米国国債売却できぬ植民地日本
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「円暴落対策で米国債を売却せよ」と訴えた10月21日付の記事を紹介する。
日本円暴落が止まらない。
責任は日本銀行にある。
日本銀行の超金融緩和政策維持が円安の最大理由。
日本銀行法は日本銀行の目的を次のように定める。
第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
日銀は「通貨及び金融の調節を行うこと」を目的とする公的機関だが、「通貨及び金融の調節を行うこと」の理念は次のように規定されている。
第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
日本銀行は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ために「通貨及び金融の調節を行う」機関である。
「物価の安定」とは「通貨価値の維持」。
日本銀行は通貨価値を維持することに責任を負う。
国内的には一般物価の上昇を抑制することが課題になる。
1990年以降は一般物価が下落することにも警戒が払われてきた。
通貨価値の安定的推移が追求されるべき目標。
対外的に通貨価値を維持するとは実質為替レートの下落を回避すること。
日本円の実質実効レートは52年前の水準を下回る。
1970年当時、日本円の対米ドルレートは1ドル=360円。
物価変動の差を含めて考察すると、現在の日本円の対米ドルレート水準は1970年の1ドル=360円よりも円安水準なのだ。
この円安が日本の一般国民に巨大な損失を与えている。
国際標準=グローバルスタンダードで計測した日本国民の所得水準、保有資産のドル表示額が激減している。
日本円の通貨価値が暴落し、日本国民が巨大な損失を蒙っている。
このことに最大の責任を負うのは日銀。
日銀は通貨価値の暴落に責任を負う存在である。
日本銀行の超金融緩和政策が日本円暴落をもたらしている。
10月21日に発表された9月全国消費者物価(CPI)統計では総合指数、コア指数が、ともに前年同月比3.0%の上昇を示した。
消費税増税の影響を除いてCPIのコア指数前年比上昇率が3%台に乗せるのは1991年8月以来31年ぶりのこと。
日本でもインフレが加速しつつある。
円安は輸入物価上昇を通じて国内インフレ要因になる。
日本においてもインフレ加速が深刻な経済問題になっている。
この事態に対して日本銀行が無策を決め込むことは許されない。
日銀総裁更迭が求められる。
超金融緩和政策と円暴落にメリットとデメリットがあると主張されるが、メリットとデメリットは経済主体によって色分けされる。
輸出を行う債務の大きな企業にとって超金融緩和政策と円暴落は大きな利得をもたらす。
債務を負う企業にとって超低金利政策は巨大な補助金の意味を有する。
円安は輸出の競争条件を増大させる。
他方、預金を保有する一般市民、一般労働者、一般消費者はどうか。
超金融緩和政策と円暴落はデメリットしかない。
なけなしの資産に利子がまったく付与されない。
日本のカロリーベースの食料自給率は38%。
生存のために接種しなければならないカロリーの62%が海外依存だ。
円安は生活費高騰をもたらす。
一般消費者にとっては、金利引き上げとドル下落のメリットがはるかに大きい。
家計は住宅ローンをもつが資産と負債を差し引けば、圧倒的に資産超過の経済主体である。
企業でも輸入に軸足を置くものが存在するし、個人でも住宅ローンなどを抱える者が存在する。
多種多様だが、企業と個人の平均的な特性を踏まえて低金利政策と円安の直接的影響を考察すると上記のようになる。
日銀はこの情勢下で金融超緩和政策を修正し、円高誘導政策を実行することが正しい。
超低金利政策に固執し、日本円暴落を放置する黒田東彦氏の政策運営は間違っている。
同時に、日本政府は保有する1兆ドルの米国国債をドル高基調の状況下で全額売却すべきだ。
それが日本国民の利益に沿う政策対応である。
※続きは10月21日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「米国国債売却できぬ植民地日本」
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