ事業でも上位に浮上するのか。それとも、TSMCやサムスン電子とは違う戦略を取り、ライバルと競合しない低いスペックの製品の製造に注力するのかなど、まだわからない。資金力や技術力など総合的に考えると、インテルは無視できる相手ではない。インテルがファウンドリ市場でどのような結果をもたらすのかが注目される。
(了)
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