2024年09月15日( 日 )

「新しい資本主義」GX投資は今後10年間で150兆円規模

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賃金引き上げを支援

「新しい資本主義」 イメージ    政権発足以来、最高となる内閣支持率(66%)を背景に、岸田内閣は5月31日、「新しい資本主義」の実現に向けたグランドデザインとその実行計画案を公表した。新しい資本主義は岸田内閣の経済政策で、実行計画はその具体策となり、6月7日に閣議決定される見通しだ。

 計画的な重点投資として示されたのは、(1)人への投資と分配、(2)科学技術・イノベーションへの重点的投資、(3)スタートアップの起業加速とオープンイノベーションの推進、(4)グリーン・トランスフォーメーション(GX)とデジタル・トランスフォーメーションへの投資の4分野で、各分野ともに「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとしている。

 既存の中小企業に大きく影響する項目としては、積極的な賃金引き上げを支援する環境を整備するため、賃上げ税制について税額控除率が引き上げられる(中小企業:25%→40%)ほか、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を今年度内に取りまとめることや、事業再構築のための私的整理法制の整備などが盛り込まれている。

住宅・建築物の省エネ基準への適合を義務化

 脱炭素に向けた国際公約を達成するため、政府は今後10年間に官民協調で150兆円規模のGX投資の実現を掲げた。このため、政府は規制、市場設計、政府支援、金融枠組み、インフラ整備などを包括したGX投資のための10年ロードマップを示し、産業セクターごとの具体例にまで落とし込んだ。たとえば、住宅・建築物セクターでは2025年度までに省エネ基準への適合を義務化するとともに、先進的な省エネ投資を支援することで、30年度以降に新築される住宅・建築物についてZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準の省エネ性能が確保されることを目指すほか、土地や建物に関する固有の識別番号(不動産ID)の活用を促進することに言及している。

 個別分野で注目すべき点は、金融市場の整備として海外の金融業者を日本の金融資本市場に呼び込んでの国際金融センターの実現について、運用能力の高い海外金融事業者や高度金融人材の誘致が図られること。昨年の銀行法の改正と相まって、銀行などの金融機関が管理する顧客の非開示情報を、外国法人や上場企業に対しては同意なく共有することが可 能となったため、金融市場における新たな潮流が創造されることになる。

【児玉 崇】

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