2024年12月22日( 日 )

ライバル同士の共同戦線!「#外食はチカラになる」に込めた願い〜吉野家HD河村泰貴社長

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吉野家HD 代表取締役 河村 泰貴 氏
吉野家HD 代表取締役 河村 泰貴 氏

    第4回目の緊急事態宣言が9月30日に解除され、新規感染者数や重傷者数などが収束に向かい、少しずつ活気を取り戻しつつある日本。そのようなか10月14日に多くの外食企業やポイントサービス企業が参加した大型プロジェクト「#外食はチカラになる」の発足にともない、記者会見が開催された。

 同プロジェクトは、コロナ禍によって多くの企業・店舗が深刻な不況に入った飲食業界が、企業の垣根を越えて発足させた。サポートサービスとして、大手飲食店ポータルサイトである「ぐるなび」や電子マネー決済を取り扱うPayPay、au PAYなどが多数参加し、落ち込んだ飲食業界の活気を取り戻すことを目的としている。

 また、プロジェクトにはどの飲食店・企業も公式HP(#外食はチカラになる 外食推進キャンペーンサイト)から参加することができる。発足時は飲食ブランド総数が89、全国約9,400店舗でスタート。ぐるなび掲載店舗は、3,267店舗(10月14日時点)から5,500店舗以上(11月末時点)となっている。

 今回、同プロジェクトを発起した吉野家ホールディングス(以下、吉野家HD)の代表取締役社長・河村泰貴氏に話を聞いた。

#外食がチカラになる ―今回のプロジェクト発足のきっかけを教えてください。

 河村泰貴氏(以下、河村氏)  きっかけは6月ごろにワクチンの職域接種が始まり、想定以上のスピードでワクチン接種が進んだことです。接種券がご本人に届いていなくても接種できる状況にした当時の政府の英断に大変助けられた部分もあります。そうなれば、高齢者だけでなく、職域接種が始まることで働く世代の方々の人流が増えると考えました。

 秋頃には感染者数も落ち着き、昨年のGo toキャンペーンのような追い風がきたときに、しっかりと帆を張って受け止められるような準備をしようと議論をしていました。当初、社内では“ワクチン接種済み割引”などを検討していました。しかし、そうではない、街に人が戻り、この活気のない状況を変えなければならないと考えました。

 限られたお客さまを同業者様と取り合うようなことをするのではなく、「外食」への風潮を変え、背中を押すことをしなければならないと考えました。

 そのためには私たち吉野HDだけでは意味がありません。私たちには幸いテイクアウトできる商品があり、大きく業績を落とすことなく皆さまのおかげで今も営業を継続できています。しかし、商店街やショッピングモールなどで展開をしている多くの飲食店は違います。大変なのは、他社さんも一緒だと考え、プロジェクトを発起しました。

 ―飲食業界全体のことを考慮したものだったのですね。今回、同社のライバルともいえる、 (株)松屋フーズホールディングスの参加が注目されました。

 河村氏 飲食業界の皆さまに声かけをしたのは7月でしたが、レスポンスは非常に早く、ほぼ即答に近かったです。松屋さまも同様でした。他にもロイヤルホールディングス(株)さま、(株)ワンダーテーブルさまなど多くの企業さまが即断・即決のようなかたちで応じていただきました。それに大手企業さまだけではなく、個人で経営されている店舗さまの多くも参加いただいております。

 やはり、同じように自社のことだけを考えていただけでは限界があると感じていたのではないでしょうか。当初は共通の割引なども考えていましたが、それではプロジェクト参加へのハードルが上がってしまい、スピード感がなくなってしまうので、できるだけ容易に参加できるようにしました。

#外食はチカラになる 参加企業

 ―今では多くの企業が参加していますが、これほど参加企業が増えたのにはほかにどのような要因がありますか。

 河村氏 私たちだけでなく、企業さま同士で声かけをしていただいたこともあります。また、外食業界に関わるプラットフォーマーの皆さま、「ぐるなび」さまや「楽天」さま、PayPayさまも今回のプロジェクトの趣旨に共感していただき、ご協賛いただけたことも大きいです。

 今回のプロジェクトのオペレーションは、当社広報だけではなく各企業の広報担当者様と連携をとりながら行っていることもあります。このように企業や業界などの垣根を越えて、変えて行こうと思っているところが大きいと思います。

 今後はもっと多くの人にプロジェクトを知っていただいたり、利用していただきたいと思いますので、吉野HDとしても飲食業界全体が盛り上がるように尽力していきます。

 同プロジェクトは12月末までを予定している。コロナ禍に突入したことで、「外食」は敬遠されてきたが、ワクチン接種率の向上と飲食業界全体の感染予防対策の徹底により状況は変わりつつある。

 鹿児島にある個人店舗の経営者は、「業績が下がったうえに、アルコール消毒や簡易体温計などのコストも増え厳しい状況だが、それでも感染して欲しくないという思いと、また店内を明るくしてほしい思いがある」と胸の内を明かした。

 「#外食はチカラになる」――同プロジェクトは飲食業界だけではない、街に活気を取り戻し、1日を楽しいものに変え、辛いことがあってもまた明日を生きる活力をくれる。私たちにも大きなチカラをくれるものだ。

【麓 由哉】

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