2024年11月24日( 日 )

パーティー問題でイギリスを揺るがすジョンソン首相の命運(後)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

「真面目にウソをつくので憎めない」

イギリス議会 イメージ    ペッツイーだけでは満足できなかったようで、アメリカの女性ハイテク起業家のジェニファー・アーキュリーもジョンソン氏がロンドン市長時代に4年間も愛人関係にあったことを暴露しています。彼女によれば、「私たち2人はシェークスピアの作品を読みあった後に交わるのがいつものパターンでした」とまで、詳細な性的関係を告白したため、大きな話題となりました。

 ジェニファー曰く「最近、彼は3度目の結婚をしたようですが、ボリスの本性は変わっていないと思います。彼は権力の座を維持するためなら、仮面を被ることくらいは平気ですから」。アメリカ人であるジェニファーに言わせれば、「ボリスのせいで、イギリスは覆面国家になったようね」。

 彼女がいうように、イギリス国民はジョンソン首相の仮面に騙されて、彼の言動には問題を感じていないのかもしれません。見方を変えれば、平気でウソをつくジョンソン氏ですが、「真面目にウソをついているので憎めない」という側面があるようです。これは「パワー・ブローカー」として背後で操るキャリー夫人にとっては好都合でしょう。

 そもそも、イギリスでは政治や政治家の発言に関心を寄せる国民は少数派です。政治家が都合の良いウソをつくのは当たり前で、どうということはない、と受け止められているわけです。次々に金銭や不倫にまつわるスキャンダルが暴露されるため、国民も「またか」とばかり、気にも留めないものと思われます。

 なかでもジョンソン氏の場合は、暴言や失言のオンパレードで、あまりに頻繁に繰り返されているために、皆が気にしないような状況が生まれているようです。アフリカについても「黒人のたまり場」などと平気で差別的な発言を繰り返しています。コロナ騒動の真っ最中であっても「感染者の死体が山積みになっても、俺の責任じゃないだろう」と居直っていました。ある意味では、ジョンソン首相にとっては「女性関係」と「暴言」そのものが、魔除けの効果を発揮しているようです。

 現夫人のキャリーの場合だけではなく、2番目の奥さんマリナとは最初の奥さんのアレグラと結婚していたときに関係をもち、キャリーと同じように、前妻と離婚する前に子どもを産ませていました。結婚に至らなかったものの、付き合って子どもを産ませた女性は何人もいるようでです。

魅力に欠ける日本の政治家

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 政治家に変身する以前、ジョンソン氏は新聞やテレビの世界で活動していました。本も出版しています。なかでも世間が衝撃を受けた本は、その題名が『72 Virgins』というもの。72人の処女との性体験を綴った作品で、自らの体験談の体裁を取っています。要は、世間をあっと言わせることで、危険も顧みないという性格を見事に表しているわけです。

 ジャーナリストであろうと、政治家であろうと、はたまた一国の首相であろうとも、「1つの失敗が命取りになる」といわれるなか、「たくさんの失敗を重ねていれば、それが独自のスタイルとして受け入れられるようになる」というのが、ジョンソン氏の哲学のようです。そもそも、ジョンソン氏は幼いころから、父親の不義姦通を間近に見ながら育ったことを自慢しており、通常の倫理観とか一夫一婦制などには囚われるようなことはありません。

 日本では「英雄色を好む」と言われてきましたが、最近の政治指導者の間では、あまり浮いた話は聞かなくなりました。「ピンクザウルス総理」と揶揄され、女性問題で辞任した宇野宗佑元首相のような政治家は見かけません。要は、真面目な政治家が多くなったのかも知れませんが、欧米の政治リーダーと比べると、今1つ話題性や魅力に欠けるとの指摘もあります。

 いずれにせよ、コロナ禍で経済が落ち込むなか、メディアや野党からはジョンソン首相の責任を問う声も聞かれますが、ジョンソン首相自身は「過労気味のスタッフを激励して何が悪い」と開き直っています。どうやら、ジョンソン首相はまだまだ安泰のようです。

(了)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。

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