2024年07月29日( 月 )

ヨドバシカメラ、2代目藤沢和則社長による「打倒アマゾン」宣言(中)

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 創業者にとって、最大の課題は事業承継だが、失敗例も少なくないため、悩みは尽きない。現在、注目を集めているのが、(株)ヨドバシカメラの2代目社長・藤沢和則氏。ネット通販の巨人・アマゾン打倒を宣言した。和則社長は、創業者である父親・藤沢昭和氏を超えることができるか。

家電量販店では断トツの通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」

ヨドバシカメラ イメージ 和則氏はヨドバシカメラに入社後、IT(情報技術)や物流部門の責任者として業務改革を担いネット通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」の拡大を進めてきた。

 家電量販店はネット進出に消極的だった。量販店は長らく、大量に仕入れ、大量に販売することで価格を安くしてきた。大量仕入れ大量販売なので、すべての商品をそろえるのではなく、売れ筋の商品を仕入れ、それを店舗で売る。

 だから、すべての商品をそろえるネットとはビジネスモデルが真逆だ。そのため、どの量販店もネット通販に本格的に手を出さなかった。

 そのネット通販にいち早く進出したのが、ヨドバシカメラで98年に参入した。楽天市場のサービス開始は97年、アマゾン・ジャパンがサービスを始めたのが2000年なので、国内ECの黎明期にあたる。

 カタログ通販の全盛時代。アパレルやスポーツ用品などを扱うカタログ通販は無数にあった。「ネットを使って通販を始めれば、これの代替になるのではと思った」と、和則氏は語っている。

 ヨドバシカメラのECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」は、他社を圧倒した。ネット通販の売上高は、すでに17年期に1,000億円を突破。他の家電量販店各社は足元にもおよばない。

 さらに、19年4月、アウトドア専門小売の(株)石井スポーツを買収した。それまでM&Aに手を出さなかったヨドバシが、買収に乗り出したのは、ヨドバシ・ドット・コムでアウトドア用品の取り扱いを強化するため。

 18年末には酒類の販売を始めるなど、家電以外の商品を増やし、M&Aも積極的に手がける考えだ。自社の社員が最短2時間30分以内に配達する「ヨドバシエクストリーム」をはじめ、競争力の高いサービスを提供している。

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 家電量販店業界はネットに“引っかき回されて”きた。だからこそ店舗優先を貫いてきたヨドバシカメラは他社に先駆けてリアル(実店舗)とネット(インターネット通販)との融合に転じた。

 もはやライバルは同業者ではなく、「アマゾン」なのである。

駅前カメラ系はビックカメラとヨドバシカメラが双璧

 ヨドバシカメラの業績はどんなものか。非上場会社なので、財務諸表は公開しておらず、ホームページに売上高と経常利益を開示しているのみ。それを基に分析してみよう。

ヨドバシカメラの業績推移

 家電量販店は、郊外の幹線道路沿いに展開する企業と、主要駅前にそれ以上の大型店を構え、その発祥から「駅前カメラ系」と呼ばれる企業に大別される。

 郊外型量販店は、売上高で業界トップの(株)ヤマダホールディングス(群馬県高崎市)、3位の(株)ケーズホールディングス(茨城県水戸市)、4位のエディオン(大阪市北区)が代表的。駅前カメラ系は、2位の(株)ビックカメラ(東京都豊島区)と5位のヨドバシカメラが双璧だ。

(つづく)

【森村 和男】

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