ストラテジーブレティン(297号)2022年の市場展望~NEXT GAFAMを担う日本企業のビジネスモデルに注目せよ~(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2022年1月1日付の記事を紹介。次のフロンティアを模索するGAFAM
インターネットが一般に普及して20数年が経過した。この間、米国にはグーグルやアップル、フェイスブック(メタ)、アマゾンといった超巨大ハイテク企業が誕生し、米国の株式市場は我が世の春を謳歌してきた。しかし、その勢もいよいよ鈍化する時期に入りつつあるのではないか。
収穫逓増の時期を過ぎ、収穫逓減期に入っていくものと思われる。たとえば音楽や動画ストリーミング(自動配信)のジャンルでは多くの企業が参入して価格競争が起こり、収益性が悪化している。GAFAMはインターネットとサイバーの世界で多くの利便性を開拓して圧倒的ユーザーを獲得し、その独占的強みを活用してさまざまな外部のコンテンツメーカーを支配してきた。しかしスマホの新モデルに追加される新機能に対する驚きは小さくなってきた。機能の差がなくなったスマホメーカーが競争して価格が下がっていく時代に入り、プラットフォーマーの役割はさまざまなコンテンツを右から左に流すだけの単なる土管になっていくものと思われる。今後付加価値を生み出すのは、土管ではなく、その土管を通して提供されるコンテンツになっていくのではないか。またGAFAMなどの巨大なプラットフォーマーは、独占性を利用してネットアプリプロバイダーやコンテンツメーカーを支配し買収しコングロマリット化しているが、いずれ独占禁止法違反に問われるかもしれない。
フェイスブックが社名をメタに変更し、メタバースと呼ばれる仮想空間の開発を強化する方針を打ち出した。現在のプラットフォームビジネスが収益的に厳しくなる恐れが強まってきたなかで、新しい収益源を、さらなるバーチャルの世界に求めたのである。しかし、メタバースのような仮想空間はより臨場感を高めるだろうが、これまで程の熱狂を生み出すだろうか。メタバースには膨大なデータ処理のためのコストが必要なるが、コストパフォーマンスは低下していくのではないだろうか。
サイバーの世界のもう1つの新しいフロンティアは仮想通貨などブロックチェーンの世界であるが、それはデータの分散管理であり、プラットフォーマーが支配しにくい領域である。
次のフロンティア、I. サイバーとフィジカルの統合(cyber physical interface)
むしろ、これから注目されるフロンティアはサイバーの世界の深掘りではなく、現実社会における課題解決に向けて、ハイテクをどう活かしていくか、であろう。今進行するIoTはモノがネットワークでつながるということであり、まさにサイバーと現実との融合そのものである。「SoftBank World2021」でソフトバンクグループ会長兼社長・孫正義氏が「スマボの時代がやってくる」というテーマの基調講演を行った。AIで自ら学習し、柔軟に、臨機応変に動くロボットのことを「スマボ」、つまりスマートロボットと言っているのだが、このスマボを1億台、日本に導入すれば、労働人口にして10億人相当の国に生まれ変わる。少子超高齢社会で労働人口が減少している日本の社会課題解決に直結する、と主張する。
そして、このスマボに必要な要素技術は、スマボの目となる各種センサーと、スムーズな動作を可能にするアクチュエーターである。これらの要素技術において日本は世界最強のプレイヤーを擁している。センサーの覇者ともいうべきキーエンス(時価総額ランキング3位)、世界一の高性能モーターを製造している日本電産(同10位)、高性能部品の村田製作所(同19位)、半導体製造装置の東京エレクトロン(同6位)、半導体ウェファーの信越化学(同8位)、光学ガラスのニッチトップ企業HOYA(同17位)などは、サイバーとフィジカルを組み合わせた「サイバー・フィジカル・インターフェイス」時代の世界トップクラスのプレイヤーである。
次のフロンティア、II. コンテンツ
GAFAMが提供する土管が安くなっていくと、それによって運ばれるコンテンツが価値創造の主体になる。ソニー(同2位)はGAFAMと一線を画しコンテンツにフォーカスした世界最大の企業ではないか。「感動を届ける」ことを企業理念としてうたい、映画・映像、音楽、ゲームなどで世界最強の基盤を整えている。任天堂(同15位)もゲームコンテンツに特化した世界的プレイヤーである。
世界最強の資本家、孫正義氏
そのほかでは、日本が擁する情報革命時代の世界最強の資本家孫正義氏のソフトバンクグループ(同7位)、アパレルの革命児柳井氏率いるファーストリテイリング(同16位)、フェイスブックが登場するよりもはるか前から出会いを仲立ちするマッチングビジネスを極め続けてきたリクルート(同4位)、環境では「空気で答えを出す会社」を標榜するダイキン工業(同12位)など、NEXT GAFAMの資格をもつビジネスモデルを確立したグローバルプレイヤーが揃っている。高い成長が期待できる各分野で世界トップシェアを持つ日本企業は、すでに勢ぞろいしているのである。これらが正当に評価され悲観ムードが一層されることで、異常に割安の日本の株式市場は大きく変化していくものと期待される。
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