【清々しい品格(5)】社員のため、業界のために没頭
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大高建設(株) 会長
大木 孝朋 氏別の意味での清々しい人生を全うした東正信氏
先達て亡くなった東正信氏(東建設元代表・追悼文参照)は、会社を破産申請した悔しさ(1997年10月自己破産申請)を胸に秘めて生きながらえてきた。しかし、倒産後の25年間、好きな麻雀を打ちまくり、加えて、人が集まってきたことには満足していたであろう。
晩年の5年間は孤独を味わうことになったとしても、わがまま勝手に88歳手前までの寿命を全うし、人生に対して故人自身は清々しい気分であの世へ旅立って逝ったと思われる。
まずは従業員ありき
大高建設・大木孝朋会長は前述の東正信氏(1934年生まれ)よりも1歳年上の89歳である。会社を75年3月に設立した時が42歳であった。満を持しての独立となった。所属していた岡崎工業は経営者の放漫経営が原因で行き詰り、新日本製鉄の傘下に入った。この苦い経験が同氏の経営の根幹となった。「会社を潰したら社員たちが流浪民になり下がり、不幸の運命を背負うことになる。だからこそ、経営者は絶対に会社を潰してはいけない」という信念を秘めた。
設立当初から大木会長はさまざまな経営者の勉強会に携わった。その助言者の1人が、富士経営(福岡市中央区)の崎田社長である。勉強で得た結論は「会社倒産を回避するには借金をしないこと」「儲けたならば、まず社員への利益配分を優先すること」であり、この2大政策を確立させた。サラリーマン時代の苦い体験から「社員重視、利益還元」を優先し、それを貫徹したのは、同氏の哲学に基づいたものであろう。
幹部たちが述べる大木会長の評価は決しておべっかではない。徳永副社長、宮崎営業本部長ともに、「会長には私欲がない。社員たちの待遇のことを真剣に考えておられる」と絶賛する。彼らからも「会社の幹部としてすばらしい会社づくりに全力投入する」という意気込みが感じられる。私物化する意識が生まれない強固な風土が確立されているのである。この2人からも、取材で清々しい感触を得たことには驚いた。
業界のご意見番を引退
昔は建設業界のご意見番が数多く存在していたが、非常に稀有となった。その役割を担ってきたのが大木会長であった。心底、業界健全化に献身する魂が本物であるから、誰もが同氏に私淑するようになる。今回の公職(最高顧問役)を引退するにあたって、当然ながら惜しんで反対する声もあった。「もう90歳手前の老人が徘徊してどうなるか!」と喝破して役職からすべて退任した。
しかし、ご本人はジ・エンドの道を選択しなかった。大木会長が築き上げてきた経営道を伝承することを決めた。業界仲間の企業をリストアップする。指名された企業は、社長を筆頭に全工程の社員たち全員が教育カリキュラムを受けることになる。日々損益決算の概念などについてまったく無知な企業が大半である。
「今から必ず建設業界には逆風が吹いてくる。用意周到に準備して仲間の倒産を防ぐことが、私の残された使命だ」と力説する大木会長には誠に感服する。
法人名
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