プーチンのウクライナ侵攻、ロシア凋落の始まりか(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2022年3月4日の「プーチンのウクライナ侵攻、ロシア凋落の始まりか」を紹介。プーチン氏の緒戦でのつまずき
ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切って1週間が経ち、両代表団によってベラルーシで停戦協議が行われている。刻々変化する戦況を判断することは危険ではあるが、電光石火の攻撃により緒戦で勝利し、ウクライナ側に(1)非武装中立化、(2)クリミア半島の主権譲渡、を飲ませるというロシアの目論見はうまくいっていないようである。傀儡政権の樹立も今では難しくなっている。
誤算はウクライナの士気とドイツの政策大旋回
誤算の2大要因は、ウクライナ側の士気が高く抵抗が強いことと国際世論のロシア批判の高まりである。SNSで全世界に伝えられるゼレンスキー大統領の英雄的抵抗と国民の愛国心の高まりは、国際世論を味方につけ、ロシア批判の共同戦線ともいえるような雰囲気をつくっている。そのなかで特筆されるのは、EUをリードするドイツ・ショルツ政権の政策大旋回である。ロシアによるウクライナ侵攻直後の2月28日、ドイツ議会の特別セッションにおいて、1,000億ユーロの軍近代化予算と、軍事予算の増額(対GDP比1.5%~2%)が表明された。また北海ルートのパイプラインノルドストリーム2の棚上げも打ち出された。さらにロシアの国際決済システムSWIFTからの排除、ミサイルと装甲車のウクライナへの援助、石炭と天然ガス備蓄の増強、カタールと米国からのLNG受け入れターミナル2つの建設などが緑の党の同意のもとに打ち出された。2022年に全廃が決まっていた原発の運転延長や廃止原発の再稼働なども俎上に上ってくるかもしれない。
4つの可能性、すべてはプーチン氏にかかる
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ストラテジーブレティン(295号)米中デカップリングは可能なのか(前)平和主義、反軍拡、脱カーボンに彩られたドイツ中道連立政権の存在はNATOを押し返そうとするプーチン政権にとって、大きな安心材料であった。その180度の政策転換は、自らの蒔いた種とはいえ、プーチン政権にとって大いなる読み違えであっただろう。となると、これからどのようなシナリオが考えられるだろうか。ことはすべてプーチン氏の判断にかかっている。4つのシナリオがあり得る。第一の最も可能性が高いシナリオは、プーチン氏のdouble down(2倍賭け)であろう。緒戦でもたついた分をより強硬策で突破し、ウクライナ側の屈服を勝ち取ろうとするだろう。3月4日の原発攻撃はまさにdouble downそのものかもしれない。第二に可能性が高いシナリオは、停戦を餌に非武装化などの譲歩を勝ち取る、いわば大坂冬の陣型の対応(藤崎元駐米大使の説)であろう。これはそのあと夏の陣が控えており、ウクライナにとっては最終的な解決策にはならず危険である。第三の可能性は、国際批判の高まりと国内経済悪化によりプーチン氏が失脚・排除されるシナリオであるが、まだ機は熟しておらず当面は考えにくい。第四のシナリオはプーチン氏の改心による侵略の終結であるが、それはほとんど考えられない。
(つづく)
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