【IR福岡誘致開発特別連載60】IR長崎、地元の報道は「画竜点睛を欠いて」いる
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前号(IR長崎、メディアの報道に耳を傾けるべき)で、世界的に著名なカジノ専門誌IAG(Inside Asia Gaming)の記事報道を紹介し、非常に優れた内容だと伝えた。今後について具体的かつ的確な指摘をしており、とくにIR開発事業の各関係者はぜひ参照してほしい。
長崎、佐世保両市の報道機関は、IR開発事業について米国ハイアットホテルグループが参加する予定であること、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンの林明男社長が地元金融機関ならびに地元商工会との協力体制について協議したことなどを伝えるのに終始している。しかしこれらはIR実現にとって根幹的な事項ではなく、いわば"枝葉"の事項であり、重要なことではないというつもりはないが、"本末転倒"といえる。
上記の地元金融機関とは、福岡銀行フィナンシャルグループの傘下の銀行であり、この協議、たとえ福岡の地方銀行グループ本社の協力に関するものであったとしても、IR開発事業にとっては完全に役不足なのだ。
簡潔にいえば、IR誘致開発に巨額に資本が必要であり、IR長崎の総事業費3,500億円とそのエクイティ(総資本)の資金調達は、IAGが指摘するように、日本国内のメガバンクの参加か、世界的にメジャーな投資銀行の参加なくして、実現できるものではない。
これらは"プロジェクト・ファイナンス"といわれるもので、何かを担保とする一般的な融資とは違い、当該プロジェクトの予想収益に対する評価に基づき融資が実行される。おそらく、地元報道機関はこの点への理解に乏しいために、的確な報道をできずにいるのだろう。
IAGの記事は、カジノ・オーストリア・インターナショナル・グループと長崎県行政の関係者に彼らにこの問題をクリアできるのかどうか、その道の専門家がいるのかどうかについて疑問を投げかけているのだ。
これに関して、規模を小さくして実行すればと良いという意見があるかもしれない。しかし、安倍前政権が制定した"IR推進"および"IR実施法"は施設建物(ホテル、コンベンション、MICE施設など)の延床面積や収容人数の下限を厳しく制限している。北海道苫小牧市、和歌山市、長崎県と佐世保市は、当初からこの制限規制では地方都市でのIRは実現不可能であると強く反対していた。これらの反対は受けいれられておらず、両法は現在も大都市向けの建て付けになっている。
この規制をクリアするには、年間集客数840万人が必須となる。そのための総事業費が3,500億円という巨額なものとなっているのだ。しかし、この840万人は非現実的な目標数値だ。オーストリアの人口は約880万人であるが、1国の国民のほぼすべてがハウステンボスに毎年来るといって信じられるだろうか。九州最大の福岡都市圏にある福岡ドーム(PayPayドーム)の年間集客数は、コロナ禍前の2019年で約400万人超(プロ野球、コンサート、コンベンションなどすべて含む)。ハウステンボスの集客実績年間は最高でも300万人超であり、開業時と2018年の2度しかない。
くわえて、ハウステンボスをめぐっては、財界人は2003年2月の会社更生法申請による経営破綻や、過去に日本興業銀行(現・みずほ銀行)や野村ホールディングスなどが被った巨額の被害などを記憶していよう。
IR長崎は当初から、来客の大半が中国の富裕層であるという計画を立てていた。しかし、コロナ禍と習近平政権による香港マカオのカジノ企業に対する規制強化のため、中国人は海外のカジノ訪問を日頃から厳しく制限されている。IR長崎の目論見はすでに外れている。IR長崎IRはいわば根幹となる"龍の眼が入ってない"計画なのだ。すなわち巨額な資金を融資する世界的な金融機関の参加という眼が欠けているのだ。
【青木 義彦】
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