2024年12月22日( 日 )

「恒大危機」は世界経済を揺さぶるのか(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

一部デフォルトに

 経営危機に直面している中国不動産開発大手の中国恒大集団が「一部債務不履行(デフォルト)」に陥ったと、格付け大手フィッチ・レーティングスが9日に認定した。恒大集団の負債規模は約3,000億ドルと世界最大規模。「第2のリーマン・ショック」と噂されていた恒大危機の今後の行方に、世界の注目が集まっている。

 一部デフォルトが認定されると、他の外貨建て社債も連鎖的にデフォルトに陥る可能性が大きくなる。なお、恒大集団のドル建て社債は192億3600万ドルに達する。

恒大集団とは

深圳市 イメージ    恒大集団は、1996年に中国の広東省で設立された会社である。「いつも」という意味の「恒」と、「大きい」という意味の「大」が社名となり、英文ではEvergrande(エバグランデ)と社名を表記する。同社は創業者の許家印氏が社員10数名で立ち上げた零細企業だったが、創立から25年が経ち、現在の従業員数は20万人以上、取引先の社員数を入れると380万名もの巨大企業へと成長している。

 恒大集団は不動産業以外にも食品販売、観光業、インターネット関連サービス、保険、ヘルスケア、電気自動車の開発など、不動産を中心にさまざまな分野に進出している。資産規模は、中国の不動産開発大手企業のなかで1位にランクされ、世界最大の英文ビジネス誌『フォーチュン』が選ぶ「グローバル企業500」では122位だった。

 中国の不動産市場は、2013~2018年まで「不動産ブーム」に沸いていた。恒大集団はその勢いに乗って住宅開発を進めることで、不動産価格上昇の恩恵に預かりながら、収益を増大させてきた。その結果、年平均38.8%の売上高成長率を記録し、中国第2位の不動産開発企業へと成長した。

 恒大集団は先行投資のために、銀行や投資家から多額の資金を集め、土地を買い、住宅を建設して事業を拡大させてきた。現在、中国の200以上の都市で、約800件の開発プロジェクトを進めている。ところが、銀行などからの借り入れで事業を進めているうちに、気付けばその負債総額は約2兆人民元(約33.4兆円)にまで脹らんでいた。

恒大集団はなぜ危機に陥った

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 創立当時から不動産開発を主業とする恒大集団が、なぜ驚異的な急成長を遂げることができたのか。背景には1990年代半ばから始まった中国の不動産市場の急成長と、それにともなう不動産バブルがある。恒大集団はこうした時代の趨勢のなか、中国の経済成長の牽引役をはたしながら、急成長を成し遂げた。

 恒大集団は金融機関から借金をして事業拡大を図り、さらに借金をして以前の負債を返済しながら事業の拡大を目指す「負債経営」路線を追求してきた。ところが、中国の不動産市場が冷え込んだ上に、中国政府の規制が加わり、負債経営による事業拡大モデルに赤信号が灯ったのだ。中国政府は不動産開発会社の負債規模を抑制するため、規制を導入した、その影響で恒大集団は資金繰りが苦しくなった。

 規制の主な内容は以下の通りである。(1)総資産に対する負債の比率が70%以下、(2)自己資本に対する負債比率が100%以下、(3)短期負債を上回る現金を保有していること、の3つで、上記3つの条件を満たさない開発業者に対しては融資の制限を行うというものである。  恒大集団は、これらすべての基準に引っかかっていたため、銀行からの融資に制限がかかり、資金繰りに問題が発生した。こうした規制ばかりか、不動産購入希望者に対する銀行の融資にも規制があり、不動産需要が減少した。また、新型コロナウイルス感染拡大も、不動産景気の冷え込みに追い打ちをかけた。その結果、莫大な負債を抱えた恒大集団の資金繰りは次第に苦しくなり、債務の一部不履行に陥るようになったのである。

 中国の不動産部門は中国国内総生産(GDP)の29%を占めており、中国経済を牽引してきた。それだけに影響は計り知れないと懸念されている。不動産市場の縮小は鉄鋼、セメント、エンジニアリングのような直接関連がある産業だけでなく、家具、インテリア、家電製品などにも影響をおよぼすことになる。

(つづく)

(後)

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