大林組の挑戦を機に改めて考える国産木材の状況
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スーパーゼネコンの(株)大林組(東京都港区、蓮輪賢治代表)が、オーストラリアで木造ハイブリッド構造の建築物としては世界一の高さとなる「アトラシアン・セントラル新築工事(39階建てで、7階以上がS造と木造のハイブリッド構造となる)」を受注したことが話題となった。
このニュースの影響もあり、25日の大林組の株価は続伸。注目度の高さがうかがい知れるが、大林組は国内においても、今年5月に日本初となる高層純木造耐火建築物「Port Plus®」を完成させている。
次世代型研修施設でもあるPort Plus®は、柱・梁・床・壁すべてを木造で構成した純木造ビル。1,990m3の木材が使用されており、鉄骨造と比べて、約1,700t(約40%)のCO2削減効果があるとされている。
SDGs(持続可能な開発目標)に取り組むことがスタンダードとなるなか、大林組に限らず、循環型資源である木材利用の拡大・促進を目指す企業は今後増えていくことが予想される。
福岡県においても、家具の産地大川市を拠点とする家具の総合商社(株)関家具が、木の良さを再確認してもらおうと、木を使ったおもちゃづくりなどを通じた「木育(もくいく)」を行っている。
また、東京海上ホールディングス(株)は、国産木材を使用し、木の使用量が世界最大規模となる高さ100mの「木の本店ビル」を建設することを発表している(施工は、竹中工務店、大林組、清水建設、鹿島建設、大成建設、戸田建設によるJVが担当する)。SDGsをきっかけにして、木に対する注目度が高まっていることは間違いないだろう。
しかし、ウッドショックで明らかになったように、国産材を取り巻く環境は厳しさを増している。林業従事者数の減少傾向に歯止めがかからないほか、後継者不在による所有者不明山林の増加も課題となっており、即効性のある解決策はないのが現状だ。
東日本大震災以降は、原発に代わるエネルギーとして木質バイオマス燃料が注目されたことで、企業が森林を購入するケースも増えた。その一方で植生を残す「保持林業」の視点が欠けた皆伐が横行し、九州ではハゲ山状態になった森林が増えたという声も少なくない。
国産木材を生かした建築物や取り組みが増えることで、林業従事者が生計を立てやすい労働環境の形成や、土砂災害の発生につながる放置林の縮小にまで意識が向き、森林・林業・木材産業にまで「利の循環」が生まれることが理想だ。その実現のためにも、各企業には木材利用が単なる話題づくりで終わってしまわないよう、持続的な活動が求められる。
【代 源太朗】
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