【ラグビー】宗像サニックスが廃部 企業スポーツの今後(後)
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ジャパンラグビーリーグワン・ディビジョン3の「宗像サニックスブルース」が今季限りで廃部になるというラグビーファンにとってショッキングなニュースが飛び込んできた。昨年限りで解散したコカ・コーラレッドスパークスに続き九州のラグビー界をリードしてきたチームがまた消えることとなった。
応援先で宗政伸一氏が急死
宗政伸一氏は突然死だった。
宗政氏が代表を務めるラグビーチーム、宗像サニックスブルースは、ジャパンラグビートップリーグ2016-2017シーズンに、2年ぶりに昇格を果した。
2016年10月2日の第5節、本拠地の福岡・グローバルスタジアムで、東芝ブレイブルーパスと対戦した。戦前の下馬評では東芝有利と言われたが、結果は31-21でサニックスが勝利。この試合は「宗像サニックスがトップリーグに波乱を引き起こした」と評された。
第14節は17年1月8日、東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場で、リコーブラックラムズと対戦する。宗政氏は恒例である東京での新年訓示のために上京。合わせて、宗像サニックスを応援し、その夜に福岡に戻るスケジュールだった。
宗政氏の体調に異変が生じたのは1月7日朝のことだった。宗政社長から東京支店に「体調が悪いので、病院を探してほしい」との連絡があったため、救急病院を探して了解を取り付け、宗政氏の携帯に連絡を入れたが応答がない。
宿泊先のホテルに連絡し、ホテルマンが部屋に駆けつけたところ、宗政氏はベッドに倒れていた。救急車で病院に搬送したが、病院で死亡が確認された。死因は「咽頭膿瘍の疑い」とされた。これは、扁桃腺が大きく腫れあがり、喉を塞いでしまう病気だ。67歳だった。
宗政氏は宗像サニックスの試合に頻繁に足を運んだ。選手たちが必死に戦う姿を見つめ、応援し、叱咤激励した。ラグビーをこよなく愛した宗政氏の急逝がチームにとっての転機になる。
企業スポーツの曲がり角
これまで、日本の社会人ラグビーは企業スポーツとして存在してきたが、大きな曲がり角を迎えた。今年から始まった新リーグ「リーグワン」は、サッカーのJリーグのように地域密着を強調した。各チームが独立した事業主体としてチケット収入を得ることで、プロ化の第1歩を踏み出した。
チーム名には必ず地域名を入れ、企業名をチーム名に入れることは任意となった。母体企業からチームを分社化させることを推奨。企業スポーツからの自立を目指した。
しかし、こうしたラグビー界に大きな動きがあった。昨年4月、トップチャレンジリーグ(当時)のコカ・コーラ(福岡市)が活動休止を発表。事実上廃部となり、新リーグには参加しないことが決まった。
宗像サニックスもチームを縮小する方向となり、主力が大量に退団した。昨季限りで廃部となったコカ・コーラから移籍選手を受け入れ、トップリーグからは唯一の3部でスタートしたのだが、事実上の廃部へとかじを切った。
関係者によると、電力の市場価格が高騰し、企業などへの電力供給事業で調達コストがかさみサニックスの業績が悪化したこと、3部でスタートしたことも影響したという。
コカ・コーラも、サニックスも、企業スポーツの将来に見切りをつけた格好だ。九州ではラグビー部をもつ企業は九州電力だけ。今後、ラグビーから撤退する企業が出てくるものとみられている。
宗像サニックスはほとんどの選手が単年などのプロ契約を結んでいる。同じ企業チームでも、トヨタ自動車やサントリー、神戸製鋼、パナソニックなど、引退後も企業に残りながら社業で活躍している人は多い。これまで社会人ラグビーを担ってきた企業スポーツを見捨てていいのかとの首を傾げるラグビーファンは少なくない。
19年W杯日本大会の大成功。そして、新リーグの船出。改革を進めるラグビー界だが、企業から自立した地域チームになるには、まだまだ課題が多い。
(了)
【経済ジャーナリスト/秋月太郎】
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