2024年09月15日( 日 )

日大再建は「稀代の大作家」に託される 次期理事長に林真理子氏

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作家 イメージ    日本大学は3日、次期理事長に直木賞作家・林真理子氏(68)が就任することを明らかにした。林氏は1976年3月に同学の芸術学部文芸学科を卒業したOGの1人。まずは、「火中の栗を拾う」林氏に敬意を表したい。しかし、林氏が同学再建を成し遂げることはないだろう。

 同学が発表した林氏の次期理事長選考理由は、

1:林氏の「大学の利益は学生・生徒のためのものであり、一般企業における営利追求とは一線を画すものである。」との信念
2:「何よりも学生と生徒たちの幸せのために、今、思い切った改革を実行することが必要。日本大学の失墜したイメージを先ずは回復し、学生・生徒・卒業生・教職員が誇れる大学に再生していく必要がある。」との決意表明

 加えて「これまで林氏が我が国文学界の発展に寄与しながら、女性初の(公社)日本文藝家協会理事長に就任(2020年5月)するなど、リーダシップを発揮されている」などである。

 同学では前理事長・田中英寿氏が、18年と20年の所得を隠し、所得税5,300万円を脱税したとして所得税法違反の疑いで東京地方検察庁特捜部に逮捕された(22年3月29日に懲役1年(執行猶予3年)と罰金1,300万円(求刑懲役1年、罰金1,600万円)の有罪判決が下り、4月13日に判決が確定)。

 08年から21年まで同学理事長を歴任するなど長年同学の権力を握る「日大のドン」として君臨するも、脱税を含め、田中氏をめぐる不祥事や疑惑が相次いだことにより、大学運営のガバナンス崩壊が表面化。その影響で22年1月26日に日本私立学校振興・共済事業団は、約90億円の私学助成金の全額不交付を決定した。過去同学は、18年度にもアメリカンフットボール部の危険タックル事件や医学部の不正入試などで補助金を35%カットされていたが、今回は全額不交付という厳しい通告を受けた。

 過去の不祥事および疑惑を一掃させ、信頼回復のために力を注ぐことを宣言する林氏。

 林氏は「多くの教職員との対話を重視し、学生・生徒たちも含めて、多くの人たちから意見を聞いて風通しの良い環境を構築していく。大きな組織の経営や運営は、独断で進められるべきではなく、コミュニケーション重視のマネジメントを実行する。“専横的体制”や、第三者委員会の報告書にある“組織の同質性、上命下服の体質”といった風土から脱却させる」と表明しており、これまでの同学体制・体質の抜本的改善を決意している。また、作家としての仕事を一部整理して理事長の職責を全うする意向も示した。

 7月1日に同学理事長に就任する林氏への期待は大きい。しかし、冒頭に記した結果となることは目に見えている。2期8年と限られた期間のなかで、同学の再建を託すのは荷が重い。1番の理由は、林氏が同学OGであるからだ。

 「愛校心があるから、最高ではないか」─と考える人も多いだろう。確かに愛校心は大切である。(人にもよるが)とくに大学への愛校心は、小・中・高校よりもさらに強く、「自分の後輩のために、一肌脱いでやろう」となるだろう。

 だが人間は業が深く、一度権力を握ると「もっと欲しい」と欲望がエスカレートする。(林氏の人となりを知らないが)OB・OGという属性が理事長の権力と重なって独占欲が先行してしまう大学運営の事例を頻繁に耳にする。

 本来なら、OB・OGではなく、同学にまったく縁のない人材が理事長に就任し、ビジネスライクに再建に専念することが理想だったのではないか。個人的には外国人のリーダーが大鉈を振るう大胆な再建を見たかった。

 この記事が4年、8年後に冷笑されることを、心より願っている。

【河原 清明】 

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