2024年11月24日( 日 )

【記者が体験】コロナ感染後に獲得した「抗体100%」の意味~オミクロン感染その後

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 免疫を獲得するってどういうこと?――新型コロナウイルスに感染した2人の記者が、体を張って抗体検査に挑んだ。

新型コロナで在宅死、コロナ対応の現場が混乱?

 福岡市は1月31日、新型コロナウイルスに感染して亡くなった市内の60代男性について、感染が確認されて以降9日間にわたって連絡がとれないまま、自宅で亡くなっていたことを明らかにした。

亡くなった男性は1月18日に新型コロナウイルスに感染したことが確認され、20日からホテル療養する予定だったが、19日以降、保健所からの電話やショートメールによる連絡に応答しなくなっていたという。その後、男性の知人が警察に連絡し、28日に自宅で亡くなっているのが見つかった。

 記者は1月中旬に新型コロナウイルス(オミクロン株)に感染し、救急搬送と入院を体験した。その体験を「闘病記」というかたちで掲載したが(参考記事)、その記事中で指摘したのが、福岡市の救急体制や保健所の現場が混乱しているのではないか、ということだった。

 毎日の保健所からの電話は極めて形式的で簡易なものだったが、その形式的なことすら満足にできていない状況に、いつか重大なミスが起こるのではないかと危機感を抱いた。小さな事務的ミス(ヒヤリ・ハット)が積み重なり、報告や連絡が後手にまわったために在宅死につながった可能性はないのか。1日の新規感染者が5,000人を超えたいま、詳細な検証が必要な事態を迎えていることは間違いない。

抗体検査を体験

指から血液を採取して薬剤と混ぜて抗体反応を測定する。無痛針を使用するので痛みはない
指から血液を採取して薬剤と混ぜて
抗体反応を測定する。
無痛針を使用するので痛みはない

  コロナ禍対策を行政や医療現場に丸投げするのではなく、民間でできることはないのか。コロナ対策はビジネスチャンスの側面もあるため、さまざまな企業が検査キット、対策キットなどを売り出している。そのなかで前回  体験した抗体検査がバージョンアップしたということで、今回は3人の記者が体験することになった。

 記者が体験したのは、「中和抗体検査」と呼ばれるもの。「抗体」とは、病気の原因となる細菌やウイルスが体内に侵入したときに、攻撃したり体外に排除する役割を担うタンパク質のこと。ある医薬品会社のHPには「(抗体とは)液性免疫の中心となる存在」という表現もある。

 特定の病気やウイルスに対する抗体が体内に十分に蓄えられていれば、体は守られていることになる。抗体の有無や量を調べる検査キットは国内外のメーカーから複数販売されており、厚生労働省も抗体検査キットの機能評価も含めた詳細なまとめを発表している(参考)。

オミクロン・クラブ結成?

持ち運びにも便利な、ハンディー検査キット
持ち運びにも便利な、ハンディー検査キット

   今回、抗体検査を体験したのは、新型コロナウイルスに感染した50代男性記者と20代女性記者の2人に加え、比較対象となる50代の男性記者。2記者は同時期に新型コロナウイルスに感染していたが女性記者の方は症状が軽く、男性記者は症状が重かったために救急搬送されていた。あえて共通項を探せば、2人の記者ともに「酒飲み」であること、さらに複数回のPCR検査を受けて初回の検査で陰性反応が出ていたことも共通していた。

 ウイルスに感染すればそのウイルスに対する抗体を獲得することになる――という薄い理解はあったものの、それがどの程度の反応になるのか。記者たちは「半信半疑」の面持ちで検査に臨んだところ……結果ははたせるかな、コロナに感染した2記者ともに「抗体100%」と表示された。2人の抗体は機器が測定できる領域をオーバーしており、いわゆる“針が振り切れる”かたちで新型コロナウイルスに対する抗体を得ていることがわかったのだ。一方、比較対象として、昨年9月に2回目のワクチン接種を終えたコロナ未感染の記者(50代男性)の抗体の数値は「31.5%」と表示された。

 ここまではっきりと抗体の有無がわかるのか。免疫を獲得する、という言葉の意味を体感した2記者は大いに気を良くした。検査担当者の「2人とも、(オミクロン株に対しては)いまは無敵状態です」という言葉にさらに調子に乗り、検査後には、「感染する可能性も他者にうつす可能性も極めて低いのであれば、中洲に繰り出しても良いのでは?」「抗体100%の人だけが加入できる“オミクロン・クラブ”を結成し、かわいいバッジやステッカーを作ってはどうか」「バッジを付けていれば飲食店への出入りが自由、あるいは料金が安くなるとか」などと、妄言にも花が咲く。

“無敵抗体”の証?抗体が「100%」と表示された検査結果
“無敵抗体”の証?抗体が「100%」と表示された検査結果

 こうした“妄想”はさておき、たとえば福岡では連日約5,000人の新規感染者が確認され、累計感染者数も13万4,000人近くまで膨らんでいる。おそらくは、こうした「数字」として陽性が確認された人以外にも、感染して無症状のままでコロナを抑え込み、結果的に強力な抗体を得た人も多数いるはずだ。

 では、そうした「無敵抗体」の持ち主であっても一律に行動規制をかけることが妥当なのかどうか。たとえばワクチンパスポートのように第三者にわかるような仕組みをつくったうえで、より緩(ゆる)い行動規制をかけるなどの個別対応はできないのか。抗体は日を追うごとに落ちていくので定期的に抗体量をチェックする必要があるが、そこには民間が介入して新規ビジネスが生まれる余地もある。

 コロナ禍が2年を過ぎたいま、広く一律に網をかけるような規制よりも、もっと細かく個別具体的な行動規制で社会や経済を回すことも必要だという声は日に日に高まっている。お酒は人生に必要ないかもしれないが、人生を豊かに彩ってくれることは間違いない(はず)。仕事後に家に直帰する生活にストレスを募らせている記者だけでなく、親しい人の顔が見れない毎日、触れ合いのない日々に倦んでいるオトナたちも多いはずだ。

 検査後、女性記者はスマホケースに検査結果を挟み、うれしそうに会社を出て夕暮れの街へ消えていった。どこに行ったのかは知らない。

【データ・マックス編集部】

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