【郵政】「局長会消えてよし」~断定できる理由(4)
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ライター 黒川 晶
企業の存在意義を自問せよ
民営化後、「特定郵便局」は「エリアマネジメント局」となったが、全特という組織に基づく従来の制度はほぼそのまま維持された。全特は民営化に激しく抵抗してきたから「身を削って尽くし続けた自民党に裏切られた」とみなす向きもあるが、これまでの政治活動はたしかに奏功したのだ。
それどころか、朝日新聞記者の藤田知也氏が『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』(光文社新書、2021年)で鮮やかに描き出しているように、安倍政権後はますます政治力を強め、日本郵政グループ経営陣を意のままに操るようになった。
19年夏には全特元会長が日本郵便副社長に就任、全国13の支社長ポストのうち4つを元局長会幹部が占めるなど、いまや公然と会社を着々と手中に収めている。そして、この政治力もまた国営時代と変わらず、戦時統制時代由来の「総動員」体制と末端局長たちの“滅私奉公”が支えている。
たしかに、日本の郵便制度・通信事業を定着、発展させてきたのは特定郵便局長たちである。そうした歴史的経緯に基づく「強烈な職業プライド」(ライターの世川行介氏)をもって、全特幹部は内外に呪文のように言い続けてきた。政治活動は保身のためではない、郵政事業をもっと便利にし、国民の役に立つために制度維持が必要なのであり、そのための「政治的解決」なのだと。だが、その「政治的解決」のためにメンバーに業務外の多大な精神的・金銭的負担を強い、そのひずみが顧客に対する背信行為の数々となって噴出しているとすれば、彼らの「第四の事業」にもはや正義はない。
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日本郵政、巨額M&Aに踏み切れず 野村不動産HD買収はとん挫負担に耐えかねて離職する局長(2000年ごろには昔からの世襲特定郵便局長は4割を切った)や、仲間の不正行為を告発する局長も増えていった。だが、昨年6月に西村光昌・九州地方郵便局長会副会長(日本郵便では福岡県筑前東部地区連絡会の元統括局長)が懲役1年・執行猶予3年の有罪判決を受けた一件では、幹部クラスの人間が内部告発者を躍起になって探し出し、公開処刑のようなかたちで吊るし上げ、他のメンバーに“村八分”を命じてまで「秩序」を保とうとする組織であることが明らかになっている。しかも、内部告発の対象となったのは、西村副会長の息子の郵便局長による不正であった。一部の幹部にのみ旨味をもたらすこの制度の維持そのものが、目的化していることがよくわかる。
社会における存在意義がなくなれば消滅するというのが民間企業の厳しい掟である。顧客への不正をはたらくことを横行させるような会社に社会的意義があろうはずもない。いわんや、経営不振に陥った挙句、政治力にものを言わせて新たな税金軽減の仕組み(郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構)をこしらえさせ、さらなる公金投入まで画策するなど、社会悪以外の何ものでもない。
「全特の祖」佐伯玄洞は、局長たちに政治活動を呼びかける一方、それは地域社会に貢献し地域住民の信頼を得てこそ許されるのだと説いていた。いま「わが世の春」を謳歌しているつもりの全特幹部は、郵便制度の立役者としての歴史的経緯に依って立つのであれば、それこそ「初心」に立ち帰ってはいかがだろうか。それができないというなら、民間企業の掟に従い、日本郵便とともに社会から退場していただくほかあるまい。
(了)
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