2024年11月21日( 木 )

【福岡IR特別連載83】長崎IRの区域認定申請書提出は九州の恥さらし

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各関係者間による忖度、責任転嫁の最たる事例

長崎県庁 イメージ  長崎県行政の新たな責任者・大石賢吾知事は「本件は県と九州にとって大きなインパクトになる…」と、心にもないことを公言し、4月27日に国への本件区域認定申請書を提出した。

 しかしながら、真実は、これまでの各関係者間のしがらみと経緯や、諸々のやむを得ない内部事情により、自分の意思に反して、これを実行しただけである。誠に情けない話だ。

 沖縄本土復帰50年についてマスコミ各社が報道するなか、先の大戦で、沖縄や広島、長崎に膨大な民間犠牲者が出ていても、昭和天皇の決断まで、当時の政府や財界関係の責任者の誰もが「負け戦」を確信していたにもかかわらず、これを止められなかった。「始めたら何が何でも止められない」この国の歴史は、現在も「根っこ」は同じで、いまだ本質的な組織論においては変わっていない。これらは、まさにこの国の「文化」であるといってもよい。

 前回記事(【福岡IR特別連載82】長崎IRの区域認定申請書の全計画数値は詐欺まがい)で解説した長崎IRの天文学的数字「年間集客計画数値673万人」などは、ハウステンボスの過去の実績(300万人超は数回)からも、誰もが知ってて、あり得ないと、大石新知事をはじめ、長崎県行政、佐世保市行政、福岡財界関係者の一部の本件関係者のほぼ全員がすでにわかっている。それでも区域認定申請を提出せざる得なかったのだ。

 要は、当事者たち全員がこれを信じていないが、それぞれが誰かを忖度し、本音がいえないものだから、自身の責任回避が先行し、その流れに乗ってしまい、まことしやかに、それを国に提出してしまったのだ。本件関係者全員による「とんでもない無責任体制」である。

終戦時の内閣と同様の「当事者忖度と責任回避」

 ここ、数十年間、この国の組織は、過去の悪しき習慣に逆戻りしており、世界からみると、滑稽なまでに「決断できない」「誰も責任を取らない」。“忖度する”のがこの国の社会的現象になっている。

 さらに、高齢化社会と健康年齢の伸びにより、70代~80代の「元巨大組織」の代表者や会長などが、「老害」という認識がなく、この国の経済と社会に悪影響をおよぼしているのが現状だ。すべての元組織人は、70歳を過ぎたら、各々が自分自身で考え、心地よい職務に執着せず、早い機会に辞任すべきだと考える。

 今まで、中華系には勝てず、落札できると思わず、すでに投資してしまった開発業者「カジノ・オーストリア」と、JR九州のハウステンボス駅新設引き込み線に、九州電力の園内エネルギーセンター、さらに、こんなに杜撰な計画とは知らず、これまでの行政との経緯と関係者間の協力体制などをつくってしまった福岡財界の一部組織の会長や名誉会長などは、自らのプライドを守ることが先行し、若い世代の忖度を招き、途中で止めることができず、このような結果を招いてしまったのだ。

 若い世代も、世間に違わず、本音がいえず、これらの「年寄りたち」に遠慮し、忖度して、彼ら自身も各々が「自己保全」にやっきになってしまった結果が、この杜撰でお粗末な「本件区域認定申請書」の提出に至ったのである。

 本件関係者の誰もが責任を取る気がなく、信念もなく、すべては当時の「天皇の采配」と同様の、今後の国の采配に委ね、責任転嫁し、それぞれが自身のプライドを守る為の自己保全に走ってしまった。

 各関係者からの本音は以前から筆者の耳に入っており、長崎IRが実現できるとは思っていない。皆がそれぞれ誰かに忖度し、馴れ合いで走った結果の本件組織論となっている。

 これが、今回の長崎IRの区域認定申請書提出までの顛末(てんまつ)であり、真実である。従って、近い内に国の采配以前に、この杜撰な集客計画数値が原因で、本件投融資関係者の辞退か中断を招き、長崎IRは崩壊するだろう。誠に嘆かわしい限りである。

 要は、長崎にしても和歌山にしても、この国でのIRプロジェクトは、地方都市の行政先行では無理があり、その能力もないので、実現不可能なのである。大阪にはオリックスというオーナー企業があり、橋下徹という人物が居たから、今後も可能であり、福岡は民間先行ゆえに先日の記者会見まで実現できたのだ。
 今回の長崎・和歌山はその典型であり、まず実現できるものではない!

【青木 義彦】

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