西武HDの「コロナ敗戦」、所有と運営を分離(2)
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西武ホールディングスは鉄道大手のなかで、新型コロナウイルスの影響を最も受けた私鉄の一つで、2020年、21年の2年間、コロナ禍で塗炭の苦しみを味わった。日本最大級のホテルチェーン、プリンスホテルの宿泊需要が“蒸発”してしまったからだ。同社は「コロナ敗戦」による事業の再構築を図るべく、プリンスホテルやレジャー施設を売却し、「所有」と「運営」を分離する。
近鉄グループもホテル8カ所を売却
日本企業は自ら使う資産を自ら保有することが多かった。西武HDは鉄道だけでなく、ホテルやリゾート施設など有形固定資産が21年3月末で1兆4,450億円と売上高(3,370億円)を大きく上回るが、新型コロナウイルスの影響もあり資産を効率的につなげられず、効率が悪化していた。
そこで、経営の立て直しのために、プリンスホテルやゴルフ場、スキー場など計31施設の不動産を売却する。資産売却戦略(アセットライト)である。資産の保有を抑えて、財務を軽くすることが狙いだ。
アセットライトを掲げる企業は増えてきた。大手私鉄では、近畿日本鉄道(株)を傘下にもつ近鉄グループホールディングス(株)は21年10月、米投資ファンドのブラックストーングループに、テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン近くのホテル近鉄ユニバーサル・シティ(大阪市)、京都駅前の都ホテル京都八条(京都市)など8ホテルを売却した。約204億円の売却益は22年3月期に特別利益として計上する。子会社の(株)近鉄・都ホテルズが受託するかたちで、それぞれのホテルの運営を続ける。
「所有」と「運営」の分離、先駆者は星野リゾート
アセットライトは、「所有」と「運営」を分離することにある。
もともと日本のホテルは、所有直営方式といわれる所有と経営、運営が一体となった経営方式が採られてきた。昔ながらの旅館は、そのほとんどが家族経営であり、自分の住まいを宿にして始まったので、自分が所有する旅館を家族が経営して行うのは自然なことだった。
老舗旅館の「所有」と「運営」の分離の先駆者は、(株)星野リゾート(長野県北佐々郡軽井沢町)の星野佳路グループ代表(61)である。
100年以上の歴史を持つ長野県の星野温泉旅館を引き継いだ4代目の星野氏は、社名を星野リゾートに変更。「運営特化」の経営方針を打ち出した。土地や建物を所有せず、運営に集中するというものだ。
星野氏は1980年代後半に、米国でホテル経営学を学んでおり、当時から「日本もいずれ、所有と運営は分離する」と予測していたそうだ。それで、星野リゾートの経営は、運営だけに特化した。今日、星野氏がホテル・旅館再生人として成功したのは、所有と運営を分離したことにある。
所有と運営を分ける最大のメリットは、不動産を所有しないため債務が膨らまないこと。リスクが低いので、成長スピードが速くなることなどがあげられる。
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【大企業の「解体新書」】東芝解体の前にセゾングループの解体が(前)海外のホテル会社は所有と運営を分けることで、ホテル事業を成功させた。日本の鉄道会社は、その流れに乗り遅れていたが、コロナがもたらした経営悪化により、所有と運営を切り離すアセットライトのビジネスモデルへの転換を急ぐことになる。
西武HDは今後、ノウハウのあるホテルやレジャー施設の運営に特化したビジネスを増やし、グループで運営する施設を現在の84施設から今後10年間で250施設に増やす方針を示した。
〈西武HDの後藤高志社長は会見で「これまでより踏み込んだ事業の見直しを行った」と述べた〉
(朝日新聞2月11日付朝刊)
「所有」と「運営」の分離が、後藤氏の起死回生の再生策である。
(つづく)
【森村 和男】
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