2024年12月22日( 日 )

【北九州】市立理容美容学校が再出発 「九州CTB専門学校」学園長にタレントの藤本一精さん

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九州CTB専門学校 今年4月、北九州市に新しい学校が誕生した。学校法人国際学園(北九州市小倉北区)が運営する「九州CTB専門学校」。開校の経緯は少しユニークだ。前身になった学校は、北九州市立高等理容美容学校。1950年設立、70年の伝統を誇る全国唯一の公立理容美容学校として多数の卒業生を送り出してきた。卒業生のなかには、今年、小説『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)で本屋大賞を受賞した作家・町田そのこさんなど業界外で活躍する人材も多い。しかし、北九州市が経営移譲を決定したことで3社によるコンペを経て、国際学園が選ばれた。新生なった同校の学園長に就任したのは福岡のテレビ番組ではおなじみ、タレントの藤本一精さん。理容師も美容師も“美を創造するアーティスト”と定義する藤本学園長と西田真紀校長に、同校が目指す学園像について聞いた。

市立美容・理容学校からの経営移譲

 ――全国唯一の公立美容・理容学校(※)として長い歴史をもっていた「北九州市立高等理容美容学校」。今年4月に「九州CTB専門学校」として再出発しました。民間移譲された経緯は。

西田真紀・校長
西田真紀・校長

 西田真紀・校長(以下、西田) 北九州市立高等理容美容学校は1950(昭和25)年に設立されました。70年の長い歴史のなかで多数の卒業生を送り出し、今でもOB・OGの方々の深い愛校心に支えられています。2019年ごろに民間移譲に関する議論が始まり、私たち国際学園を含めた3社がコンペに臨んだ結果、幸いにも選ばれることができました。経営移譲にあたっては市内に1校しかない「理容科」を維持すること、従業員についても希望者はそのまま受け入れることなどいくつかの条件が出されました。私たち国際学園は北九州で学校運営を始めて13年の実績を重ねてきました。当初は柔道整復師の養成に特化していましたが、今では13学科を有する専門学校として生徒数1,000人を超えるまでになっており、運営移譲先に選ばれたのはおそらく、専門学校を複数学科運営してきた実績が評価されたのだと思います。

 現在、九州CTB専門学校では「市立学校」時代に入学した生徒と今年入学した生徒を合わせて、理容学科1年生10人、2年生8人、美容学科1年生30人、2年生38人(9月時点)の計86人の生徒さんが学んでいます。

※:理容は容姿を「整える」ことを、美容は容姿を「美しくする」ことを目的とする(理容師法、美容師法より)。理容の特長は剃刀(カミソリ)での剃毛などだが、近年では両者の垣根をなくす方向で融合が進んでいる。理容師や美容師になるには、理容師法と美容師法に規定された理容師養成施設・美容師養成施設を卒業し、それぞれの国家試験に合格する必要がある。

 ――国際学園として運営に携わるのは初めての分野(美容・理容)です。公立からの運営移譲ということもあって苦労されたのでは。

校舎はJR八幡駅から徒歩5分ほど
校舎はJR八幡駅から徒歩5分ほど

 西田 元からいらっしゃった職員のうち市の出向だった方々は戻られましたが、授業を直接担当する先生方はほとんど残ってくださいました。教員の方々の多くが卒業生ということで学校のことを熟知されていますし、非常に教育熱心な方ばかりです。朝晩問わず学生さんの補講などにつきあうなど生徒に寄り添おうとする先生が多くて心強く、教育の面での苦労はとくに感じていません。

 これまでは公立ということもあってとくに募集活動をしなくても学生が集まっていましたが、今年初めて募集活動を行ったところです。私たち国際学園の理念と掲げる目標には自信をもっておりますので、専門教育を提供するとともに卒業後も充実した人生を送っていただけるような価値観をお伝えすることができると信じています。

子どもたちに〈刺さる〉言葉で学校生活を伝える

 ――テレビでもおなじみ、知名度は抜群の藤本さんが学園長を引き受けられたのは、学校の広報強化という意味もあるのでしょうか。学園長を引き受けられた経緯は。

学園長でタレントの藤本一精さん
学園長でタレントの藤本一精さん

 藤本一精・学園長(以下、藤本) じつは私はテレビ業界に入る前からずっとダンス業界にいて、出身地の熊本でダンススクールなども運営していたのです。6、7年前に、ある障がい者施設から「ダンスの先生を派遣してほしい」という依頼があって応じたところ、知的障がいの子どもたちが劇的に変化したんですね。味付きの水でしか歯磨きできなかった子が真水でできるようになったとか、落ち着きがでてきた、コミュニケーション能力が向上したとか。それじゃあこの部分をもっと研究してみようということで「コミュニケーションケアダンス」という、手話を用いたダンスをつくったのです。さらに、腸内運動を活発にさせて善玉菌を増やすダンスを医療関係者の方と一緒につくりあげたり。そのときに国際学園の理事長である水嶋(章陽)先生とご一緒させていただいて、水嶋理事長が掲げている「ZERO100プロジェクト」(※)に非常に共感しました。ダンスって好きな人だけが踊るだけではなく、踊れるようになることですごく自信がつくし、健康維持にもすごく効果があるんです。目指すビジョンが一致したことが、学園長をお引き受けした最大の理由です。

