2024年07月16日( 火 )

【福岡IR特別連載77】米国Bally'sが記者会見開催~民間先行の現実的計画

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福岡IR年間460万人、長崎IRは修正後も673万人

米国Bally'sが記者会見開催    3月30日、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)で、地元有志による福岡IRの準備組織「IRF Development Secretariat LLP」と米国の歴史あるIR投資開発企業で豊富な資金力を誇る「Bally's Corporation」(以下、Bally's)が記者会見を行い、福岡市都市圏へのIR進出を表明した。

 記者会見において発表された、アメリカの著名なアナリストによる事前の可能性調査を基にした各種データは非常に的確であり、長崎IRとは比較にならない程、現実的なものだと考えられる。

 筆者が重ねて説明しているように、長崎IRの年間集客予定は当初840万人という「天文学的」なもので、あり得ない数値だった。しかし、3月10日にやむを得ず修正、修正後の数値は673万人である。

 しかし、修正後の673万人という数値を一体誰が信じるのというのか?九州で最大の後背地人口を誇る福岡IRの計画数値より、およそ1.5倍多く集客する計画なのだ。ちなみに、コロナ禍後における推定訪問者数は福岡IRが5%以下なのに対し、長崎IRは25%以上と、とんでもなくずさんな計画なのである。

 このような長崎IRの計画について、九州経済連合会の倉富純男会長(西日本鉄道会長)は朝日新聞のインタビューで「IRは(政府が目標とする)インバウンド6千万人時代の中で非常に大事な要素。長崎で実現してほしい」と語っている。元西鉄の社長ともあろう方が誠に無責任な発言だ。

 コロナ禍前の2019年の訪日外国人旅行者は3,188万人だが、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると東京都が47.2%、大阪府38.6%、千葉県35.1%、京都府27.8%、奈良県11.7%と関東・関西が上位を占めている。ちなみに福岡県は8.7%、一方、長崎県は1.5%である。従って、仮に長崎IRが実現したとしても、年間673万人の集客などはあり得ないのだ。まさに行政先行で計画した、数字ありきのお粗末なものである。

10万人がIR福岡に期待

 記者会見で発表された、17年度の福岡県内のギャンブル依存症患者は、わずか300人弱(福岡県資料)。福岡IRの稼働前の新規雇用が約5万人、稼働後は3.4万人だ。しかし、会見後、一部のマスコミは、あえての「片手落ち」で、IR誘致反対派のみを取材し、13,000人の反対署名があったと報道、一方、賛成署名については一切報道していない。まるで、反対派の方が圧倒的に多いかのような恣意的な報道を行っている。

 福岡青年会議所が高島市長に提出した3万人の署名簿、福岡県フィギュアスケート連盟が提出したアイスアリーナ新設要望署名簿が5万5,000人、地元周辺企業からの応援が約200社、その取引先などを含めると1万~2万人、合わせるとおよそ10万人前後の人々が期待しているのだ。福岡IRに対する対応が、今年の市長選に大きく影響するのは間違いないだろう。

 福岡IRは昨年、高島市長が掲げた「福岡市国際金融機能招致TEAM FUKUOKA」「Fukuoka East&west構想」にもってこいのすばらしいプロジェクトになる。福岡IRの経済効果、雇用効果はコロナ禍後の経済に最大級のインパクトを与えるのは間違いなく、市長選の武器にも争点にもなり得る。

在福岡米国首席領事「ぜひ福岡でIRを実現してほしい」

 さらに、ある一部マスコミは、知ってか知らずか、本件について事前に知らされていない福岡商工会議所のみを取材し、1月末に、正式にBally'sから本件について知らされている福岡市行政や福岡市市議会、九州経済連合会、九州IR推進協議会、在福岡米国領事館などへの取材・報道を一切行っていない。思わず福岡市財界の長崎IR関係者に忖度しているのではないかと勘繰ってしまうし、そうしたマスコミの偏った報道姿勢には憤りを感じる。

 在福岡米国首席領事のジョン・C・テイラー氏が積極的な誘致促進の応援演説をしたが、事前準備なく、あのようなかたちでの登壇はないし、心のこもった情熱的な話しもできない。

 最後に勉強不足の各マスコミから「国への申請締切日は今月末だが」という質問があった。しかし、今回の記者会見の登壇者は、米国首席領事を除き、全員がIRについてのプロフェッショナルで、そんなことは十分承知の上で来日・会見している。期限に間に合わないのは理解した上での会見なのだ。

 IRの設置が認められるのは全国で3カ所だが、現実的に考えて、大阪IRの1カ所しか承認される可能性はない。従って、あえてこの時期に記者会見を行ったと見るべきである。

 要するに締切日より、中身の問題なのだ。重ねて説明するが、後背地人口を考えると東京都中心の関東都市圏、大阪市中心の関西都市圏、福岡市中心の北部九州都市圏しか採算が取れない。従って、長崎IRは巨額な投資と資金調達をすることは不可能なのだ。一体、マスコミは何を忖度して報道しているのか?政治、行政は誰の為にあるのか?はなはだ疑問である。

 長崎IRの資金調達計画と本件事業母体の組織組成はいまだ確定せず、今月中旬が最終発表の公聴会である。すでに、IR誘致を積極的に推進していた前長崎県知事の中村法道氏は落選、さらに、福岡IRが公に発表され、長崎IRは事実上崩壊したと言ってもよい。

 最初から間違った誘致計画だった訳である。本件は「安倍・トランプ密約」でスタートしたので、米国IR投資開発企業にしかチャンスはない。おそらく、近い内に、グローバルな知識と経験をもった大石賢吾長崎県知事によるIR撤退記者会見が行われるだろう。

【青木 義彦】

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