2024年11月21日( 木 )

【福岡IR特別連載81】長崎IR区域認定申請は要件の体を成さず

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総事業費の具体的な調達先は非開示

【図】
【図】

 【図】は、昨年8月31日付の記事(【IR福岡誘致開発特別連載55号】IR長崎、協定締結に至るRFP事業者選定は体を成さず)に掲載したもの。これが、政府指導の区域認定申請時におけるIR事業母体(コンソーシアム)の組織組成の完成形である。当然ながら、大阪IRはこれに沿って組織形成されている。

 それぞれの区分ごとに、企業名、投融資者の内訳(各社エクイティ持ち分予定)と額などの予定を記載して、そのバランス(外資、国内大手、地元財界)を尊重し、全体を形成して提出すべきものだ。

 これらは区域認定申請の段階でほぼ確定していることが必須で、昨年8月のRFP(事業者選定)の際には、具体的なかたちで公開入札を実施していなければならなかった。前回も今回も、長崎県と県議会、本件の関係者は度重ねて失敗しているのである。

 長崎県による国への申請書提出には驚いた。いまだに「根幹」となる総事業費の具体的な調達先を公開できず、政府指導の要諦にはほど遠いからだ。

 最も重要となる具体的な資金調達先を開示せず、米国企業からのコミットメントレターがあるから大丈夫というだけであり、レター見たこともないという県議会の決定も含め、政府への区域認定申請などはその体を成していない。

年間集客670万人というずさんな計画に投融資する企業はない

 つまり、こんなずさんな計画に投融資する企業などはないということだ。世界的に知られている米国不動産投資企業のシービーアールイー(CBRE)は、米国内での評判は芳しくなく、単なる不動産ブローカーである。

 ただし、その道のプロであるため、彼らが計画の中身を調査すれば、投融資を仲介・実行するはずがないと考えられる。現在のところ、単純に地方行政が作成した計画を見て、それを過大評価して名乗りを上げたとみられる。

 コミットメントレターなどは、あくまで表面上の意志表明に過ぎず、米国内では彼らが提出した書類の信用力はないというのが常識のようだ。県がこれらを公開できないとしているのは、確定していないからである。

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 長崎県議会もこれらを確認せず、「知事が見て確認済みだから」など理由にならない話をしている。福岡財界関係者の一部も、これらに一切の異議を唱えず、後追いの無責任な姿勢を見せる。関係者全員が忖度し、自己保全に邁進しての区域認定申請のように思える。巨大プロジェクトを結論ありきの政治的な思惑で決めることには疑問が残る。

 今回の動きは長崎県と県議会の恥の上塗りに加え、再度、墓穴を掘ることになるだろう。申請のための申請であり、国への責任転嫁が目的の区域認定申請書の提出であると、筆者は断言する。長崎IRは、国の調査前の早い段階でCBREの撤退により崩壊する可能性もあるだろう。

【青木 義彦】

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