2024年12月23日( 月 )

必至のポートフォリオ大改造 日本株爆騰開始前夜か(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は9月14日号のマイナス実質金利の下でのドル高進行~米国のマイルドランディングを可能とする2大要因~」を紹介する。

急増し始めた国内設備投資

 国内設備投資急増の兆しが表れている。9月の日銀短観の2022年度の設備投資計画は、全産業16.4%、製造業21.2%と過去最高の伸びとなった。シリコンウエハー主体の非鉄金属、化学、電機、機械などの円安の恩恵を受けるハイテク産業の伸びが大きい。総額1兆円に達するTSMCの熊本工場建設も動き始めた。またスバル大泉工場でのEV生産棟60年振りの新設、ルネサスエレクトロニクス甲府パワー半導体工場再稼働、SUMCO伊万里新工場建設、住友金属工業ニッケル電極材の新居浜新工場建設、アイリスオーヤマ中国家電生産の一部国内移管、京セラ鹿児島川内工場半導体パッケージ用新棟建設、ダイキン工業中国依存のサプライチェーン国内移管、キヤノン21年振りで宇都宮に露光装置工場新設、安川電機基幹部品生産の国内回帰と福岡行橋工場建設、富士フィルムバイオ医薬品受託生産富山工場建設、など100億円規模の投資プランが続々と動き始めている。今後円安定着がはっきりするにつれて国内への工場回帰が強まり、投資の伸びはさらに高まるに違いない。

 雇用面でも経済活動の再開にともない非製造業の人手不足感が強まっている。9月短観では人員が「過剰」と答えた企業から「不足」の割合を差し引いた雇用人員判断指数(DI)は全産業でマイナス28と4ポイント低下、先行きもマイナス31とさらなる人手不足が見込まれている。すでに過去最高水準にある企業業績は円安効果もありさらなる上方修正は必至である。

図表9: Jカーブ効果/図表10: 法人企業経常利益率推移

歴史的好バリュエーション、極端な日本株の割安さ

 株や債券などの金融資産の価格は利回りから類推することができる。2大金融商品、債券と株式の価格は歴史的に見て大きく揺れ動いてきた。日本10年国債利回りは0.2%なので、投下資本を回収するのに500年かかると計算される。他方株式は益回り(1株利益/株価)が8%なので、投下資本を回収するのに12.5年で済む計算となる。ここから株式は債券に対して1対40という極端な割安状態にあることがわかる。この債券と株式の極端な価格差は、世界を見渡しても、日本の歴史を振り返っても、かつてなかったことである。ちなみに米国では国債利回は3.8%なので債券の元本回収に26年を要す。それに対して株式は益回り7%なので回収には14年かかる。株式と債券との価格差は1対1.8と、日本に比べればだいぶ小さい。

図表11: 株 vs債券-正から負のバブルへ

 図表12により日米の国債利回りと株式益回りの推移を振り返ると、株式割高(債券割安)時代と、株式割安時代が交互に到来していることがわかる。そして現在の日本の株式の相対価格は、陰の極と見えるほど割安であることがわかる。同様の極端な株式の割安さは、1950年代初頭の米国株式爆騰前夜にしかなかったことである。5年10年後になって、振り返ると今がかつてない株式投資チャンスの時代であったことがわかるだろう。

図表12: 日米株式の益回り、配当利回り、国債利回りの歴史的推移

好需給、自社株買い、個人、外国人に加え本邦機関投資家が参戦する

 債券を売った(または預金を下ろした)お金で株を買うことで、とてつもなく有利な運用が可能になっている。日本の家計金融資産の74%(1089兆円)は利息が限りなくゼロに近い現預金・債券で占められ、益回りが8%という有利な株式・投資信託は全体の20%(295兆円)に過ぎない(比率は保険・年金・定型保証除く)。著しく割高な債券と現預金に巨額の資本が退蔵されているが、この巨額な資金がいよいよ株式投資に向かって流れ始めようとしている。資産所得倍増政策へと舵を切った岸田政権のNISA改革もあり、「株式投資で資産形成を」という動きは国民的な広がりを見せている。NISA口座の急増、NISA口座からの買い付け額は指数関数的増加ペースにある。積み立てNISA口座からの買い付け額は倍増ペースの伸びを続けており、2023年には2兆円台に乗せるであろう。一般NISAからの買い付け(2021年年間2.7兆円、2022年1~3月1.4兆円)を合算すると、個人の株式積立投資が年間10兆円を超え、一大投資主体として登場するのはすぐ先である。

図表13: 日米家計金融資産構成比較

 また企業の自社株買いが急増している。2021年度8兆円と過去最高になったが、2022年度は9~10兆円ベースに上ると見られている。 さらにアベノミクス時以降23兆円を買った外国人投資家は2020年にそのすべてを売却しつくし、日本株式はアンダーウェイトの状態にある。彼らは米国、中国、欧州、韓国など各国株式が固有の問題を抱えているなかで、消去法的に日本の輝きを無視できなくなっていくだろう。

 こうした状況の下で、長らく日本株投資に後ろ向きであった本邦機関投資家が参戦する。日経平均2023年35,000円、2024年4万円は射程内にある、と言っていいであろう。

図表14: 海外投資家日本株式累積投資額(2013年以降)/図表15: 日本株式投資主体別累積投資額推移

(了)

(中)

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