お家騒動から3年目のはるやまHD AOKIの軍門に下るのか?(後)
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紳士服大手はるやまホールディングス(HD)のお家騒動は第3ラウンドに入った。6月29日、岡山市内の本社で開かれた定時株主総会で、創業家出身の治山正史会長らの取締役に再任する会社側提案は可決した。正史氏の退任を求める姉の岩渕典子氏の株主提案は否決された。「大塚家具の紳士服版」と話題になったはるやまの”骨肉の争い”。その行方を占ってみよう。
紳士服大手4社のなかで回復が鈍い
そして今回、典子氏は経営陣を一掃し、番頭だった野村耕市氏を擁立して、経営権の奪取に踏み込んだ。「創業以来の最大の危機」として、存亡の瀬戸際に立たされているからだ。
紳士服業界は近年、仕事着のカジュアル化などでスーツの需要が縮小し、苦しい状況が続いていた。そこにコロナ禍が打撃となった。成人式や就活といったイベントが集中する1~3月がスーツ業界の書き入れ時だが、コロナ禍で客足が鈍った。紳士服大手4社は21年3月期(コナカは20年9月期)連結決算で、全社が最終赤字に陥った。
22年3月期決算では、売上高首位の青山商事(株)と2位のAOKIHDは黒字に転換した。3位の(株)コナカは21年9月期は増収を確保し、赤字幅が縮小した。各社は、コロナ禍が落ち着いて戻り始めた需要を取り込めた。
4位のはるやまHDは回復の波に乗り切れなかった。22年3月期の連結最終損益は78億円の赤字(前期は48億円の赤字)。従来予想で1億円の黒字回復を見込んでいたが、2期連続の赤字となった。危機感を募らせた典子氏が、経営陣総入れ替えの株主提案した理由だ。
はるやまHDの統合は不可避か
はるやまHDはどこに向かうのか。株式市場が想定しているのが、2006年に紳士服チェーン第7位だった(株)フタタ(福岡市)に対して、第2位のAOKIHDと、第4位のコナカの両社から完全子会社化が提案された争奪戦だ。
根底にあるのは、フタタの2代目社長の二田孝文社長と創業者・二田義松相談役の対立。
2代目社長は、同じ2代目仲間のコナカに身売りすることにした。だが、創業者は記者会見を開き「AOKIは革新的」としてAOKIへの売却をぶちあげた。創業者の二田相談役は、AOKIの青木拡憲社長が「40年来の友人」と呼ぶ間柄だ。フタタ争奪戦は、コナカが勝利。フタタを手に入れたコナカは業界3位に浮上した。はるやまHDのお家騒動を、フタタのM&Aと重ね合わせる向きは多い。2代目の正史氏はAOKIHDへの身売りを想定しているのではないか。1位の青山商事と2位のAOKIHDの差は縮まっており、AOKIHDがはるやまHDを手に入れれば、業界首位に躍り出ることができる。
創業者の正次氏らは正史氏のやることに反対。創業家側は、息子の正史氏に対抗して、保有株を青山商事、コナカ、あるいはファンドに売却するのではないか、との見方が囁かれている。
(株)大塚家具は父と娘の”骨肉の争い”の果てに、(株)ヤマダホールディングス傘下の(株)ヤマダデンキに吸収合併された。
はるやまHDの”骨肉の争い”は、これからが本番だ。
(了)
【森村 和男】
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