2024年11月22日( 金 )

“横浜版モリカケ事件”で山中市長は菅支配市政を転換できるか!?

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

小川議員の応援演説がネット上で公開

 “横浜版モリカケ事件”といわれる旧横浜市庁舎契約問題で、山中竹春市長が菅支配市政から転換するのかが注目されている。菅首相が“影の横浜市長”として影響力をおよぼしてきた林文子市政が進めた再開発計画の契約期限は9月30日だが、横浜市長選(8月22日投開票)の真っ最中に山中氏への応援演説で立憲民主党の小川淳也衆院議員が「森友・加計問題と同じ」と訴えて格安の売却価格を問題視、市民の間に急速に疑問の声が広がっている。

 「横浜市の旧市庁舎の未来に住民意思の反映を求める会」の高橋健太郎代表らは24日に記者会見し、次のような経過説明を行った。

 「横浜市長選の最中の8月7日に山中現市長の街宣に、小川淳也衆院議員が応援にやってきて、『これは森友・加計問題とまったく同じだ』と言われた。隣には山中現市長がいて、小川さんの演説にうなずいていたわけです。だから選挙中に『市長になったときには調査をして情報開示をする』と言ったと思う。ただ情報公開がないままに、本契約にハンコが押されてしまうかもしれない。だから、そのことは避けなければいけない」。

 小川氏の応援演説の動画はネット上に公開されており、たしかに次のように訴えていた。

 「何だか聞くところによると、皆さんの大切な市庁舎も、メンテナンスだけで56億円もかけてきたのに、7,000万円で売ると言っているではないですか。買いたい人、いるのではないですか。『マンションよりも安い』と思う人がいるかもしれない。ちゃんと説明してください。これは森友と加計の問題とまったく同じだ(現・市長の山中候補が隣でうなずく)」。

 1959年に完成した旧市庁舎は戦後日本を代表する近代建築で、保全を求める売却反対の声もあるなか、林市政は新しい市庁舎を建設する一方、旧市庁舎売却(約7,700万円)と土地の賃貸(約1万6,000m2を年約2億1,000万円)がセットになった計画を推進。契約直前にまで至っていたのだが、市民の間で「安すぎる」「たたき売りだ」「事業者への巨大な利益供与になる」などの批判が噴出していた。

「横浜市の旧市庁舎の未来に住民意思の反映を求める会」の記者会見(右端:高橋代表)
「横浜市の旧市庁舎の未来に住民意思の反映を求める会」の記者会見(右端:高橋代表)

横浜市の評判の悪化を心配

横浜市の旧庁舎
横浜市の旧庁舎

 記者会見には、市議会でこの問題を追及する井上さくら市議も同席。別の市民団体「横浜市民の財産を守る会」(高田尚暢代表)も市への陳情や要望を繰り返すなかで、建物の売却価格が安すぎることに加えて、77年間の定期借地契約に基づく賃貸料も年間2億1,000万円と格安であることを問題視していた。

 通常は固定資産税の3~5倍(年間5億5,000万円~8億8,000万円の賃料)が相場なのに、3分の1から4分の1にすぎないと、この市民団体は問題視し、相場との差額が77年間で約230億円になるという試算も行っていたのだ。緊急ネット署名活動を実施した高橋代表は会見で、横浜市の評判が悪くなることを心配していた。

 「『横浜版モリカケ』と言われたら、横浜市としてはやっぱり困るのではないですか。これから再開発を進めようとしている(事業者の)三井不動産なり東急電鉄なり京浜急行がそんなダーティーなイメージの下で高層ビルを建てて、『街の賑わいを戻します』と言ってもうまくいかない。だから『横浜版モリカケ』と言われたら困るし、そうでないのなら、そうではないことを示してほしい。『これだけ市民の利益になるので』と経済的なことを示してほしいし、それ(情報公開)がないままに進められるから、『菅総理がもちかけた巨大な利益供与ではないか。横浜版モリカケではないか』と言われてしまうのではないかと思うのです」。

 “影の横浜市長”とも呼ばれる菅首相が推す幹部だらけの横浜市役所に乗り込んだ山中市長だが、カジノ(IR)撤回を表明したことに続いて、旧市庁舎契約問題でも市民の声を反映することができるのかが注目された。しかし、30日の会見で山中市長は旧市庁舎の契約締結を発表した。

<参考情報>

山中竹春市長
山中竹春市長

 ちなみに、映画「パンケーキを毒見する」で“主役”の菅首相は、小此木八郎氏の父親の彦三郎・元建設大臣の秘書を皮切りに、横浜市議を経て国会議員へと登り詰めるなか、「影の横浜市長」と呼ばれるようにもなったことが紹介されている。横浜市コンプライアンス顧問を務めてきた郷原信郎弁護士は、こうした異常事態を「菅支配」と呼んでいた。

「『横浜市の幹部人事(局長・区長)の人事案は、確定前に菅事務所に送付されて了承を得る』という、地方自治体の人事ではあり得ないやり方が、20年以上にわたって続いてきた(実際に、稀ではあるが、人事案が菅事務所側に覆されたケースもある。)それによって、横浜市の幹部職員は、菅氏の意向に従い、あるいは忖度せざるを得ず、実際にIRの山下ふ頭への誘致が民意を無視して進められ、瀬谷の米軍通信基地跡地での花博の開催、テーマパークの建設などの事業計画が進められ、開発重視の施策がとられてきた」(8月6日付のアゴラ「『小此木・山中候補落選運動』で“菅支配の完成”と“パワハラ市長”を阻止する」)。

【ジャーナリスト/横田 一】

関連記事