【IR福岡誘致開発特別連載64】IR長崎「崩壊するべくして崩壊」(2)
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IR長崎の候補地ハウステンボスを運営する大手旅行会社の(株)エイチ・アイ・エス(HIS)は10月30日、2021年10月期連結決算の純損益が530億円(前期は250億円の赤字)の多額な赤字になるとの業績予想を発表した。2年連続の赤字で創業以来の危機となっている。売上は平時の約70%減である。
一方、長崎県は9月22日の定例長崎県議会で、一般質問(田中愛国議員・自民党)に対して浦真樹企画部長が、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンの試算ではカジノ粗利益の年間1,500億円の15%にあたる225億円と、日本人の入場料収益の半分にあたる84億円を合わせた約310億円が県に納付されるとして、IRの誘致開発は多大な税収になると回答している。
以上の2件は、IR長崎に関する異なる数字を示している。HISが2期連続の危機的な大幅赤字が確実である一方で、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンが経営すれば、長崎県の税収はバラ色の310億円になるという。両者は完全に理屈に合わない話である。
HISの巨額な赤字の原因は明らかで、コロナ禍の影響による海外旅行ビジネスの悪化だ。両者ともに、海外観光客主体の集客計画であり、突発的なことが起これば直接的な影響を受ける。後背地人口の少ないIR長崎は、間違いなくHISの実績が示している通りで、年間の集客計画840万人などは机上の空論であり、実現できる可能性はない。
仮に数年後、全国の海外観光客が政府目標の年間3,000万人に達しても、関東以北に60%の1,800万人、関西地域に30%の900万人、残りが福岡中心の九州に10%300万人が来ると、プロのアナリストは予測している。
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コロナ禍後の経済再生「IRは効果的かつ重要」前述の長崎県の回答は、コロナ禍前の年間840万人の集客計画からはじき出しているわけである。後背地人口の少ない地方の中堅都市では海外観光客誘致をIRの主たる目的にしている。また、これを集客計画の根幹にせざるを得ないのである。今や、当てにしていた中国人富裕層も期待できず、“絵に描いた餅”なのだ。
前号で報告したように、当該地の佐世保商工会議所は今月18日に「IRが実現する、佐世保市を中核とした地域社会の明るく輝く未来」と題した事業説明会を開催する。本末転倒の催事である。これに期待し、参加する地元の関係者は、前述した基本的な理屈を理解しているか甚だ疑問である。
商工会議所の案内状には、今後の取引条件や事業内容がいまだに見えていないとの注釈を付けているが、最初から本件誘致開発事業の基本が無視されているのだ。
IR長崎を当初から応援している各関係者も無責任である。金も出さず、一切のリスクも取らず、長崎県という「お上」がやることには反論せず、もしうまく行けばこれに乗ろうとする姿勢は愚かとしか言いようがない。
すでにIR長崎の事業は崩壊している。地元マスコミ各社も表向きのかたちにとらわれず、正確な報道をすべきだ。
【青木 義彦】
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