2024年11月22日( 金 )

「温暖化で北海道の米おいしく」麻生発言の影響は?~北海道内全体及び全国に飛び火も

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中村裕之・農水副大臣

 麻生太郎自民党副総裁の「温暖化で北海道産米が美味しくなった発言」が飛び出したのは10月25日。北海道4区の自民公認候補の中村裕之・農水副大臣(公明推薦)への応援で現地入りした麻生氏は、大票田の小樽市で応援演説をしたのだが、野党に格好の批判材料を与える結果となり、中村氏にプラスになるどころか逆に票を減らす要因となった。

 立憲民主党の蓮舫代表代行は2日後の27日、中村氏を猛追する野党統一候補の大築紅葉氏の応援演説をするために札幌市を訪れ、次のように訴えた。

 「(北海道の農業を)改めて調べました。北海道の農政の困難さ、どれだけ苦しい道だったのだろう。開拓民がどれだけ苦労し、この広い土地を、荒れ地を豊かな土壌に変え、実豊かな土壌に変え、さまざまな食材を産み出してくる。その歴史も調べずに、(温暖化で)温度が上がってコメが美味くなったのか。気候変動はいいことがあったのか。あまりにも、ではないか。しかも『ゆめぴりか』(北海道産米の名前)も間違っている。失礼極まりない。この人が自由民主党の副総裁ですよ。

 北海道をバカにして、調べることもしないで、農業を軽んじて、世界の最重要課題の気候変動が良かったと。この1点をもってしても北海道の皆さん、今回は自民党には入れないでいただきたいと改めて思いますが、いかがでしょうか」。

中村裕之氏(写真左)
中村裕之氏(写真左)

 続いてマイクを握ったフジテレビ元記者の大築氏も、「今日だって10月末の割に暖かいと思うかもしれない。暖かいのはありがといと思うかもしれないが、でも温暖化は世界をあげて取り組まないといけない問題です」と切り出し、地元への悪影響について次のように語った。

 「この夏では(北海道4区内の)後志の方ではあまりに暑くて、雨も降らなくて干ばつでジャガイモが小さいという悩みをうかがいました。お母さんたちもスーパーに行ってわかるでしょう。温暖化の問題は1つ1つ私たちの生活に影響を与えています」。

 街宣後、麻生発言について大築氏に聞くと、「農家が品種改良を重ねて努力の賜物でできたお米を、あのような発言をしたことは看過できないと思う」と答えた。

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 麻生発言については、立民の枝野幸男代表も26日、宮崎で「農家を傷つける発言で許しがたい」と記者団に語ると、公明党の山口那津男代表も北海道10区公認候補(自民推薦)への応援演説で「冗談ではない」と批判した。

 北海道4区だけでなく道内全体、そして全国的に悪影響をおよぼし始めたようにも見える麻生発言だが、なぜ隣で聞いていた中村氏は即座に訂正しなかったのか。しかも中村氏は農水副大臣でもある。

 問題発言が飛び出した翌26日午後5時すぎ、小樽駅前で公明党候補との共同街宣を終えた中村氏を直撃した。

 ――(麻生副総裁の発言を)隣で聞かれて、すぐに訂正しようと思わなかったのか。

 中村候補 麻生さんって、なかなか頑固だから。前に同じことを言って、「品種改良をやっている話だから駄目です」と言ったことがあるのが、それでもいうから。

 ――聞く耳をもたないのか。

 中村候補 そういうところがある。

 26日午後5時からの街宣では麻生発言について触れなかった中村氏がツイッターで謝罪表明をしたのは、麻生発言から1日半後の26日23時(私の直撃から約4時間後)で、以下のようにツイッターで連続投稿したのだ。「麻生太郎副総裁は『何事も前向きな捉え方があるだろう。北海道はこれから新幹線も高速道路も整備が進み良くなるじゃないか。』と、おっしゃりたかったのだろうと思いますが、北海道米についての発言は、中村裕之の認識とは異なる発言であり、気を悪くされた関係者には、私から心からお詫び申し上げます」

 「麻生太郎副総裁が中村裕之の応援演説で『北海道のコメが温暖化の影響で美味しくなった。』と発言され物議を醸しています。過去にも同様の発言があり、当時、中村裕之から『品種改良をはじめ、努力の成果です。』と、伝えました」

 「中村裕之の認識は『農業試験場の品種改良に加え、生産者の生産管理、JAをはじめ流通部門の品質管理など、多くの関係者の努力が相俟って、おいしいコメを家庭に届けることができるようになった。』と、考えています」

(ツイッターより一部引用)

    この連続投稿ツイッターと同じ内容を中村氏は街頭演説でも訴えるようになったものの、危機対応能力に疑問符がつくかたちとなった。麻生発言から1日半も経過してからではなく、隣で聞いていたときに即座に訂正と謝罪をしていれば、メディアの伝え方も違っていたのは明らかであるためだ。

 今回の麻生発言が北海道4区を含む道内全体、ひいては全国各地(とくに農業が盛んな地域)にどれほどの悪影響をおよぼすのか。総選挙の投開票結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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