 放送業界で30年近くやってきたなかで、さまざまな企業関係者の方と話す機会もたくさんありました。だから水嶋理事長には「子どもたちの言葉でPRしないと、おとなの考えってなかなか子どもたちに刺さりにくいですよ」という話をしていたんです。理事長は「ぜひ、その部分を強化してほしい」と。私がこれまでやってきたことの集大成を出すことしかできませんが、テレビでの活動で培ってきたコミュニケーション力を子どもたちに教えることもできるだろいということで、ぜひチャレンジしてみようと。

※:「ZERO100プロジェクト」=0歳から100歳までの「動ける身体づくり」をサポートする、という国際学園の理念

キャッチフレーズは、「ワタシが変わる、セカイが変わる」
キャッチフレーズは、「ワタシが変わる、セカイが変わる」

心身の健康をサポートし、アーティスト・クリエイターを育てる

 ――コロナ禍のなかで始まった初年度。特別な準備も必要だったのでは。

 西田 朝の登校時は受付で検温と消毒をして、授業では体育館などを使って学生さん同士の間隔を広くとり、実技ではマスクとフェイスシールドの着用を義務づけています。感染防止はかなり徹底していますね。消毒液などは継続して使う必要がありますが、とにかく学生と職員の健康を守ることを最優先にしています。

 ――生徒さんの年齢層は。

 西田 18歳から入学できます。最近は社会人経験のある40代の方とかが美容・理容免許を取得することもありますが、当校の学生さんは18歳から20代の方がほとんどです。来年4月からは通信制課程を設置する予定で、たとえば理容師の方が美容師の免許を取りたいなどのニーズに応えることができるようになります。すでに医療系の資格をもっている方からの問い合わせなども受けており、通信制については幅広い年齢層の方を受け入れることになると思います。

 ――藤本学園長も授業を受け持たれるのですか。

 藤本 来年4月からは当校の個性を強く打ち出すことができますので、その段階で本格的な授業を受け持つ予定で、「踊れない人のための楽しいダンス」をカリキュラムとして考えています。今年は特別授業というかたちで行っていますが、コロナが収束するまではかなり難しいですね。

 高校の先生が集まるオープンキャンパスであいさつをさせてもらった際に、「テレビに出ているやつがなぜここにいるんだ」という視線を感じたので(笑)、まずは自己紹介から入って、障がいをもった子どもたちとの関わりなどを話したんです。すると、ある高校の先生から「生徒を連れて来るので、ぜひコミュニケーションについてのワークショップをやってほしい」とお願いされました。だから、意外に自分がここにいる意味は大きいのかなと。直接なにか技術を教えることはできないので、心の部分や対人スキルについて自分が蓄積してきたものを子どもたちに伝えたいと思います。

理容科1年生の内藤瑞樹くん(18)
理容科1年生の内藤瑞樹くん(18)

 ――前身の市立美容・理容学校は長い歴史をもち、卒業生も多いですね。

美容科2年生の古川春名さん(20)
美容科2年生の古川春名さん(20)

 西田 北九州市内を中心に、数千人のOB・OGの方々がいらっしゃって、学校を支えていただいています。同窓会もすごく協力的で会長さんと何度も面会させていただきました。皆さん愛校心が強く、学校が末永く発展するために応援したいという言葉をいただきました。同窓会のつながりが強いことに加えて美容・理容業界はまだまだ売り手市場ですので、就職についてはそれほど心配しなくていいと思います。まずは、今年どれだけ募集できるかというところが課題ですね。根付くまでには時間がかかると思いますが草の根戦略で、子どもたちのSNSを充実させることが重要だと思っています。

 ――充実した学校生活を生徒さんたち自身が発信することで広報にもなると。

 藤本 私もそれが一番大事だと思っています。子どもたちの人生を豊かにするお手伝いをしますし、その自信もあります。だからナマの学校生活を子どもたち自身の目線で伝えてほしい。

 ――保護者の方が最も重視されるのは国家試験対策でしょうね。

 西田 教員の方々が熱心に指導してくれますので、おかげさまでほぼ100%の合格率を保っています。何年かに1人失敗してしまう子がいますが、基本的にはすべての生徒さんが資格をとって卒業します。

 ――学校名にある「CTB」の意味は、「カッコいい(Cool)」「トリプル(Triple/3つの)」「理容(Barber)、美容(Beauty)、美しい体(Bestbody)」の略称とのこと。国際学園が目指す、心身の健康をサポートするという理念を校名に込めたように感じます。

 藤本 子どもたちの夢をサポートするということは、心と身体を支えてあげることと同じだと思うんです。子どもたちっていろいろな可能性を秘めていて、そこを広げていけるような学校が一番良い。美容・理容業界では第一に技術が必要ですが、技術的な壁をいくつも乗り越えて行った先に自分独自の道を見つけなければならないし、そこをクリアして素晴らしいアーティストやクリエイターになってほしい。先生と生徒さん、そして私たちが一緒になって楽しい学校生活をつくりあげたいと、すごくワクワクしています。美容・理容業界に少しでも興味をもっている子どもたちは、ぜひ学校に遊びに来てほしいですね。

【データ・マックス編集部】


<INFORMATION>
(学)国際学園 九州CTB専門学校(理容・美容)

学園長:藤本一精
校 長:西田真紀
所在地:〒805-0061 福岡県北九州市八幡東区西本町2-2-1
TEL:093-663-2223
FAX:093-663-1411
公式HP:https://ctb.ac.jp/
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