ウクライナ危機で大儲けするアメリカの軍需産業とPR会社
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、3月25日付の記事を紹介する。ウクライナ情勢は危機的な状況に陥っています。ウクライナの軍や市民の抵抗にあって、ロシア軍の侵攻は思うように進んでいないとの報道もありますが、圧倒的な軍事力をもつロシア軍によってウクライナ各地では大きな被害が発生していることは間違いないでしょう。
ゼレンスキー大統領はアメリカやヨーロッパ諸国に支援を求めていますが、アメリカは武器や弾薬を売りつけるのは熱心ですが、「正規軍を派遣することはない」と明言しています。なぜなら、そうなれば米ロ全面戦争に発展しかねず、核兵器が使用される人類最終戦になる恐れもあるからです。
その一方で、ヨーロッパの動きはバラバラで、岸田総理はブリュッセルで開催されるG7首脳会談に参加する予定ですが、ヨーロッパとアジアが足並みをそろえてロシアと向き合うことは難しいでしょう。
なぜなら、フランスは来月に大統領選挙が迫っており、これ以上のロシアとの交渉は必要ないと考えているからです。というより、マクロン大統領は今回のウクライナ危機によって、何度もプーチン大統領と直接交渉を繰り返したことで、「強いリーダー」としての存在感を有権者に十分アピールできたと判断しています。実際、支持率は急増しており、4月の大統領選挙では再選が確実視されるほどですから。正に、「ウクライナ危機」効果を最大限に活用していると言っても過言ではありません。
ドイツに至ってはロシアからの天然ガスを引き込むパイプラインの稼働中止を決めましたが、アメリカ主導の対ロ経済制裁に抵触しない範囲で、ロシアからのエネルギー輸入を継続するという裏技を見せつけています。
実は、ウクライナの国民が苦難を強いられている一方で、欧米の一部の企業は大儲けしウハウハ状態のようです。その最たるものは「軍需産業」に他なりません。アメリカのレイシオンやロッキードマーティンは対戦車ミサイルが売れに売れています。ロッキードマーティンの株価はウクライナ危機が発生してから16%の値上がりです。また、英国のBAEシステムズの株価も26%の値上がりを記録。
こうした軍需産業の2022年の株価の推移予想では7%増となっています。戦争特需といえるでしょう。アメリカのバイデン政権はウクライナに対して1万7000発の対戦車ミサイルと2000基の対空ミサイルを提供しています。これまで6憶5,000万ドルの武器供与を約束してきましたが、さらに追加で3億5,000万ドルを提供することになりました。
アメリカのウクライナ支援はすべてが武器や弾薬であり、いわゆる人道支援物資は対象になっていません。アメリカの軍需産業のコンサルタントによれば、「ロシアが崩壊する過程が長引けば長引くだけ、株価は上がり続ける」とのこと。もちろん、儲かっているのはアメリカの軍需産業に限りません。イギリス、オーストラリア、カナダ、そしてトルコからも大量の武器や弾薬が送り込まれており、こうした国々も戦争特需のおこぼれに預かっていることは論を待ちません。
ゼレンスキー大統領の頼みの綱は、こうした欧米から提供される最新兵器と、それらを使いこなす傭兵部隊というわけです。アメリカの民間の戦争請負会社からはすでに1万6,000人を超える「雇われ兵士」がウクライナに入っています。彼らは元アメリカの特殊部隊の隊員らで、世界各地の紛争地域で荒稼ぎをしてきた歴戦の勇士たちです。
ウクライナに到着した傭兵部隊のスナイパーは早速、ロシア軍の現地の指揮官を狙撃し殺害してしまいました。彼らはアメリカが提供しているロシア軍の通信傍受データを最大限に活用し、ロシア軍の指揮官の殺害に成功しているわけです。外国からの義勇兵の募集も行われていますが、それは「国際的な連帯」をアピールするためのポーズに過ぎません。
アメリカにはブラックウォーターを始め、数多くの戦争請負会社があり、今回のようなケースは「願ってもないビジネスチャンス」と受け止め、アフリカや中東の紛争地帯に派遣していた傭兵を急遽、ウクライナに配置転換しています。
さらにいえば、俳優上がりで演説上手と評判のゼレンスキー大統領ですが、彼の演説原稿や振り付けを専門で請け負っているPR会社も大儲けをしているのです。日本でもアメリカでも総理や大統領には専属のスピーチライターが付いています。とくに、ゼレンスキー大統領の場合は、アメリカはじめ各国の議会にオンラインでの演説を通して、支持と支援を求めており、その効果は抜群です。
3月23日に日本の国会向けに行われた演説を受け、日本政府は追加の経済支援を決めました。そうした演説を準備しているのが、アメリカのPR会社なのです。なかでもオバマ元大統領やバイデン大統領のスピーチライターとして有名なステファン・クルーピン氏の所属するワシントンのロビー会社はゼレンスキー氏が大統領に就任した3年前から契約を結んでおり、同大統領の海外PR戦略を一手に引き受けています。こうしたアメリカのPR会社もウクライナ危機では大儲けに励んでいるわけです。
次号「第289回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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