2024年12月21日( 土 )

【再掲:福岡大学の変貌(1)】「福大はつまらなくなった」

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 元福岡大学(以下、福大)教授のAは、定年を前にして20年超教鞭を執った福大を退職した。以下は「福大に嫌気がさした」というAによるここ30年の福大の考察である。まずは、Aが直接インタビューした元福大教授の回想から始める。


大学 講義 イメージ 「福大はずいぶん変わりましたね。私が勤め始めたころはとても良い環境でした。でも、ある時点から変わりましたね。ある先生が『福大はつまらなくなった』と吐き捨てるように言って急に辞めたんです。これはショックでしたね。

 私はまだ福大に勤務してから三年くらいしか経っていなかったので、『つまらなくなった』の意味はよくわかりませんでした。同僚たちは先生のいきなりのぶっきらぼうに唖然とし、口を閉ざしたのは覚えています。納得した人もいたかもしれないですが、一瞬気まずい雰囲気が漂いましたね。何しろ、その先生は日ごろは紳士的、口数の少ない方でしたから。

 ですけど、あの先生がそうおっしゃったのだから、本当なのだろうとも思いました。『つまらなくなった』というからには、かつて『面白かった』時があったということでしょう。残念ながら私はその『面白かった』時を知りませんが、でも私が就職したころの25年前の福大でも、十分面白かったですよ。勤めることに喜びさえ感じたものです。

 ところがです、そういう私も、結局のところ定年になる数年前にこの大学を去ってしまいました。あの先生とはちがって公然と『つまらなくなった』とはいえなかったんですが、本当をいえば『つまらない』どころか『嫌』になったんです。福大をよく知り、私のこともよく知っているある先輩の先生は、『嫌気がさしたんでしょう』とはっきり言いました。図星です」


 この話を要約すれば、福大は「面白い」から「つまらない」へ、「つまらない」から「嫌な」に変わったというものである。個人の主観が入っているに違いないが、一体この変遷がどういうものなのか、それをじっくり考えてみたい。断っておくが、目的は福大を貶めることにはない。福大の変遷がそのまま福岡の変遷であり、同時にまた日本全体の変遷だと思えばこその考察である。私の専門のシステム工学からの考察である。

 まず、私がインタビューした先生にとって福大は劣化の一途をたどって見えるのだが、見方を変えれば、どんどんよくなっているということだ。ますます「近代的」になっているのである。私自身は「前近代的」な人間なので昔のほうがよかったと思うけれども、「近代化」を推し進める側にすれば、その反対を思うはずである。もっとも、そのどちらが正しいかとなると、そこはわからない。「近代化」が思わぬ袋小路を招くことも十分あり得る。

 福大は九州随一のマンモス私立大学である。その分、日本全体の動向を反映する。福大の変遷はそのままここ30年の日本の変遷である。日本がどのように「つまらない」「嫌な」国になってきたか、それが見えてくることを期待する。

(つづく)

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