2024年12月23日( 月 )

人生の道標を取り戻す『よりよく生きるとはなにか?』

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 「いかに生きるべきか?」と悩んでいる人は多いのではないだろうか。現代社会は「何のために生きるか」についての道標がない。学生や社会人になりたてのころは、新しい体験を通して自分の世界が広がる一方、いかに人生を送るかについて迷ったり、悩んだりすることも多い。どのような時代にあってもより良く生きるには、生きることの本質を見極めることが大切だ。

 せっかく人生を送るのなら、「いい人生を過ごせてよかった」と満足できるような一生を過ごしたい。(株)クインテットの創業者であり、CHFホールディングス(株)代表取締役の松下耕三氏の著書『よりよく生きるとはなにか?―納得や充実を手に入れる人生の捉え方』(クロスメディア・パブリッシング)は、いかに生きるべきかについて悩んでいる、これから就職活動をする学生や新社会人に読んでほしい本だ。

松下耕三著『よりよく生きるとはなにか?―納得や充実を手に入れる人生の捉え方』、クロスメディア・パブリッシング、2022年
松下耕三著
『よりよく生きるとはなにか?
―納得や充実を手に入れる人生の捉え方』
クロスメディア・パブリッシング、2022年

    「よりよく生きるとは何か?」という問いかけに対して、松下氏はまず心から楽しむことや人と喜びを共有することの大切さについて語りながら、他人に迷惑をかけず、自然とともに生きることにも触れている。生き方という点でとくに印象に残ったのは、「納得感を手に入れる」というテーマだ。生きることに意義を感じられるのは、人生に納得できるからだ。まず最善を尽くすこと、そして状況に向き合い、心の底から納得感が得られる選択をして行動に移すことが必要だと松下氏は語る。

 人生は日々、選択の連続である。「心から納得できる選択は何か」を自覚することがスタート地点になる。納得感の大きい人生を送るには、あきらめずに挑戦することも欠かせない。私たちには「人の役に立ちたい」という思いがあるため、仕事では、社会をより良くしたり、人の役に立ったりすることも納得感を大きくする。松下氏は、「自分を裏切らず心の底からの納得を手にする生き方をしていく人が増えれば、自ずと社会はよくなっていく」と書いているが、まさしくその通りだと感じる。

 「自信をもちたい」と悩んでいる若い人も多い。どのような気持ちになれば自信をもてるかという精神論について書かれた本は多いが、この本は、できることには自信をもてるもので、何事にも挑戦して乗り越え、なにかを生み出してきた過去が自信を生み出してくれると伝えている。行動の積み重ねから自信が生まれるという考え方は、「自信がない」という悩みに対する突破口となるのではないだろうか。

 松下氏はIT企業の創業者として、インターネットビジネスに対する洞察が深く、とくにテクノロジーとの向き合い方について、その視点から学ぶことは多い。人は人の役に立ちたいという根本的な思いから、承認や賞賛に対して、喜びの気持ちが湧き上がるが、その気持ちが今ではサービスの消費喚起や利用喚起など、私たちが誰かの都合に合わせて動かされることに使われている。たとえばSNSの「いいね!」の仕組みもその1つだ。目先の満足のために心から納得する生き方を追求できる機会を見失わないよう、日々の生活のなかで冷静に判断することが必要だろう。

 より良く生きられる社会を目指す上で、よい仕事とは、人々が豊かに過ごす社会をつくるためのものだ。物質的に豊かな暮らしができる資本主義社会では、私たちがどのような世界を望み、どのような者として人生を送りたいのかという指針をもって仕事をすることが欠かせない。たとえば、テクノロジーの進歩は社会を豊かにするが、私たちがどのような意思をもってテクノロジーを使うかによって、人々が暮らしやすい社会を実現できるかが大きく左右される。「豊かな社会とは何か」を問い直し、時代の流れを人々が望む方向に動かそうとする意識が大切なのだ。

 1人ひとりが心の底から望む選択をして行動に移すことが、より良い社会への道に通じている。

【石井 ゆかり】

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