2024年11月22日( 金 )

【ただの風邪?】記者も感染~オミクロン株で2度の陰性判定から緊急入院(後)

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 記者は1月16日、新型コロナウイルスに感染したことによる発熱で緊急入院し、約1週間の病院隔離を経て自宅療養に移った。感染したのは、いわゆる「オミクロン株」と呼ばれる変異株で、感染力が強い一方で症状自体は軽いとされる。「オミクロンはたんなる風邪」といったことを公言する医療専門家もおり、このことがオミクロン株への警戒心を弱めているようにもみえるが、本当に“軽い病気”なのかどうか、発熱のピークを越した現在も判断はつかないままだ。今でも痛む喉と止まらない咳症状は後遺症のようなもので、医師によるとしばらく続くという。

救急医療の現場が混乱?

 それから7日間をその病院内の居室に隔離されてすごした。3日目くらいから熱は下がり始めたが、何か特別な薬が処方されたわけでも、特殊な治療法を施されたわけでもなかった。ワクチンを2回接種していることも関係しているのか、ひたすら毎日の体調を記録し、熱が収まるのを待つ、ただそれだけである。解熱剤が処方されはしたものの、「つらいときに飲んでください」程度の扱いで、そういう意味ではオミクロン株はたしかに「単なる風邪」のように思えた。

患者は基本的に病室から出ることはできない

  少し声が出始めたころに担当医師と話したが、たとえば何かの数値が低くなったら完全に治りましたと判断するわけではなく、発症から10日が過ぎたら他人に伝染(うつ)すことはないという判断で対応しているという。あまりにもおおざっぱな診断基準で驚いた。陽性反応のまま退院する人も多いといい、それでも他人に伝染すほどのウイルス量ではないので安心なのだという。「もうオミクロンにかかることはないですが、早いうちに3回目のワクチンを打ってください」とアドバイスも。

 気になったのは病院のスタッフが誰も、記者が入院に至った経緯を知らなかったことだ。福岡市のガイドラインでは陽性が確認されるとホテル療養か自宅療養になるのが基本的流れなので、その例外となった私は何度か「~さんはなぜ入院になったんですか?」と、看護師や医師から尋ねられた。カルテなどで申し送りされているわけでもなさそうで、おそらく救急搬送の現場がかなり混乱しているのだろうと想像した。高熱で歩くのも困難だったことからセンターの医師が入院が必要と判断して、市内で最も設備が充実している大学病院に運ばれたのだろう。ありがたいことだが、記者以外の入院患者は基礎疾患をもったリスクの高い方が多く、しかも日に日に、目に見えて病床が埋まっていくのがわかった。私みたいな軽症で入院し続けるわけにはいかないという気にもなり、医師に申し出て自宅療養に切り替えてもらうことにした。

隔離病棟用の風呂。広い浴場を一人で使う

 帰宅にはタクシーを使うつもりだったが、用意されたのは来たときと同様の「(ドライバーに)絶対に話しかけてはならない」縛りのある特別移送車だった。もう他人に伝染すことはないというが、激しい咳が止まらない。バスや電車内でいやな顔をされるのは確実だ。

 本日、自宅療養から解放される。今はまだ、入院の経験から何かそれらしい「まとめ」のような結論を導き出す気にはならない。症状の出方はおそらく人それぞれで、入院まで至る人の背景もバラバラなような気がした。同じ隔離病棟には10代とおぼしき少年少女もいれば、インスリン注射が欠かせない高齢者もおり、「入院に至るケース」は千差万別に思えた。

自宅療養に移る際に乗せられた、特別移送車。
「ドライバーには絶対に話しかけないように」
と念押しされた

 唯一、間違いないとみているのは、医療現場(とくに救急医療の現場)がかなり混乱しているということだ。自宅療養に移ってからは保健所からの電話で毎日の病状を確認されたが、前日伝えたことが翌日の担当者に伝わっていないことも多々あり、私が入院に至った経緯の未伝達も含めて、本来ならできて当たり前だったはずの「報告・連絡」体制が少しずつ崩れているのを感じた。こうしたヒヤリ・ハット的ミスの積み重ねはまだ重大なミスにまで結びついていないが、もし混乱が長引けば、「本来は入院すべき人が入院できない」といった事案が起こる可能性もある。オミクロンよりも怖いのは、むしろそうした「できていたことができなくなる」ことの弊害なのだ。

(了)
【データ・マックス編集部/K.O.】

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