アビスパ連勝ならず。改めて知る、勝ち点3の重さ 福岡1-2清水
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サッカーJ1リーグ・アビスパ福岡は10月2日、ホームのベスト電器スタジアムに清水エスパルスを迎えてJ1第31節の試合を行った。
アビスパはここまで引き分けをはさんで4連勝中。この試合に勝利すれば、他の試合結果にかかわらずJ1残留が決定する大切な試合だ。一方の清水エスパルスは、「サッカーどころ」として知られる静岡県を代表するクラブとして、常に強豪の一角としてJリーグを戦ってきた。Jリーグカップ優勝1回、天皇杯優勝1回を誇るが、今シーズンは15位と低迷。降格圏との差はわずかという状態で後半戦の戦いに挑んでいる。
鹿島アントラーズに3-0、サガン鳥栖に3-0、川崎フロンターレにも勝った……正直、筆者自身も「今のアビスパは強い!」という気構えで向かった清水エスパルス戦だが、サッカーの難しさ、J1の厳しさを改めて思い知らされる試合となった。
立ち上がり、アビスパは清水のサイドを封じる作戦に出る。右サイドのDFエミル・サロモンソンとMF金森健志、左サイドのDF志知孝明とMF杉本太郎が連携して両サイドに蓋をし、清水に前にボールを運ばせない。13分にはMF杉本がパス交換からシュートを放つが、これは清水の日本代表GK権田修一が好セーブを見せ、得点ならず。
27分、飲水タイムの直後にゲームは動く。ゴール前でこぼれ球を拾った清水FW藤本憲明がすかさずシュート。これはGK村上昌謙が右手一本で防ぐが、さらに詰めていたのは清水FWチアゴ・サンタナ。抜け目なく決めたゴールで清水が先制する。
これまで飲水タイムやハーフタイムなど、試合の切れ目でプレーを修正して得点につなげるのはアビスパの必勝パターンだったが、この試合は飲水タイム直後に失点という逆パターンとなってしまう。
だが選手にはそれほど動揺は見られず。アビスパは組織的な守備で清水にそれ以上のチャンスをつくらせないまま、前半が終了する。
さらに試合が動いたのは、後半開始直後だった。48分、清水は前線でFWチアゴ・サンタナにボールを預ける。ここにアビスパのキャプテン・MF前寛之がチェックに入ると、チアゴはボールロスト。だがこのボールを拾った清水MF西澤健太が、ワンタッチでゴール前に山なりのクロスを送る。このボールに反応したのはアビスパGK村上昌謙と清水MFカルリーニョス・ジュニオだが、間一髪の差でカルリーニョスがシュートに成功。ボールはそのままゴールに収まり、アビスパはわずか2つのダイレクトプレーで2点のビハインドを背負うことになった。
アビスパ守備陣が複数失点を喫するのは7月の横浜F・マリノス戦以来9試合ぶり。2失点とも守備組織を崩されてのゴールではないが、それでも失点は失点。2点を追う、苦しい後半がスタートした。
62分、長谷部茂利監督はFWジョン・マリ、MFジョルディ・クルークス、MF田邉草民をピッチに送り込む。得点を奪い、追いつくのだという明確な意思の伝わる交代カードだ。だがこの日のアビスパは、競り合った後のセカンドボールをことごとく清水に奪取される厳しい状況が続く。累積警告で出場停止となったFWフアンマ・デルガドは「競り合いに勝ち、ボールをキープする」稀有な能力をもったFW。セカンドボールを奪えなければカウンターの速攻は難しいが、フアンマ不在の影響は明らかだ。
しかし、アビスパの勝利への執念は消えてはいなかった。81分、清水をゴール前まで押し込んだ展開で、中央のMF前寛之が左サイドのDF志知孝明にパス。志知がこれをダイレクトで上げると、エリア内で待っていたFWジョン・マリが長い脚を伸ばしてチップキック。GK権田修一の必死のセーブをかいくぐり、ボールはネットに吸い込まれた。
その後もアビスパは同点、逆転を目指して必死の攻撃を続ける。MFジョルディ・クルークスは切れ味鋭いキックで何度も清水ゴールを狙い、最終盤にはDFドウグラス・グローリが最前線に上がるパワープレー。95分、クルークスのコーナーキックをジョン・マリが落とし、これにグローリと田邉草民が詰めるが、これもゴールならず。直後に主審のホイッスルが鳴り響き、試合終了となった。
アビスパが敗れたフィールド上に、言葉にならない咆哮が響く。声の主は、ピッチに両膝をついたFWジョン・マリだ。最後の最後までゴールを狙い続けたカメルーン代表は、自分への怒りと悔しさで、振り上げた拳を何度も何度もピッチに叩きつけていた。
悔しい悔しい敗戦となったこの試合だが、いつまでも悔やんではいられない。ジョン・マリが見せた勝利への執念は、すべての選手・スタッフが共有しているはず。その気持ちがあるかぎり、アビスパはフィールドで躍動し続ける。
次節は10月16日、アウェーでヴィッセル神戸との一戦だ。神戸は前回対戦して以降、日本代表FW大迫勇也、元日本代表FW武藤嘉紀、元FCバルセロナのFWボージャン・クルキッチを補強。さらなるタレント軍団となった神戸を打ち破るためには、アビスパがここまで積み重ねてきた組織的な守備と速攻を徹底することが必要だ。
J1残留決定とはならなかったが、この試合で改めて「勝つことの難しさ」「勝ち点3の重さ」「最後まで戦い抜くことの大切さ」を学ぶことができた。我々アビスパサポーターも襟を正して、残り7試合となったリーグ戦に臨みたい。
【深水 央】
法人名
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