2024年12月25日( 水 )

三井住友がSBIに出資 SBI証券とSMBC日興証券が統合か?(後)

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 メガバンクの三井住友フィナンシャルグループ(FG)と、個人投資家を中心とするネット証券最大手のSBIホールディングス(HD)が手を組む。SBIは昨年、新生銀行を連結子会社にしたばかり。金融再編が進むなか、SBI証券とSMBC日興証券は統合するのか?

SBI新生銀行は「第4のメガバンク」の中央銀行になる

ネット証券 イメージ    金融界の風雲児、北尾吉孝社長が率いるSBIホールディングス(HD)が、三井住友の出資を受け入れた狙いは何か。子会社にした新生銀行を想定したものだろう。

 新生銀行は6月22日、東京都内で定時株主総会を開き、社名を「SBI新生銀行」に変更する議案について承認を得た。株主の3分の2以上が賛成した。金融庁の認可を経て得て、23年1月4日に変更する予定だ。

 新生銀は昨年、TOB(株式公開買い付け)を通じ、SBIHDの連結子会社となった。新生銀は2月に臨時株主総会を開き、SBIが推薦した元金融庁長官の五味廣文氏が会長に、SBI副社長・川島克哉氏が社長に就いた。

 北尾氏は、かねてから地銀のネットワーク化を進める意向を示しており、複数の地銀と資本提携を行ってきた。だが、地域ごとにバラバラな地銀を取りまとめ、「第4のメガバンク」として機能させるにはどうしても中核銀行が必要となる。

 信用金庫には信金中央金庫(信金中金)という中央銀行があり、各信金が経営危機に陥った際のバッファとしての役割を担っている。JAバンクには農林中央金庫(農林中金)があり、各地のJAバンクから集めた資金をまとめて運用する巨大ファンドとしての機能をもつ。

 新生銀を「第4のメガバンク」の中央銀行とするための布石を打った。

新生銀の公的資金の返済は非上場化するシナリオ

 最大の課題は公的資金の完済だ。新生銀は前身の旧(株)日本長期信用銀行に政府から注入された公的資金のうち3,500億円を返済できていない。返済には、国が保有する新生銀行株を売ってお金を回収する必要があるが、追加の国民負担を生じさせないためには新生銀行の株価を現在の3倍以上の7,450円まで引き上げなければならない。

 北尾氏は、昨年12月22日の記者会見で、「7,450円と3,500億円をいつまでも結びつけて考えるのはおかしい」と指摘し、この返済方法を否定。そのうえで、新たな返済方法について、「非上場化の後、新優先株を発行する手もある」と話し、今後、金融庁などとも協議し、詳細を検討していく考えを示した。

 SBIが新生銀に提示していた公的資金返済案は、SBIが新生銀株を最大48%まで取得した後、新生銀が自社株買いを実施し、市場場価格で一般株主から株式を取得。SBIと国の議決権比率が合計9割となったところで、残る少数株主の株式を強制的に買い取ったうえで、国の保有株を公的資金の返済な価格で買い戻すというもの。

 新生銀は「後から高い価格で国の保有株を買い取ることを想定しているのであれば、株主平等の原則に反する」として提案を拒否した。

 北尾氏は、公的資金の返済方法について、「新優先株の発行」を持ち出した。北尾氏は、この手法を、政府の機関として新生銀行株を持つ預金保険機構の三井秀範理事長の発言から思いついたという。

 新生銀を非上場化したうえで公的資金を返済する。北尾氏が想定している選択肢だ。一般株主から株式を買い取るには、資金が必要。三井住友が幹事行として銀行団をとりまとめてもらい、融資を引き出す算段だ。SBIが三井住友FGの出資を受け入れた最大の理由だろう。

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 SBI証券とSMBC日興の統合を主眼に置く三井住友と、新生銀の公的資金の返済を想定して提携に動いたSBIは、同床異夢といえる面もある。はたして、満願成就といくのだろうか。

(了)

【森村 和男】

(前)

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