2024年12月23日( 月 )

【BIS論壇No.377】低学歴国ニッポン

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は5月3日の記事を紹介する。

博士 イメージ    連休中の5月2日、日経新聞は『「教育岩盤」~揺らぐ人材立国~』特集を一面5段抜きで報じ、「博士減、研究衰退30年」と衰退する日本の教育の現状に警鐘を鳴らしている。

 同紙によると、「世界は博士が産業革命をけん引する時代に移っている。大学教育が普及し、教育水準が高い――そんなニッポン像は幻想で、先進国のなかで『低学歴国』になりつつある」と警告。日本は人口100万人あたり博士号取得者数で米英独はおろか隣国の韓国をも大きく下回った実情を指摘している。

 ちなみに人口100万人あたり博士号取得者数(2018年度)は日本120人に対し、米国、韓国は300人弱、ドイツ300人強、英国400人弱で、日本だけが、2008年比でも減少している情けない状況だ。2007年に276人いた米国での日本人博士号取得者数は10年後の2017年には117人と半減以下に減少。国別順位も21位に落ち込んだ。

 注目度の高い科学論文数の国際順位は90年代前半までは世界3位だった。だが2018年には10位に沈下。かくして平成の30年間に日本の産業競争力も低落。イノベーションの担い手を育てる仕組みの弱さが産業の地盤低下を招いたと日経は指摘している。

 大学院で「学問で身に付く大局観や学び続ける習慣、科学的に人を説得する技術は経営者になる訓練として有効だ」(関西学院大・村田治学長)、「交渉力やマネジメント力も備えた世界で戦える博士を輩出したい」(林泰弘早大教授)など博士に期待する声も大きい。

 だが米国の名門ハーバード大学やコロンビア大学などでは学部留学はおろか大学院への日本人留学生は衰退の一途をたどっている。一方日本の大学院への入学生は中国を中心とする海外留学生が中心となりつつあり、日本人、とくに社会人の入学生が増大することが強く期待されている。

 コロナ後の世界はICT、IoT、AI、DX、メタバースなど情報技術のさらなる発展、さらにSDGs、ESG、環境、健康への関心がさらに増大。家電などでのモノづくりでは稼げなくなっている。まさしく知財、無形資産、ソフトが主導する知識産業、情報産業時代が到来する。

 かかる時代に『情報の選球眼』(山本康正)、『データサイエンティスト入門』(野村総合研究所)、『メタバースとは何か』(岡嶋裕史)、『インテリジェンスで読み解く米中と経済安保』(江崎道朗)など会員各位が紐解かれることを期待したい。

 本年2月に創設31周年を迎えた日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)はコロナ禍にもかかわらず、勉強熱心な約80名近い方々が会場およびZOOMで参加し、5月10日に衆議院第一議員会館大会議室で31周年記念・第176回情報研究会を開催する。

 「一生勉強、一生青春」を目指し関係各位のさらなるご協力とご支援をお願いする次第です。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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