【宮田学園(3)】地裁が留学生の受け入れを認める
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留学生への人権侵害行為により出入国在留管理庁から留学生受入認可を抹消する処分を受けていた(学)宮田学園・西日本国際教育学院(福岡市南区)に対し、福岡地裁は9月30日、同処分の効力を停止し、留学生の受け入れを認める決定を行った。
9月7日に入出国在留管理庁が下した処分は5年間留学生の受け入れを停止する効力を持つものだった。宮田学園は9月9日、この処分は違法であるとして取り消しを求め、処分の効力を直ちに止める執行停止の申し立てを福岡地裁に訴えていた。
この裁判を担当した福岡地裁の林史高裁判長は「組織的な人権侵害が行われていると認められる資料がない」と指摘し、「処分によって学院側には多大な経済的損害が生じ、事後的な回復は難しいとして、緊急に救済する必要があると判断」し、処分の効力を停止。宮田学園側の訴えを認め、留学生受け入れを認める決定を行った。出入国管理庁は、国側の本決定を不服とした即時抗告をまだ行っていない。
行政事件の訴訟で執行停止の申し立ては、当該行政処分により回復不可能な損害が発生する場合、一時的に執行を停止するように行政庁に命じる旨を裁判所に申し立てることができるというもの。
よって、同じく行政事件の訴訟である取消訴訟の結果次第では執行も再開されるので、取消訴訟と執行停止の申し立てをワンセットで行うことが多い。この宮田学園事件のケースも、それほど特異な手続きではないと前置きをしておこう。
決定の効力は取り消し訴訟の一審判決の言い渡しまでが期間となる。決定が出た以上、宮田学園側はコロナウイルスの発生当初から約3年間のあいだ、同学院への入国待ちをしている約450名の留学生を、1人でも多く入学させることに尽力するだろう。
西日本国際教育学院のホームページでは、1年目の入学時に必要な費用は入寮費を含めて約100万円。1人のキャンセルも出なければ、単純計算で4億5,000万円が入ってくる。
当該職員の管理監督責任を棚に上げ、なりふり構わずとにかく当該職員個人に責任を押し付けるという、教育者にあるまじき資質がこの事件への対応で露呈している。
処分決定後、本来学院は在校生を他校へ転校させなければならなかった。だが実際は、その転校手続きよりも、先ずは今回の処分取り消しと執行停止の申し立てに奔走していたと思われる。宮田学園の経営者にとって、自らの保身に力点を置いた名誉回復と、多額の入学金を確保するためにも、この申し立てはどれだけの経費をかけても成し遂げなければならなかった。この業界に関係する実力者の力を借りることができるならば、それも厭わず必死になったはずだ。
基本的人権を侵害する身体拘束の事実があったことは、拘束されている最中の生々しい動画で証明されている。さらにこの動画以外にも、被害者の留学生本人が寮に戻った後も外出できないように職員が翌日まで部屋の外で監視していたこと、拘束した職員本人が認める証言のなかで、周囲の職員は誰1人制止しようとはしなかったことなど、多くの事実が明らかになっている。これだけ多くの証拠があっても、とにかく職員一個人がすべて行なった違法行為だと認められさえすれば、宮田学園は経営者と学院の責任はまったく問われないと考えている……という印象を受けるのも当然だ。
直接的には職員が行ったとしても、学校として1人の人格を有する学生の身体を拘束する行為に出るまでには、状況を学院長などの上司に共有しているのが当然だろう。学生に問題があるかどうかは担任教師が必ず把握しているはずで、その情報も学院長などの上司に報告し、共有しているのが教育に携わる者としての常識であるはずだ。
仮に、学生を拘束した職員の行為が、上司への相談や上司からの指示もなく、職員が勝手に実行できるような無法な職場環境と異常な学校体質なのだとすれば、宮田学園に学校法人としての認可を与えた監督官庁の審査自体に不自然さすら覚える。
今回の処分取り消し判決をストレートに解釈するならば、「組織に属する職員でも、個人が犯した犯罪であれば、組織へのお咎めは一切なし」という判例をつくった理屈になってしまう。
本事件を担当する裁判官に、次の格言を贈りたい。
ローマの元老院議員だったグナエウス・カルプルニウス・ピソの名を取った、「ピソの正義」と呼ばれる有名な格言がある。「たとえ天墜つるとも、正義を為せ」という一句は、法曹界では多くの方々がご承知であろう。「ピソの正義」は、法の暴走を揶揄する格言として記憶されている。
この宮田学園の事件を担当する裁判官に対して、筆者はこの「たとえ天墜つるとも、正義を為せ」の言葉を贈り、本事件に対して法的な正当性だけではなく、正義を貫いた厳格な制裁の決着を期待しながら、これからの先行きを見届けたい。
【青木 義彦】
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