円安と日本経済~アザーニュース(前)
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Net I・B-Newsでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONALのニュースを紹介している。DEVNET(本部:日本)はECOSOC(国連経済社会理事会)認証カテゴリー1に位置付けられている(一社)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約14,000名に、英語など10言語でニュースを配信している。今回は20日掲載の記事を紹介する。
円安
外国為替市場で円安・ドル高が急速に進んでいる。2022年3月から5月初めにかけてのわずか2カ月間で円はドルに対し16円も下落、5月9日に約20年ぶりの水準となる1ドル=131円台を記録した。日本では日銀が大規模な金融緩和を続け、企業の借り入れや住宅ローン金利の指標となる長期金利を低く抑え込んでいる。一方の米国は歴史的なインフレを抑え込むために金融引き締めにかじを切っており、金利上昇が続く。このため日米の金利差が拡大し、より金利の高いドルで資産運用をしようと円を売ってドルを買う動きが強まっている。海外に製品を輸出する企業にとって、円安は収益増につながる。しかし、ウクライナ情勢などを背景にエネルギーや食料品の価格が高騰するなか、急速な円安が輸入コストをさらに押し上げて家計や輸入企業の収益を圧迫しかねない。鈴木俊一財務相は「輸入品高騰を価格に十分転嫁できない環境は『悪い円安』といえるのではないか」と警戒感を示した。
円安は日本経済にとってプラスなのか?
日銀の黒田総裁は、日本経済にとって「全体として円安はプラス」との考えで、大規模緩和を続ける構えを示している。この前提に疑義をもつならば、何らかの緩和修正が必要になる。4月28日の会見でも、黒田総裁は「過度な変動はマイナスに作用する」と述べ、すでに『悪い円安』論を唱えていた鈴木財務相に同調するようでもあった。本当に日銀が何らかの手を講じなければならなくなった場合、何が想定されるであろうか?(1)金融政策の先行き指針を引き締める方向へ修正する、(2)長短金利操作における誘導目標金利を10年から5年に短期化する、など小手先の解決策が論点になりがちである。しかし、「次の一手」に対する催促相場を確実に断ち切るためには、一気にプラス金利を目指して利上げを行うしかないのではないだろうか。そうしてこそ、日銀の姿勢が「根本的に変わった」という可能性を感じさせることができるはずである。しかし、そうなれば一般国民の家計にとって重要な住宅ローン金利なども上がり、政治的には逆風となってしまう。参議院選挙を前にした岸田政権としては、とてもこれを容認できないだろう。従って、選挙の終わる7月末までは現状が続く可能性が高い。円安が続くこのような状況下で、日本経済の為にできることはないのだろうか?
訪日外国人旅行者の解禁
4月27日の内閣府における経済財政諮問会議では、民間議員から新型コロナウイルスの水際対策の一環として認められていない「観光目的の入国」の早期再開が提言された。5月初頭の訪英でも岸田首相は観光目的の外国人入国を6月にも認める方針を示唆している。現在の経常黒字縮小の背景は、資源価格の高騰を受けた貿易赤字拡大とインバウンド需要消滅を受けた旅行収支黒字の消滅がある。インバウンド解禁とともに旅行収支黒字が戻れば、微力だとしても需給面からの円売り圧力を緩和する手立てにはなる。いや、ここにきて目減りしている経常黒字を思えば、もはや旅行収支黒字は外貨獲得のための重要なツールである。岸田首相も「旺盛な海外需要の取り込みは経済の活力を高め、長期的な成長力を高めるものだ」と表明し、追随する姿勢を見せている。「海外からの旅行者が入ってくると感染が再拡大する」と不安に思う声が挙がるかもしれない。しかし、今や新規感染者数にこだわって、実体経済を締め上げるような政策を続けているのは中国と日本くらいである。このままでは、完全に世界の趨勢から取り残されてしまう。連休期間中には多くの日本人が海外旅行へ出発して帰国しているのにもかかわらず、その逆が駄目という制限を続けることに何の意味があるのであろうか。円安による物価上昇の不安ばかりが懸念されているなかで、それを逆手に取ってポジティブな動きをつくり出していく取り組みを考えるべきではないだろうか。残念な話かもしれないが、日本人の実質所得環境が悪化している以上、外国人の財布に頼るのは当然のことだ。インバウンド需要を当て込んだ外貨獲得は日本に残された数少ない景気回復策の切り札なのだ。まずは、入国者数の上限を撤廃することが必要である。
(つづく)
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