サムスン電子「危機説」の真相は?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏韓国を代表する企業「サムスン電子」
現代人の日常生活に欠かせないスマートフォン。サムスン電子はスマートフォン販売において、世界シェア24%(出荷量ベース)で、世界首位。パソコンやスマートフォンなどに必要なメモリ半導体においては、世界シェア44%と断トツ1位となっている。
サムスン電子はさまざまな事業を手がけているが、代表する事業と言えば、何と言っても半導体事業とスマホ事業で、この2つの事業がほかの事業を牽引している。またサムスン電子は韓国株式市場の時価総額全体の約20%を占め、韓国経済への影響力は絶大なものがある。
同社が4月7日に発表した1~3月期の業績は、売上高が四半期ベースで過去最高(77兆ウォン)、営業利益(14兆1,000億ウォン)も1~3月期では過去2番目だった。ところが、サムスン電子の株価は昨年末に比べ15%近く下がっており、最近になって「危機説」まで囁かれるようになった。今回はサムスン電子の危機について検証したい。
競合他社と比較すると問題点が浮き彫りに
半導体分野におけるサムスン電子のライバルとして米国のインテルが挙げられる。インテルは半導体の設計と製造を同時に行う総合半導体企業として、長年半導体産業の王者の座に就いていた。ところが、市場の変化で、今まで半導体を納入していた顧客がインテルから離れ、顧客企業は自社で半導体を設計し、その製造はファウンドリーに委託するようになった。その原因の1つは、半導体の製造工程が“超微細化”したことにより製造が難しくなったことと、巨額の設備投資が必要になったことだ。ところが、インテルの製造技術はこれに追いつかず、また設備投資をするタイミングも逃しており、顧客離れを起こす結果となった。今までの顧客であった米国企業は設計した半導体の製造委託を現在は台湾のTSMCか、韓国のサムスン電子に委託している。
サムスン電子は製造技術においてはインテルを追い抜き、ファウンドリー事業においては世界2位。半導体は戦略物資として見直されており、バイデン政権は半導体サプライチェーンの米国内での構築を急いでいる。そうした状況下、インテルは顧客を取り戻すため、ファウンドリー事業に巨額の投資を発表し、再浮上を狙っている。これはTSMCよりも2位のサムスン電子にとって、大きな脅威となるだろう。
サムスン電子のスマホにおけるライバルはアップルである。アップルは世界シェア2位だが、携帯電話市場利益の8割はアップルが得ている。一方、サムスン電子は世界市場で利益の1割しか占めていない。
アップルのスマホ部門の営業利益率は約35%で、サムスン電子と大きな開きがある。なぜアップルの営業利益率が高いかというと、デバイスの販売だけでなく、携帯電話のOS開発、サービスなどを行い、顧客を囲い込み、収益を上げているからだ。一方、サムスン電子はデバイスを販売しているだけなので、利益率において、アップルと大きな差がある。
半導体製造委託分野のライバルはTSMCである。TSMCはもともと非メモリ半導体を製造委託する企業で、下請のような存在だった。ところがスマホの時代が到来し、半導体の小型化と低消費電力が要求され、半導体の超微細化が進むことになる。その結果、製造をTSMCに委託しないと、半導体がつくれない状況となっている。ファウンドリー市場で、TSMCは断トツのトップを走っており、営業利益率は42%と今や半導体産業をリードする企業の1つに成長している。一方、サムスン電子はファウンドリー事業において世界2位につけているものの、TSMCとの差は縮まるどころか、段々広がってきている。
(つづく)
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