「つくる」から「まもる」へシフト 建設業界に必要不可欠な存在へ(前)
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(株)エムビーエス
代表取締役社長 山本 貴士 氏インフラなどの補強をはじめ、さまざまな建物に応用されている独自開発の施工技術「ホームメイキャップ」を全国的に展開する(株)エムビーエス。1993年1月に足場業として創業し、外壁リフォーム工事業にも業容を拡大。Q-Board・東証マザーズ(現・グロース)への上場など、さまざまな展開を見せてきた同社の代表取締役社長・山本貴士氏に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 緒方 克美)足場業からの始まり 塗装業界へ進出した理由
──設立までの経緯をお聞かせください。
山本貴士氏(以下、山本) 出身は山口県なのですが、創業前は横浜市にある外国車のディーラーで、車の品質管理を行っていました。山口を離れてしまった理由は、父が経営していた会社が連鎖倒産することになってしまったためで、夜逃げさながら関東に出てきました。最初に勤めた会社を1年半で退職したとき、私は20歳になっていたのですが、「社長になりたい」という夢を漠然ともっていて、山口に戻って起業しようと考えました。
そして、「まず5年間は自分にとって精神的にも肉体的にも大変な仕事をしよう」と考え、足場業の世界に足を踏み入れたのです。しばらくして、私と同い年、もしくは少し下の部下のような存在ができ始めたのですが、ともに事業を行っていくうちに「彼らと高みを目指したい」と思うようになり、この業界で会社を興すことを決め、1993年1月、足場業を目的に「プロジェクトビギ」を創業、97年6月に(有)アクアビギとして法人化しました。
──外壁リフォーム工事業に参入するきっかけは何だったのでしょうか。
山本 当社が本格的に外壁工事を始めたのは、98年2月でした。私が最初に塗装業界に進出しようと思ったのは、「行儀が悪い」「塗料を周りに飛散させないでほしい」などといった、お客さまから塗装業者へのクレームがとても多かったためでした。もし、すべて自分たちで作業を行うことができれば、お客さまの不満を解消できる方法で施工ができるかもしれない。足場を組んだり解体したりという作業はすでに当社のなかで行うことができていましたので、この流れに塗装工事も組み込み、一貫した作業体制を構築しようと思いました。
独自の技術開発により、他社との差異化を実現
──貴社の独自技術「ホームメイキャップ」はどのようなものでしょうか。
山本 「ホームメイキャップ」とは、美観の再生だけでなく、あらゆる多面的な環境への耐性も強化して、建物を長期間に保護するシステムです。無色透明で歴史的建造物などに適している「クリアコーティング加工」、美観再生のため一般住宅やアパートに適している「カラーコーティング加工」、クリア・カラーコーティング施工の技術を応用し、外溝・屋根コーティングや止水・防水工事などを行う「応用/特殊施工」、施工後もコンクリート表面が透けて見えることから橋梁・橋脚やトンネルなどの補修に適している「スケルトン防災コーティング施工」という当社独自の4つの施工技術で成り立っています。現在、当社の売上高構成比は90.7%がホームメイキャップ事業となっています。
最初に塗装工事を取り入れると決めたとき、一般的な塗装業者との差別化を図らないといけないという思いが自分のなかにありました。そこで最初に研究・開発したのが、「スケルトン防災コーティング」でした。しかしその当時は、「透明の塗料で外壁を補強するなんて何の意味があるんだ?」という反応で、なかなか受け入れられなかったのです。しかし、2010年3月に第二京阪道路が全線開通したときに風向きが変わりました。これから先、もし道路が劣化しコンクリートが落ちてくる事態となったとき、2次災害が起こりかねないから最初から補強しておこう、と。そこで目を付けられたのが、我々が開発した透明の塗料でした。長期的に見た際、インフラ維持のコストパフォーマンスを考えると、とても有用な施工です。まだまだ喧伝活動中ではありますが、世界で一番初めにこの技術を開発したのが当社であり、最も施工実績があることに誇りをもっています。
──ホームメイキャップ事業の強みを教えてください。
山本 ホームメイキャップの強みは大きく5つあります。1つ目は、優れた機能性のあるコーティング剤を使用して施工する点です。イギリスのLIQUID PLASTICS Limited(現・Sika Limited)と共同で開発した外壁補修材・コーティング剤を使用した施工を行うことができます。2つ目は、施工技術者の体系的な育成を行っている点です。独自の資格認定制度により、施工技術と接客マナーを兼ね備えた「ホームメイキャップマスター」を育成しています。3つ目は、ワンストップで完全責任施工を行う点です。複数の業者に依頼することが一般的な足場の設置・撤去から、左官、防水、塗装、シーリングを一貫して自社で行えるので大きく手間が省けます。4つ目は、パートナーとのアライアンスによる受注構造です。当社は全国の工務店やゼネコン、ハウスメーカーなどとパートナー契約を結んでいるので、お客さまへ直接訪問販売などは行わず、パートナーとの共同提案による受注構造を構築することができています。5つ目は、優れた防災機能をもつスケルトン防災コーティング施工です。あらゆるコンクリート構造物と施工環境に対応できる透明性・水蒸気透過性・耐火性・施工性を有することから、施工後も表面を目視で確認できるほか、問題箇所をピンポイントで修繕できる今までにない革新的な技術です。
──現在、建造物の価値を維持したり可視化したりする動きが推進されてきていますが、そのような時流は貴社にとって追い風となっているように感じますか。
山本 まだ数字として顕著に表れてはいませんが、その風潮を感じています。おそらくハウスメーカーも、新築がどんどん建つ時代でないことは感じているはずなので、次はメンテナンスなどのアフターフォローを万全にしつつ、資産価値を高めていく方向へ段階的にシフトすることになります。これまで1件あたり何千万円規模の取引をしていた大手メーカーが、数十万~数百万円規模の小口工事を受注することになるわけです。そうなると、その1つひとつを異なる地域の下請業者に頼むのは大きな手間がかかります。そこで当社のように事業を全国に展開し、1社で一貫してカバーできる仕組みを構築している企業の需要が増えていくのではと考えています。現在はまだ大手メーカーが組織的に動き出してはいませんが、その潮流が訪れる前に、当社としても地盤は整えておこうと動いているところです。
(つづく)
【文・構成:立野 夏海】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本 貴士
所在地:山口県宇部市西岐波1173-162
設 立:1997年6月
資本金:3億9,132万円
売上高:(22/5)40億3,013万円
URL:https://www.homemakeup.co.jp/
<プロフィール>
山本 貴士(やまもと・たかし)
1972年生まれ、山口県出身。18歳で横浜の外国車ディーラーに就職。1年半の勤務後、山口県に戻り、93年1月に足場業を目的に個人創業。97年6月有限会社として法人化。2001年7月に(株)エムビーエスへ組織変更し、現在に至る。法人名
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