2024年12月21日( 土 )

【韓国大統領選】5年ぶりの政権交代(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

激戦を制した理由は

ソウル マンション イメージ    なぜ今回の選挙で、野党の尹錫悦氏が勝利を収められたのだろうか。文在寅前大統領も就任初期の支持率はとても高かった。国民とあまりコミュニケーションをとろうとしなかった前任の朴槿恵大統領と比べ、文大統領は「親しみのある大統領」として国民に受け入れられた。

 しかし、文大統領最大の失敗は不動産政策だろう。文大統領の在任期間は、歴代大統領の中で最も不動産が高騰したからだ。普通の労働者がソウルでマンションを購入しようとすると、100年以上かかるという推計があるほど、不動産は高騰した。すなわち、若い人にとって家を買うのは「夢のまた夢」となってしまい、国民の怒りが爆発したのだ。

 もちろんすべて文政権のせいではない。世界的にカネ余り現象が続き、不動産が高騰せざるを得ない状況にあることも事実である。それでも政策によって、これを緩和しないといけないのに、このような結果となったことに国民の不満が募っている。また、不動産が高騰したことで、税金も高くなり富裕層の税金に対する不平不満も大きかった。加えて、改善の兆しが見えない若い世代の雇用問題も、政権交代のもう1つの要因だろう。

 3つ目は「K防疫」の失敗だ。中国、ベトナムなど、韓国より厳しい規制を行う国もあるものの、国民にとってコロナ対策はストレスとなっていた。防疫を優先するあまり、政府が厳しい規制を実施したことで、自営業者は苦境に立たされ、政府の補助金ではどうにもならない状況となっている。そのような状況下でも、規制を続けてきたにも関わらず、今や1日の新規感染者数が40万人に迫っており、世界で最も新規感染者が多い国になってしまった。

 尹錫悦氏が勝利を収めるようになった最後の要因は、野党候補の一本化に成功したことだ。投票3日前の時点で、劇的に野党候補の一本化に成功したことで反政権票の受け皿ができ、それが追い風となったのだ。もちろん立候補を取り下げた安哲秀(アン・チョルス)氏の票がすべて尹錫悦氏に回ったわけではないが、これがなかったら、尹候補は僅差で負けていたかもしれない。

 個人的には、今回の大統領選に影響を与えたのは李在明婦人の公金流用疑惑だと思っている。道知事としての実績もあり、実行力もあると李在明氏がアピールしているなかで公的な用途に使われるべきクレジットカードを夫人が使ったことで、李候補の道徳性に傷を付ける結果となったからである。

今後どのような政治を行うのだろうか

 国民の1人として尹錫悦氏には謙虚な姿勢で国民に仕える大統領になってほしい。しかし、今回の得票率が50%を下回っているだけでなく、最初の2年間は「与小野大」のなかで政局を運営しないといけないので、前途多難なのは間違いない。

 とくにロシアによるウクライナ侵攻で、原油高、物価高、ウォン安、株安が続いており、韓国経済は最悪の危機に見舞われている。現在の危機は、アジア通貨危機の時よりひどいという声すら聞こえる。そのような状況下で尹錫悦氏は大統領に就任することになるので、まずは経済を立て直すことが急務だろう。それに戦後最悪と言われている日韓関係の回復、アメリカとの同盟強化など、外交面での政策見直しも求められている。今後どのような展開になっていくのか、推移を見守っていく必要があるだろう。

(了)

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