【新潟県知事選】「悪夢の10年」をどう取り戻すか
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与野党激突の新潟県知事選(5月29日投開票)は、「原発を最大限活用する」と明言した岸田政権(首相)などが支援する花角英世知事に対して、原発攻撃のリスクを直視する再稼働反対の片桐奈保美候補(共産・社民・れいわ推薦)が挑む構図だが、「経済破壊(音痴)の自民党言いなり知事 イエスかノーか」も争点の1つになっていた。
ラストサンデーの5月22日、片桐候補の応援演説で新潟入りした「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は、「日本を破綻国家並みの低成長国にしたのは自民党」「経済を壊した自民党」と一刀両断にしたうえで、国の言いなりの花角知事県政からの脱却(女性知事誕生)を熱っぽく訴えたのだ。
「いま花角さん、国の言いなり知事ですが、国の言いなりになった結果、日本はどうなっているのか。この20年間で、世界のなかで成長率が低い順番から並べると、最悪がリビア、2番目がシリア、その次がソマリア。4番目が日本なのです。もう破綻国家に並ぶくらい日本は経済がダメなのです。『経済の自民党』どころか、『経済を壊した自民党』なわけです。そして、雇用も壊しているわけです。これを取り返すには、まさに地域からつくり上げていく必要があるわけです」。
このとき、脱原発(自然エネルギー転換)派の論客で元改革派経産官僚の古賀茂明氏らとともに橋下徹・元大阪市長のブレーンでもあった飯田氏が着ていたのが、「原発不良」という色文字が入った白いTシャツだった。街宣中に胸に手をやって「原発不良」の文字を聴衆に示しつつ、その由来を飯田氏は説明していった。
「ドイツの南側の端にあるシェーナウというところで、学校の先生とお医者さんの2人の夫婦が『原発は嫌だ』と。チェルノブイリの原発(事故)の後で、当時の25年前のドイツは原発に反対するのは不良だったわけです。そこから住民投票を経てシェーナウ電力を立ち上げて、2000年にドイツは自然エネルギーがわずか4%だったのですが、日本は水力がほとんどですが、当時9%ありました。
そして10年には日本は引き続き9%ですが、ドイツは4%が20%になって、昨年ドイツは(自然エネルギーが)40%。今回のウクライナ危機で、35年には自然エネルギーを100%にすると。原発は今年中になくなるわけです。その最初の一歩を歩んだのが、この『原発不良』のシェーナウだったわけですが、これをこの新潟から日本で始めていくことができるのです。そして、地域から新しい経済をつくっていく」。
新潟から日本の政治を変えようと飯田氏が訴えたのは、この時が初めてではない。原発ゼロを訴えて全国行脚中の小泉純一郎元首相ら脱原発の論客が勢ぞろいした「3.11から11年 どうする原発再稼働!」と銘打った4月10日の集会でも、世界の潮流から取り残された古き自民党政治からの転換を呼びかけていたのだ。
「いま人類史的な大転換が起きている。10年前に太陽光は0.1%、風力は1%しか供給していなかったが、昨年風力は6.4%、太陽光は4%で合わせて10%。この10年間で10倍になったのです。あと10年間で100%にはならないにしろ数十%にはなる。(太陽光と風力のコストダウンが進んで)日本とロシアを除くほとんどの国で太陽光が1番安くて、風力が2番目に安いエネルギー源になったのです。それは政治がきちんとした市場をつくったからです。
今の自民党政権はむしろ(再生可能エネルギーの)市場を潰す方向にきているので、いま日本の太陽光と風力の市場はもう風前の灯のようになっている。これを地域に根差したかたちの太陽光、たとえば、住宅の屋根とか農業を続けながらやる(農地での)太陽光、そして陸地から遠い洋上風力というかたちで、できるだけ地域の方が参加するかたちでやっていくことで、新潟で使っているエネルギーの100倍ぐらいがこの新潟ででき得るのです。
世界的な大転換から日本だけが取り残されているのを変えるには、ボトムアップで変えないといけない。原発再稼働をしても結局、電気もお金も東京に行くだけです。上からの変化では変わらないのです。片桐さんが知事になって、世界の遅れを取り戻しながら、日本ひいては世界のトップランナーのようなことをやっていく。世界の文明史的大転換を新潟がつかんで、自分たちのエネルギーと自分たちの経済をつくり上げていく。新潟と日本の未来を変える重要な選挙になると思います」(飯田氏)。
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れいわがカジノをめぐり維新批判4月10日の集会での訴えを飯田氏はラストサンデーにも繰り返したかたちだが、この日は新たに人づくりの大切さを次のように訴えた。
「それは、新潟の長岡の『米百俵』の精神で、人々にきちんと投資とか教育とか、地域から人々を育てていくことが最大の未来をつくる力になる。昔、『デンマルク国』と内村鑑三が紹介したデンマルクの国でも、昔のプロイセン戦争(普仏戦争)に負けた後、一番南の豊かなユトランド半島の根っこの豊かなところを奪われた後、『外なる有限ではなくて、内なる無限を目指そう』と。
内なる無限とは何かというと、3つあって、1つは荒れ果てた土地を耕して農業を再生しようと。2つ目が無限の自然エネルギーなのだ。そして、3つ目は人の力が無限にあると言って『フォルケホイスコーレ』という、すべての国民を生涯にわたって教育するということがそこから始まっているわけです。内なる無限をぜひ、この新潟から始めていただけるリーダーこそ、まさに片桐さんで、やはり女性のリーダーこそが将来を育んでいく。そういう転換をしないと、日本はもうほとんど破綻国家になりつつありますので、それを新潟からぜひ再生してください。応援しています」。
新潟県知事選の争点が明確になっていく。それは、日本を破綻国家寸前にした自民党の言いなりの現職知事を選ぶのか、自然エネルギーや農業など地域の潜在力で経済成長を目指す新人を選ぶのか、ということだ。花角知事が新潟を疲弊させてきたことについては、前新潟県知事の米山隆一衆院議員が告示日にこう訴えていた。
「向こうは『現職だ』『国とつながりがある』『安定している』と言いますよ。でも、この4年間、新潟は発展しましたか。県民経済、県民所得は低下していますよ。コロナはあったけれども、ほかの県よりも低下している。『国のいう通りにしたら発展する』なんて嘘なのです。片桐さん、全力で新潟を発展させてくれます。『(株)イシカワ』をあれだけ発展させたのだから。これから新潟県は、全国各県に進出するくらいの勢いでガンガン発展しますから。ぜひ、片桐さんへのご支援、重ねてお願いいたします」。
ちなみに飯田氏は、脱原発を訴えていたころの安倍昭恵夫人が信奉、再登板前の安倍元首相へのレクチャーを依頼されたこともあった。安倍元首相は、自然エネルギーへの転換が進む世界の潮流について飯田氏のレクを受けたものの、聞き流すだけだった。
2012年12月、「原子力ムラ内閣」とも呼ばれた第2次安倍政権が誕生、民主党政権時代の方針を変更し、原発推進へと舵を切った。この方針は菅政権や岸田政権にも引き継がれた結果、世界でワースト4の低成長国に落ちぶれてしまったのだ。
その「悪夢の10年間(第2次安倍政権・菅政権・岸田政権)」を取り戻すには、新しい女性知事が誕生し、地域から古き自民党政治を変えていくしかないと飯田氏は訴えたといえる。日本の政治を地域から変える転換点となる可能性のある新潟県知事選から目が離せない。
【ジャーナリスト/横田 一】
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