【視点】韓国人が子どもを産まない理由 苛烈を極める競争社会(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏家庭よりも個人および個性重視
韓国では受験戦争がし烈なため、教育費の負担が重い。取引先に支払う費用は交渉すれば延ばすこともできるが、教育費の場合、それもできない。隣の家の子は塾通いをしているのに、家庭の経済的事情でそれができないというのは、親としては耐え難い苦痛だ。それを考慮すると、経済的な余裕がない場合、むやみに結婚するより婚期を伸ばす選択をする者が必然的に増加する。
近年、労働市場への若年女性の参加が増加しているが、韓国では仕事と育児を両立させるのも難しい状況である。社会は変わっているのに「家事は、女性の仕事」という意識が根強く残っており、男性が家事に参加する時間はごくわずかである。また、長時間労働も結婚や出産の妨げになっているようだ。
このような社会的な課題が解決されない限り、簡単に低出生率の問題は解決できないだろう。さらに、最近の若年層には結婚と子どもに対する価値観の変化が生じてきており、結婚や出産によって自分の夢が達成できなくなると悩む人も多くなった。子どもが「経済的な負担」と思ったり、「経済的な余裕がないのなら子どもを産まな」と考えたりする人が増えているのだ。
古い世代は「育児が人生最大の幸せ」と感じていたが、若い世代は育児を「苦痛または経済的な負担」として受け止めているように感じる。その上、社会の価値観が変化し、「結婚しないことも1つの選択肢」と思えるようになったし、結婚ではなく、仕事を通して得る成長を大事にしながら、余裕のある暮らしを楽しみたいと思っている人も増えている。現代は家庭よりも個人と個性を大事にする時代になったのだろうか。
韓国政府の対応は
韓国は深刻な「人口減少時代」に突入した。しかし、人口減少と言っても、それを実感するのは難しいのも事実で、人口減少を深刻に受け止めている者は少ない。
低出生率の問題や高齢化問題は対症療法ではなく、根本的な解決策が求められるが、複雑な要因が絡みあっているため、なかなか解決策を見出すことができていない。韓国政府はその間数十兆ウォンの予算を注ぎこんできたが、まだ解決の糸口すら見つけられていないのが現実だ。
今後、育児費の負担、保育施設の拡充、女性のパートタイム制の拡大など、きめ細かい対策を講じるとともに、男性の育児や家事への積極的な参加および企業や社会の意識の変革などが必要となってくることはいうまでもないだろう。
(了)
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