新造船が投入された名門大洋フェリー(後)
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運輸評論家 堀内 重人
就航中の船舶
フェリーの建造には、1隻あたり80億円程度の費用を要するため、自社単独では難しいのが実情である。名門大洋フェリーが所有する船舶は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から、「船舶共有建造制度」という資金面を含めた支援を受けて導入されている。それゆえ、全船舶を鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共有し、建造は三菱重工の下関造船所で行われた。これは、日本のメーカーであれば大型船の建造実績があるためだ。
現在は3代目の「フェリーきょうと」「フェリーふくおか」の就航にともなって引退しているが、2000年の「交通 バリアフリー法」の施行により、02年に就航した「フェリーきょうとII」「フェリーふくおか2」は、船内にエレベーターやエスカレーターなどを完備するだけでなく、船室も含めてバリアフリー対応になった。
なかでも2等洋室は、従来の大部屋に2段式の寝台が配置され、上段の寝台へ行く場合、梯子を昇る構造から階段を昇る構造に変更された。上段と下段の寝台を互い違いに配置している。カプセルホテルに似たようなかたちをしており、上段でも下段でもほかの寝台の客を気にせずに利用できる。
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「ななつ星」グレードアップ(前)9周年を迎え現在、1便には「フェリーおおさか」「フェリーきたきゅうしゅう」が就航しているが、これらの船舶は15年に就航した比較的新しい船である。総トン数は1万4,920t、全長183m、幅27m。旅客定員は713人で、車両積載数は12mの長さのトラックが146台、乗用車が105台となっている。
2便に使用される3代目の「フェリーきょうと」「フェリーふくおか」は、総トン数が1万5,400t、全長195m、幅27.8mで、旅客定員が675人。旅客定員が減少したのは、個室を増やしたことが影響している。車両積載数は12mの長さのトラックが162台、乗用車が140台で、全長が伸びた分、トラックだけでなく乗用車の積載台数も増加している。
2便はビジネスや観光にも使いやすいダイヤであるため、自家用車で九州などを周遊する家族やグループのニーズにも対応している。
「フェリーふくおか」を利用した感想
「フェリーふくおか」の就航と同時期に、宮崎カーフェリーでも新造船「フェリー たかちほ」が就航したため、どうしても両社を比較してしまう。名門大洋フェリーは瀬戸内海という内海を航行するのに対し、宮崎カーフェリーは室戸岬沖などを航行して宮崎へ向かうため、こちらは外海を航行する。このため、宮崎カーフェリーの方が揺れやすく、1人用個室であっても座席が動かないように固定されているだけでなく、テーブルにもドリンクホルダーが備わっていた。
一方の名門大洋フェリーは、穏やかな瀬戸内海を航行するため、揺れも少なく、そのような対策は取られていなかった。
航行する環境の違いは風呂場にも表れている。宮崎カーフェリーの場合は揺れて浴槽からお湯がこぼれることを防ぐため、湯船が浅くなっているのに対し、名門大洋フェリーでは深さがあることから、肩まで浸かることができた。
また、宮崎カーフェリーと名門大洋フェリーの経営体力の差が出たと思うが、宮崎カーフェリーはフェリーターミナルの使用料が割安な神戸港を発着するのに対し、名門大洋フェリーは大阪南港を発着するため、大阪メトロのフェリーターミナル駅と直結していてアクセスしやすい。
一方の九州側でも、宮崎カーフェリーはフェリーターミナルから宮崎駅まで、宮崎交通の路線バスに乗車しなければならないのに対し、名門大洋フェリーは小倉駅や門司駅まで、無料のシャトルバスが運行されていて便利である。
「フェリーふくおか」であるが、従来の「フェリーきたきゅうしゅうII」などよりも、エントランスホールなどで、よりリゾート気分が演出されている。1人用の個室も、「フェリーきたきゅうしゅうII」などと比べ、エアコンが天井に内蔵され、はみ出しがなくなり、室内がすっきりした感じに仕上がっている(写真4)。さらに、バリアフリー対応の客室が増えたこともあり、通路が広くなるなどの改良が実施されている(写真5)。
名門大洋フェリーは大阪~新門司間で阪九フェリーと競争しており、両社とも小倉駅・門司駅~新門司港間に無料の送迎バスを運行している(写真6)。今後も切磋琢磨して、高品質なサービスの提供が期待される。
(了)
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