2024年12月23日( 月 )

時価総額1兆円企業を目指す 未開拓分野に挑戦(前)

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(株)フロンティア
代表取締役社長 山田 紀之 氏

 福岡市中央区に拠点を置き、自動車部品販売のほか、OEM/ODM事業も手がける(株)フロンティア。2021年11月1日にQ-Boardに上場した同社は、永続する企業を目指しビジネスモデルの構築や組織づくりに取り組んでいる。同社代表取締役社長・山田紀之氏に話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)

自動車部品との出会い

(株)フロンティア 代表取締役社長 山田 紀之 氏
(株)フロンティア
代表取締役社長 山田 紀之 氏

    ──創業から現在の自動車部品販売事業が確立するまでの経緯を教えてください。

  山田紀之氏(以下、山田) 私はもともと山口トヨタ自動車(株)のメカニックでした。入社から4年ほどで管理職となりましたが、次第に今のまま安定した道を進むのではなく、新しいことに挑戦し、高みを目指したいと思うようになりました。入社してから5年8カ月経った2001年12月に退職し、02年1月7日に当社の原点となるCARフロンティア山田を創業してから今年で21年目になります。当初は自身の営業力を生かし、中古車販売の仲介を行っていました。日本のみでの販売でしたが、03年1月ごろから海外へ販路を広げたいと考えるようになりました。そこで、日本と同様に右ハンドルの自動車が多く走っている香港へ単身で渡航し、中古車販売を数年行いました。しかし採算が取れず、悩んでいたとき、現地の方から「自動車部品卸が活発な街がある」という話を聞いて、すぐ現地へ赴きました。そこから自動車部品を仕入れ、ヤフーオークションで売り始めたのが、現在の当社の主業務となる自動車部品販売のルーツです。

 この形態を2年ほど続けた後、もっと大ロットでの販売を行いたいと考え、自動車部品協会、部品商、自動車販売業者などに話を聞き需要を見出した「サイドバイザー」を取り扱うことを決めました。それが07年6月ごろです。サイドバイザーの販売が軌道に乗り始めると、受注先の希望もあり、フロアマットの生産・販売も始めました。しかし、外注で製品管理業務、輸出貿易管理業務を行っていたので、費用がかさんでしまうことが課題となりました。高クオリティーで低価格の商品を全国に販売するためには、外注費を削減しなくてはならない。貿易会社を内製化すべく、11年4月に香港子会社を設立し、現在の当社の業務フローを確立しました。

 ──貴社が経営を行ううえでの最大のリスクは何ですか。

  山田 当社の主なリスクは、為替リスクと中国のカントリーリスクと考えています。ほとんどの商品を中国(一部台湾)から輸入していますので、為替に左右されてしまうことがあり、円安であれば原価が上昇する為替リスクがあります。また、現在の製造工場は中国にあり、中国国内の景気動向や法的規制などのカントリーリスクがあります。それらを回避するために、為替リスクについてはヘッジのための為替予約の活用などの方策を検討しており、中国のカントリーリスクをヘッジするために、ベトナム、マレーシアなどへの工場移転の可能性を常に調査しています。

 また、中国に依存しているサプライチェーンを見直すために、21年11月に福岡証券取引所Q-Boardへ上場して得た公募増資資金で、山口県にフロアマット工場を設立することにしました。これは、単価の高い高級商品を海外ではなく日本で製造することにより、国際情勢に左右されない製造拠点の柱をもつという意図もあり、サプライチェーンの改革の「はじめの一歩」と考えています。当社は今までレクサスやメルセデスベンツ、BMWなどの小ロット、高単価の商品を扱ったことはありませんでしたが、輸入車などの高級品市場に参入することで顧客の幅を広げ、国内および海外に製造拠点をもつことによって内在するリスクを分散できるようになります。  永遠に続く会社づくり

  ──経営者として意識していることは何ですか。

  山田 私は経営を行ううえで「数字の動き」を大切にし、常に会社の財務状態を把握するように意識しています。もともと理数系が得意だったのですが、決算書の勉強をしていくなかで、試算表を見るのが楽しくなり、「この部分が少しずれてしまうと将来的に損する可能性がある」などの想定をしています。当社で取り扱う商品の在庫の個数、販売コストを計算し、会社全体の利益を考えて仕入れ数を見極めていくのも、社長の私が管理しなくてはいけない仕事であると考えています。

  ──経営を行ううえでのモチベーションはどこにあるのですか。

  山田 当たり前にはなってしまうのですが、「自動車産業に関わる人を幸せにしたい」という強い思いが原動力になっています。規模の小さい自動車販売業者になると、120万円の自動車が売れても3万円程度しか儲からないことはざらにあります。そうした方たちにも、利益率の高い当社の商品を使用していただくことにより、費用を抑え、多くの利益を生み出してもらいたいと思っています。当社はいろいろな方法で、自動車に関わる方たちがより良い環境で仕事をできるために手助けをする会社でありたいと思っています。それが、株式上場を目指した理由でもありますね。

  ──経営を始めてから、大きな失敗はありましたか。

  山田 あまり大きな失敗というのはないのかなと思っています。ただ、私の知識不足ですごく遠回りしてしまったと感じており、もっと勉強してストイックに向き合えていたら、と後悔することはありました。しかし、失敗と思うかどうかは自分が問題に対してどう向き合ってきたかによって変わるものだと思っているので、自分の糧になったとプラスに捉えるようにしています。実際、会社は創業から今までで良くなってきていると自負しています。失敗の経験があるから、それに対応するプロセスが社内に周知され、問題に対処する能力が培われていきますので、失敗は会社が成長するために必要な1つの過程であると思っています。

(つづく)

【文・構成:立野 夏海】


< COMPANY INFORMATION>
代 表:山田 紀之
所在地:福岡市中央区天神2-3-36
設 立:2003年12月
資本金:5,763万円
売上高:(21/11連結)16億7,655万円 


<プロフィール>
山田 紀之
(やまだ のりゆき)
1975年生まれ、山口県出身。95年4月山口トヨタ自動車(株)に入社。6年間勤めた後、2002年1月CARフロンティア山田を創業。03年(株)フロンティアを設立した。新域國際香港有限公司の董事長も務める。趣味は筋トレ。

 

(後)

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