新生銀行はどうなる?SBIは買収可能か?~米ファンドに食い物にされた20年(中)
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(株)新生銀行とネット金融大手SBIホールディングス(HD)(株)の攻防が、連日メディアの紙面に躍る。SBIが新生銀にTOB(株式公開買い付け)を仕掛けると、新生銀は買収防衛策の導入を決めた。銀行界初の敵対的TOBに発展した。混迷が続く新生銀の足跡を振り返る。
SBIのTOBに新生銀は買収防衛策で対抗
SBIは9月9日、新生銀に対するTOB を開始すると発表。出資比率を最大48%に引き上げて、連結子会社化する。買い付け額は最大約1,164億円。役員交代も求め、元金融庁長官の五味廣文氏を新たな会長として推薦、同氏の内諾を得たとしている。
「SBIがこのタイミングでTOBを仕掛けたのは、菅義偉政権が終わる前に…という焦りがあった」(銀行関係者)。菅氏は首相に就任すると地方銀行の再編を進める意向を示した。菅氏が掲げる地銀再編と歩調を合わせて、SBIの北尾吉孝社長は「地銀連合」構想を推進した。
「菅政権のうちに金融庁に根回しをした。政権が変われば、どういう状況になるかわからないリスクがある」(同)。
銀行の議決権の20%以上を保有する「銀行主要株主」になるには国の認可が必要だが、金融庁は9月9日、SBIに認可を出した。これを受けて、SBIは出資比率を48%に高めるTOBを開始した。
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山口FG
SBIホールディングスと「地方創生」で提携新生銀は9月17日、SBIから提案されているTOBに対抗する目的で、買収防衛策の導入を決めた。買収防衛策はポイズンビル(食べたら毒が回る)という意味。既存の株主に新たな株式の「予約権」を無償で配り、予約権を行使することでSBIの保有比率を引き下げ、買収を阻止するという仕組みだ。銀行界初の敵対的TOBに発展した。
岸田文雄政権が誕生する。SBIのTOBと新生銀の買収防衛策に国はどう対応するのか。銀行界は注視している。
公的資金の買い取りを提案するSBI
今後、友好的スポンサーであるホワイトナイト(白馬の騎士)が出てくるのだろうか。新聞報道によると、ホワイトナイト候補として、ソニーグループ(株)や(株)セブン&アイ・ホールディングスなどの名前が挙がっているが、簡単ではない。ホワイトナイトになるには相当の覚悟が必要。どの企業も部分的な提携ならやりたいと思っていても、丸ごとでは腰が引ける。デューデリジェンス(適正評価手続き)を行う時間もない。
最大の焦点は公的資金の扱いだ。国は1998年と2000年に新生銀に公的資金を注入し、3,500億円の回収目標額を掲げる。国は預金保険機構(発行済み株式の12.50%)と整理回収機構(同9.28%)を通じて21.78%の株をもつ。SBI(19.85%)を上回る事実上の筆頭株主だ。
日本経済新聞電子版(9月16日付)は、SBIの公的資金の返済スキームを報じた。(1)SBIが48%を上限に新生銀株を取得、(2)自社株買いなどで一般株主の比率を低下、(3)公的資金を注入している国とSBIの議決権が計90%に達した段階で非上場化、(4)国の保有株を買い取り、公的資金を返済する――といった内容だ。
SBIの公的資金の返済スキームを金融庁やほかの株主がどう判断するのか。買収防衛策の是非を諮る臨時株主総会で結論が出る。賛同を得られればSBIのTOBは失敗、否決されればSBIのTOBは成立することになる。金融庁がその鍵を握る。
フラワーズ氏は「元祖ハゲタカ」の異名をとる
新生銀の前身である日本長期信用銀行は98年10月、経営破綻し一時国有化された。国は8兆円近い公的資金を使って不良債権を処理、旧長銀株の大半を譲渡した。
2000年3月、米投資会社のリップルウッド・ホールディングスを中心とする国際金融シンジケートがわずか10億円で買収した。「新生銀行」に社名を変更し、1,200億円の増資を引き受けた。約8兆円の税金が投入された銀行をたった1,210億円で手に入れたわけだ。
長銀買収をリップルウッドとともに主導したのが、米投資会社JCフラワーズのクリストファー・フラワーズ氏。リップルウッドは、ティモシー・コリンズ氏がゴールドマン・サックス(GS)出身のフラワーズ氏と共同で設立した投資ファンドだ。「実態はGSの別動隊」(国際金融筋)と取り沙汰された。日本政府のアドバイザーだったGSが長銀の売却先に推薦したのが、直前までGSの共同経営者だったフラワーズ氏がつくったリップルウッドだったため、「出来レース」(同)と酷評された。
フラワーズ氏は新生銀の取締役に就き、「元祖ハゲタカ」の異名をとった。
(つづく)
【森村 和男】
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