小売こぼれ話(13)接客サービスの変質(前)
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人的サービス削減にともなう「売場崩壊」
コロナと消費者の世代交代によるサービスの中身の変化が顕著だ。サービスの変化の始まりはバブル崩壊による消費低迷だ。
それまで、団塊の世代を中心に若い安価な労働力をふんだんに調達できた小売業が高度成長にともなう急激な賃金上昇と景気の停滞と急激な店舗増加による供給過剰に見舞われた。
坪当たり売上の低下発生で収支が急激に悪化した各社は、申し合わせたように人員整理とパート化による人件費抑制を始めた。その結果が従業員1人当たりの売り場面積の増大だ。それまで客の求めに応じて十分なアドバイスができていた売り場から肝心の従業員が消えた。人的サービスが削減されると売り場が荒れ、従業員が聞く客の要望も調達部門に届かない。ますます商品が売れなくなり、さらに人員削減が進む。アメリカ最大のDSだったKマートも同じような状態から最後はその姿を消した。それに遅れること10年で日本のGMSにも同じようなことが起こったことになる。当時、我が国の著名なコンサルタントAの主張もKマートに習って、「従業員1人当たりの受け持ち売り場面積をもっと増やせ」だった。結果は売り場の崩壊だ。時に効率の実践は結果に効果をもたらさない。
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地域中間流通(卸)と今後の戦略(前)そのうちにどちらかというと従業員の声掛けを好まないミレニアル世代といわれる団塊ジュニア以降の世代が消費の主役になると、小売業の人的サービスはさらに低下する。商品知識や販売技術、顧客重視など研修を通じて従業員に共有された接客技術は育成と共有の鎖が切れ、サービスは変質、低下し、多くのサービス業でそれが普通になった。
たとえば携帯ショップがその好例だ。代理店に行くとまず、電話番号を聞かれる。さらに順番待ちの番号札をとるように促され、結構な時間待たされる。しかもそれらを担当する従業員の腕には「研修中」の腕章がある。「おいおい、研修生に売り場接客をさせるか?」と思うのは旧人類であるらしい。順番がきてカウンターにつくと、こちらの要望や質問に的確に応えられない。時には対応者が入れ替わり、一から説明をし直さなければならない。業務知識はあるのだろうがそれをお客にうまく説明できないようだ。今は事前にネットで諸事情を調べておいて店を訪れるのが常識らしい。ただ、購入が決まると後は実にスムーズに進行する。
(つづく)
【神戸 彲】
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