【中国総領事】100年に一度の世界変革と中国の発展(3)
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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏1972年の日中国交正常化から、今年で50周年を迎える。変革期にある現在世界情勢について中国はどう認識しているか、今後どのような日中関係を望むのかについて、中国駐福岡総領事の律桂軍氏より「100年に一度の世界変革と中国の発展―新たな時代の中日関係構築に向けて」と題する記事を寄稿していただいたので掲載する。
新中国成立後の70年あまりで、GDPは1,496倍、1人あたりGDPは608.8倍に増加しました。また、改革開放後の約40年で、GDPは278.35倍、1人あたりGDPは189.65倍となり、経済の急成長という奇跡を成し遂げています。今、中国は世界第二位の経済規模をもち、世界第一の製造業大国、世界第一の貨物貿易国、世界第一の外貨準備国、かつ世界第二の外国直接投資先・投資元となっています。世界経済成長に対する中国経済成長の貢献度は、改革開放後の約40年の平均で約30パーセントに達します。
第2に、社会の長期的安定です。中国は改革、発展、安定を総合的かつ計画的に進めてきました。社会の安定のなかで改革発展を行い、また改革発展によって社会を安定させることで、さまざまなリスクを乗り越えました。改革開放後、金融危機を起こさず、世界や地域の金融危機にも適切に対処しています。また、7億7,000万人の農村貧困人口を貧困状態から脱出させ、絶対的貧困の撲滅という大きな任務を中国史上初めて達成し、人類の貧困脱却に多大な貢献をしたのです。
中国は2つの奇跡を成し遂げるなかで、日本に大きな発展のチャンスを提供し、日本も中国の改革開放と近代化に積極的に支持を提供しました。日本は中国に対して最も多くの公的資金協力を行ってきた国です。1979年以来40年近くにわたり、円借款のほか、無償援助や技術協力など、総額約3兆6,000億円にのぼる政府開発援助を行い、空港、港、鉄道などのインフラ整備や、環境保護、医療、教育、緑化、貧困対策などの分野に広く用いられてきました。このことに我々は感謝し、決して忘れることはありません。
(2)中国の2035年長期目標と、中日協力の新たなチャンス
中国共産党創立100周年を迎えた今、我々は「1つ目の100年の奮闘目標」を予定通り達成し、「小康社会」を完成させました。今世紀半ばに新中国成立100周年を迎えますが、それまでに「2つ目の100年の奮闘目標」を実現します。この期間を2つに分け、まず35年までに社会主義近代化を達成し、今世紀半ばまでに社会主義近代化強国になることを目指します。第14次5カ年計画(2021年~2025年)および2035年長期目標によれば、今後の中国の発展は、少なくとも以下の面で中日協力に新たなエネルギーを与え続けるでしょう。
第1に、量的な面です。35年までに中国は社会主義近代化を達成する予定であり、その時点で経済規模は20年の倍となる見込みです。1人あたりGDPは中等先進国のレベルに達し、中間所得層が大幅に拡大することで、巨大市場としてのスケールメリットがいっそう顕著になるでしょう。
第2に、質的な面です。中国はすでに質の高い発展の段階に移行しており、さらなる発展のための強みと条件を備えています。今後は、イノベーション、協調、グリーン、開放、共有という新たな理念を、発展のすべてのプロセスや分野に貫き、発展の方法を転換して、より質の高い発展を目指します。
第3に、発展の枠組みの面です。中国は国内の大循環を主体とし、国内と国際のダブル循環(「双循環」)を互いに促すという新たな枠組みを進め、内需拡大を基本戦略としながら消費を促進し、投資対象を広げていきます。
第4に、産業チェーンやサプライチェーンの面です。中国は現代的な産業システムをさらに発展させ、産業チェーンやサプライチェーンの現代化レベルを上げ、新しい産業を戦略的に発展させるとともに、デジタル化を急ぎ、経済システムの最適化を進めます。
第5に、「共同富裕」(共に豊かになる)の面です。中国はすべての人民が共に豊かになることを一層重視します。絶対的貧困の撲滅を土台として、貧困を脱した地域の開発を進め、農村を活性化します。また、地域間の調和のとれた発展と新しいかたちの都市化を進めることで、35年までに全人民の共同富裕に向けた実質的な進展がみられるようにします。
第6に、エコロジー文明の面です。中国は引き続き「美しい自然こそ宝の山である」という理念を掲げ、低炭素型産業の推進や環境の改善を続け、エコロジー文明を築き、経済や社会のグリーン・トランスフォーメーションを進めます。
第7に、科学技術の進歩の面です。中国はイノベーションを近代化の核心に据え、自主開発を国家発展の戦略的支えとし、イノベーションを原動力とする発展戦略を深め、科学技術強国への道を加速していきます。
第8に、対外開放の面です。中国は、より大きく、より広く、より深いレベルでの対外開放を続け、よりハイレベルな開放型経済の体制をつくり、「一帯一路」の質の高い発展を共に進め、国際協力を促進して、Win-Winの関係を実現します。
(つづく)
<プロフィール>
律 桂軍(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。▼関連記事
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