2024年11月23日( 土 )

お家騒動から3年目のはるやまHD AOKIの軍門に下るのか?(前)

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 紳士服大手はるやまホールディングス(HD)のお家騒動は第3ラウンドに入った。6月29日、岡山市内の本社で開かれた定時株主総会で、創業家出身の治山正史会長らの取締役に再任する会社側提案は可決した。正史氏の退任を求める姉の岩渕典子氏の株主提案は否決された。「大塚家具の紳士服版」と話題になったはるやまの”骨肉の争い”。その行方を占ってみよう。

創業者の父と姉が退任を迫る長男は今回も辛勝

お家騒動 イメージ    (株)はるやまホールディングス(HD)は7月1日、中国財務局に臨時報告書を提出し、株主総会における議決権行使の結果を開示した。

 会社側が株主総会で提案したのは、治山正史会長(57)や同業の(株)AOKIホールディングス(HD)出身の中村宏明社長(58)ら取締役3人の再任と1人の新任。

 一方、正史氏の実姉の岩渕典子氏(59)は、正史氏や中村社長を取締役候補から外し、「社内の実情を知った者を取締役として、改革すべきだ」として、HDの子会社、(株)はるやま商事元専務の野村耕市氏(73)を含む4人の人事を株主提案した。再任反対の理由について「(新型コロナウイルスの感染拡大で)創業以来の最大の危機だ。正史氏に経営をさせていたら立ち直れない」としている。

 典子氏が株主総会で会社の取締役人事案に反対するのは3度目だが、今回初めて独自の人事案を提案。経営権奪取に踏み込んだ。

 臨時報告書によると、正史氏の取締役選任議案の賛成率は58.19%。20年が51.59%、21年が57.55%で、ほとんど変わらない。中村社長の賛成率は63.90%だ。

 典子氏の株式提案は、野村耕市氏の賛成比率は37.15%。他も同様でいずれも否決された。20年、21年も、典子氏や創業者で父の正次氏(90)らが、正史氏の経営では不振から抜け出せないなどとして取締役再任に反対していた。
 両者の主張は平行線をたどっているが、3年目もかろうじて、正史氏が逃げ切った。

“骨肉の争い”の原因は何か?

 筆者はNet IB-News(21年7月20日~22日付)に「紳士服はるやまHDの”骨肉の争い”~父と長女が長男の社長に『レッドカード』」のタイトルで寄稿した。

 はるやまHDは1955年に前身の洋服店を治山正次氏が創業した。創業者・治山正次氏=長女・岩渕典子氏と、長男の治山正史氏の”骨肉の争い”がなぜ、起きたのか。

 外部からうかがいしれない内幕を月刊情報誌『ZAITEN』(2021年7月号)が『はるやま社長「不正疑惑の義弟」に1,500万円のコンサル料』のタイトルで報じた。

 こういった内容だ。大株主の実姉が、実弟の治山社長に「レッドカード」をつきつける一因となったのが、治山氏の妻の弟である山本剛士元執行役員だという。

 治山社長に重用された山本氏は19年に「取引先からの過剰接待や、その取引先と不明朗な決済が発生している」という匿名の内部告発を受けて自主退職した。だが、社内ではこの件に関して調査がなされなかったどころか、調査を求めた社員が相次いで左遷された。そうした異常事態に姉が創業家を代表して立ち上がったのだ

 ZAITENは、新たな疑惑を報じている。自主退職した山本氏が立ち上げたコンサル会社と業務委託を結び、20年度に1,500万円を支払ったという。「違反行為で自主退職した人間に、コンサル料を支払うのはまともではない」と社員が告発している。

 窮地に立たされた正史氏は、事業会社(株)AOKI社長、持株会社(株)AOKIHD副社長を務めた中村宏明氏を、はるやまHD社長に招いた。これで危機を乗り切った。

(つづく)

【森村 和男】

(後)

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