2024年07月16日( 火 )

習近平総書記は微妙玄通か

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「習近平体制の未来は習氏自身にかかっている」と分析した11月1日付の記事を紹介する。

中国で5年に一度の共産党大会が開催された。

焦点は新しい中国最高幹部の布陣。

事前の予測通り、習近平氏の中国トップとしての第3期入りが決定された。

このことについて米国を基軸とする欧米のメディアは批判色に染め抜いて報道している。

しかし、習近平氏が規則を無視して第3期入りをはたしたわけではない。

周到に準備を重ね、3期入りを可能にする制度変更を実現したうえで第3期に移行している。

日本で解釈改憲を実行したこと、安倍国葬を実施したことと比較して、どちらに理があるのかを考えるべきだ。

安倍晋三氏は2014年に憲法解釈を変更した。

日本政府は集団的自衛権の行使について、憲法解釈上許されないとの見解を1972年に公式に提示している。

この憲法解釈を40年以上にわたって堅持してきた。

憲法解釈を含めて憲法の実体が存在する。

42年維持した政府の憲法解釈が憲法の一部をなしていると考えるべきだ。

むろん、憲法は絶対不変の存在ではない。

憲法は改正に関する条文を保有している。

状況の変化に応じて憲法を改正することは妨げられない。

しかし、憲法を変更する場合には、憲法が定める憲法改正の手続きを踏むことが必要不可欠。

政治権力といえども憲法の前には従順でなければならない。

憲法の規定が政治権力の暴走を阻止し、人権、民主主義などの普遍的価値を守る。

これが「立憲主義」「法の支配」の考え方。

安倍内閣が憲法解釈変更の必要があると判断したなら、正規の憲法改正手続きを踏んで変更する必要があった。

安倍元首相は首相が立法府の長であると述べ、選挙に勝った政権は憲法解釈を変えられるとの主旨の発言を示した。

三権分立、立憲主義、法の支配などの基本事項に関する知識が欠落していたと見られる。

岸田首相は内閣の閣議決定で国葬を実施できると主張し、国葬実施を強行したが、岸田首相も立憲主義、法の支配を理解していない。

過去の国会答弁で政府は国葬に法的根拠がないことを認めている。

政府は「基準を整備することが必要だ」と答弁したが、法的根拠、基準は整備されてこなかった。

行政は「法律による行政の原理」に縛られる。

国会が国権の最高機関であり、内閣は法的根拠のない行政行為を行うことができない。

岸田首相が国葬実施を必要と判断したなら、国会審議に付して国会の同意を得ることが最低限必要だった。

安倍氏も岸田氏も憲法の規定を踏みにじり、独断専横の行政を実行した。

このことを念頭に置くなら、習近平氏の第3期入りをやみくもに非難することは適切でない。

韓国では大統領の再選が認められていない。

そのために、政治が継続性を失うとの批判もあり、大統領再選を認めるべきとの主張も存在する。

ドイツのメルケル首相は2000年から2018年まで18年余りの期間、CDU(キリスト教民主同盟)党首を務め、2005年から2021年まで16年間も首相に在任した。

中国の習近平氏が中国トップを10年務め、15年目に向かう第3任期に移行したとしても騒ぎ立てるほどのことではない。

権謀術数が渦巻く中国政治社会において、第3期目入りをはたし、かつ、習近平体制を強化した政治力、人心掌握力は驚異的であり、そのことを称賛する言説が表出されてもおかしくはない。

※続きは11月1日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「習近平総書記は微妙玄通か」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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