2024年11月25日( 月 )

100歳目前でも大活躍中の世界のリーダーたち~元気の秘訣は?(後)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

著書内で中国人の箸文化批判

 熱血漢のマハティール氏は、昨年12月12日、新著『Capturing Hope: The Struggle Continues for a New Malaysia』(希望を失うな:新生マレーシアのための戦いは続く)を世に問うたばかりでした。この304ページにおよぶ大書を通じて、マハティール氏は2018年に誕生した連立政権では内部対立に足を引っ張られ、思うような改革を実現できなかったことへの反省と悔しさを率直に語っています。

 それと同時に同氏は「政治家が国民から選挙で選ばれていない」と訴え、「お金の力で選挙民を買収することが日常茶飯事になっている」とも言います。1981年から2003年まで、彼が最初に首相を務めた時期には政治の腐敗や汚職を一掃することができたのですが、その後は「悲惨な状況が蔓延してしまった」と、腐敗政治家の実名を挙げて嘆いているのです。

 なお、この本のなかでは一部の人々が「まさか!」と驚いた意外な発言が記載されていました。それは中国人の箸文化に関する批判的な見方です。マレーシアは多民族国家で、中国系も多数暮らしています。そんな多文化社会のマレーシアですが、マハティール氏曰く「マレーシア人は食事の際には指を使って食べます。ところが、中国人は箸を使っています。マレーシアでマレーシア人として暮らすなら、マレーシアの伝統文化に従って指で食べるのが、民族融和の大原則です」。意外な見方で波紋を巻き起こしました。

 この中国人の箸文化への批判にはマレーシア系中国人をはじめ、各方面から反論が殺到しています。ナジブ元首相に至っては自らのFacebookにマハティール氏が中華料理の「ユーシェン」(野菜の上に生の魚を載せたサラダ)を箸で食べている写真をアップし、「二枚舌」と批判するありさまです。間もなく退院予定のマハティール氏ですが、水害の被災地を訪れる前に、この「箸騒動」にどう決着をつけるのか、大いに興味をそそられます。

ヒラリー・クリントンのリベンジ作戦

シニア 活躍 イメージ    一方、アメリカでは新年早々、トランプ前大統領が「ホワイトハウス奪還」の狼煙を上げています。1月15日、アリゾナ州で行われた集会で「2024年にはホワイトハウスを取り戻す」と大演説をぶちました。その前哨戦として、今秋予定の中間選挙で「上院、下院共に過半数を押さえよう!」とも檄を飛ばしたわけで、会場に集まったトランプ・ファンは大いに盛り上がったものです。

 しかも、野外集会場を埋め尽くした大観衆は誰1人マスクなど付けていません。トランプ氏曰く「老いぼれジョーはワクチンやマスクに頼っているが、俺たちには必要ない。なぜって、俺たちには強い免疫力が備わっているからだ」。何しろ、共和党員の54%の支持を固めているトランプ氏は強気一辺倒です。

 他方、追われる立場の民主党ですが、バイデン大統領の支持率は景気の低迷もあり、急落しており、中間選挙では厳しい結果が出ることが確実視されています。そこで、急浮上してきたのが、「ヒラリー・クリントンのリベンジ作戦」です。

 2016年の大統領選挙では「勝利間違いなし」との事前予測にもかかわらず、土壇場でトランプ候補に足をすくわれたヒラリーでした。その怨念を晴らそうと、彼女は秘策を練っているようです。

 現在74歳のヒラリーですが、バイデンやトランプと比べれば、多少なりとも若い部類に入るため、「アメリカ初の女性大統領の座」を手に入れようと野心を燃やしています。分裂気味のアメリカを立て直すには、イデオロギーの違いや党派の利害を超えて、「何が真実かを国民に訴えるのがベスト」と自信満々に語っているほどです。

 最近の「ウォールストリート・ジャーナル」紙も、そんなヒラリーを後押しする論説を載せました。さらに、かつてクリントン大統領を支えた民主党のスタッフがヒラリーの下に再結集しつつあるようです。

 実は、夫のビル・クリントンも政治の表舞台にカムバックしようと、密かにヒラリーの支援組織を束ねる動きを見せています。どうやら、2024年は‟よれよれ“のバイデン氏に見切りを付け、民主党や女性票を束ねるヒラリーと、「100歳までまだまだ頑張る」と威勢のいいトランプとの戦いになりそうです。日本でも「人生100年時代」とよく言われますが、現役で活躍中の「百寿者」はまだまだ限られています。さらなる奮起が望まれるところです。

(了)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。

(中)

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