『脊振の自然に魅せられて』草原の山、天山へ(後)
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天山の散策道の脇に秋風に揺れながら咲くマツムシソウの姿が。1本の株からたくさんの花を咲かせる「大家族」のマツムシソウもいれば、大きな花をつたけた一輪の花もあった。
薄い紫色のマツムシソウがスマホの画面に映り込んでくる。仲間たちは、それぞれ好きなアングルでマツムシソウを撮影。激減していたマツムシソウだが、地元の方々の保護によって随分数を増やしていた。
撮影後、東の七曲峠方面へ足を伸ばすと、多くのハイカーたちが秋の花を求めて歩いていた。小グループのハイカーもいれば、10名近くの団体もいた。
しばらく歩くと秋の七草であるオミナエシが黄色の花を輝かせ、マツムシソウと仲良く咲いているのに遭遇した。オミナエシは数を減らしている植物で、遭遇するのはラッキーである。このオミナエシに「こんにちは。マツムシソウと仲良くしているね」と声をかける。
また、細く伸びた小ぶりのサイヨウシャジンが1本咲いていた。釣鐘状の小さな花をつけ、風に揺れつつ太陽を背にするサイヨウシャジンの姿を見るのは久しぶりだ。この花は、里山の田の土手や、草原にしか自生していない。
デジカメで逆光撮影をする。かつて雨露をたっぷり含んだサイヨウシャジンに出会ったことがある。釣鐘状の小さな花についた雫がレンズのように輝いて見えたのを思い出す。
仲間に追いつくと「トリカブトがありますよ」と教えてくれた。そこは少し水気のある散策路から離れた場所で、深紅の紫色のトリカブトが10本近く咲いていた。
植物のなかでトリカブトほど濃い紫色の花はない。桔梗の花よりも濃い紫色である。15年以上前、天山の散策路にはトリカブトがたくさん咲いていたが、今は細々と生き延びている状態である。仲間たちと少し離れた場所に移動し、正面に脊振山系が見える場所で休憩した。
ワンゲルの後輩たちもスマホに買い替えており、いつしか「スマホの使い方がわからない」というスマホ談義が始まっていたので、私は遠目からの場面を動画撮影した。
スマホ談義が一段落したところで、それぞれ腰を下ろし、昼食をとる。筆者もビニールシートを敷いて準備をする。「しまった、コンビニで買ったおにぎりを車のなかに置いてきた」。天山スキー場の女性Mへの手土産と一緒に入れていたのだが、車に忘れてきてしまったようだ。筆者は、いつも携帯している非常食の「柿の種」で腹を満たすことにした。それを見かね後輩がビスケットをわけてくれた。感謝、感謝!ありがたかった。
後輩がマスカットやコーヒーゼリーを仲間のために振る舞ってくれた。水気のあるぶどうのマスカットは喉を潤した。山で果物を食べられるのは贅沢である。昼食を終え、間隔を開けて記念写真を撮り、天山山頂へ引き返す。サイヨウシャジンの花を入れ、仲間の後ろ姿を撮影。曇天の空がカメラのファインダー越しに写り込んできた。
そして、大きな石碑がある場所まで戻り、脊振山系の浮岳の眺望を楽しむ。その後、登ってきた道を下って行くと、登って来る多くの人たちとすれ違った。声をかけてみると福岡方面からやってきた家族連れが多かった。駐車場に戻ると天山登山にやってきた車で満車になっていた。
帰り道、昨シーズン事務所処理でお世話になった天山スキー場の女性 Lに挨拶へ。広い駐車場はオフシーズン、車のドリフト用の有料コースとして開場している。受付のボックスから日焼けした彼女が窓際から顔を出していた。お互いマスク姿で挨拶を交わす。実に1年半ぶりの対面である。
コンビニで購入したスナック菓子をお土産として渡すと、お返しに冷蔵庫からアイスコーヒーを出してくれた。5人分のペットボトルのコーヒーを抱え、仲間のもとに戻る。5人とも冷えたアイスコーヒーで、ほてった体を冷やした。そして、彼女に別れを告げ、福岡に戻った。
脊振の自然を愛する会のワンゲル仲間との天山の花をめぐる楽しい山旅だった。
・その他、出会った秋の山野草
ツルリンドウ、キュウコゴメグサ、センブリなど<天山発電所>
九州で2番目の揚水発電所。夜間の余剰電力で厳木ダムから水を汲み上げ、昼間に520mの落差を利用し発電を行っている。2つのダムで水をやりとりするのは全国でも珍しいと国土交通省の説明にあり。発電量60万 KW。展示館も建てられていたが今は閉鎖されている。筆者は一度入館したことがある。(了)
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行法人名
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